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ヤスラギ委員長は死ぬほど忙しい  作者: スウェイル
第二章 委員長、怒る
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伊東晴明4

 芦田風雅(あしだふうが)伊東晴明(いとうはるあき)三戸雷斗(さんどらいと)鈴木康良義(すずきやすらぎ)の四人は、第七階層そのものであるトレーニングルームへとやってきた。


 そこは体育館程の広さを誇る、闘技場のような造りをした研究所で最も大きな空間だ。


 その用途から、地下だと言うのに魔法の力で天井全体が昼間の空のような明るさを放っていて、ここが地下深くであることや、今日の天気が雨であることを忘れさせた。


「ほぇー……。一番下のフロアって、こうなってたんだ」

「一応、緊急時の避難場所も兼ねてるからな。ここまで逃げてもダメなら、もれなく全滅だ」

「そのとーり! だから、ここはいわゆる最終防衛ラインで、めちゃくちゃ頑丈に出来てるから、暴れても問題ナッシング! ってワケよ!」

 

 ハルアキのネガティブ気味な発言も、フーガは持ち前の明るさでポジティブに捉える。


「いやいや。流石に限度はあるから」

「あぁん? そんなこと、言われねぇでも分かってるよ!」


 そして、ヒートアップしそうになったフーガをライトが諌める。

 そんな構図にもだんだん慣れてきたヤスラギであった。

 

 四人は部屋の角に武器箱を置くと、それぞれ好きな装備を手に取った。

 

 ライトは、それぞれ別々の作品に登場する薙刀(なぎなた)を二種類。

 どういう意図か、本来は両手で操うはずのその武器を二刀流で振り回している。


「お、わっとと……!」

 

 ……いや、この場合、振り回されている、と言った方が適切だ。


「さて、ようやく試し撃ちだ」


 ハルアキは、機関銃のような形状の電気銃。

 元ネタはFPSゲームに登場する武器の一つ。

 とても厳つい見た目に反して、非殺傷武器である。


 まぁ、だからといって、目の前の人を軽率に撃っていい理由にはならないのだが……。

 

 バチチチッ!!

 

()ったぁ!?」


「ふむ、やはり威力は低いな。動物相手の威嚇ぐらいにはなりそうだ」


「だとしても、俺で試すんじゃねぇ!!」


 撃たれたフーガは患部を擦りながら、軽量の武器を手当り次第に装備した。

 その目はどう見ても仕返しを狙っている。フーガが狩りのときに見せていた、獲物を狩るハンターの目だ。

 

 自分のスピードを活かせる投擲可能な自己増殖ナイフと、足りない一撃のパワーを補う爆砕ガントレット。

 

 既にお気に入りの脚用の武器は複数所有しているため、今日は脚以外の部位で扱うような武器から吟味する。


「よっしゃ、やるぞ!! オラァ!!」


 投げる直前にナイフは分裂し、必ず一つは手元に残る。

 上手く立ち回れさえすれば、魔力がある限りこの投げナイフは尽きないだろう。


 ハルアキに向かって投げられたナイフは、更に10本に分裂した。

 投げながら分裂したせいで、ナイフは扇状に拡散してライトの方にまで飛散する。


「ちょっ、おい! コッチにまで投げてくるなよ!」


 咄嗟に【製作】の空間を展開し、防御するライト。

 同じスキルをもっているハルアキもまた、ほぼ同時に展開した。

 

 二人の前に展開された色違いの魔力空間。

 そこに投げられたナイフが入った途端、ナイフたちは空間に固定されるようにピタリと制止する。


 その後、支えを失ったかのように自然落下し、カランという音を立てた。


 あ、あれは……! あのときの!!

 

 ヤスラギの脳裏にフラッシュバックしてきたのは、先日の解体作業のワンシーン。


 頭部から外れて滞空し、そのあと落下した鹿の角が今のナイフと重なって見えたのだ。


 【製作】のスキルを防御魔法代わりに使う。


 そんな型に嵌らない柔軟な発想は、今後のヤスラギに大きな影響を与えることとなるのだが、それはもう少し先の話。


 今はこうして、なぜかライトも交えての三つ巴のバトルが始まったのを、ただただ遠巻きに眺めるヤスラギであった。


 とはいえ、あそこに参戦するつもりこそないものの、せっかくの機会だ。

 ヤスラギも様々な武器を手にとって、興味深く見つめている。


「……ん?」


 箱の底の方に、一つだけスイッチが付いた近未来的なデザインの金属製の柄が転がっていた。


 こ、これって、アレだよね。

 某星間戦争映画に出てくる、光の剣(ライト・セイバー)……。


 ドキドキしながら構え、おそるおそるスイッチをオンに。

 すると……。

 

 ヴゥゥゥゥン


 凝縮された光によって一瞬にして加熱された空気が押し出されたことで、そんな聴き馴染みのある音をたてた。

 

「おおぉ!!!」


 レーザー光線とは違い、青白い光の束は刀身のように留まって煌めく。

 そして、すぐに。

 

 ピシュゥゥゥ……スンッ


 その光は消失したのだった。


「…………あれっ」


 何度もカチカチとスイッチを押してみるが、変化は無い。

 そこへ、戦闘中のハルアキが声を掛けてきた。

 

「あぁ、大事なこと言い忘れてた。復活したては魔力がほとんど無いから、ここにある武器の大半が使えないぞ」


「ちょっと!? そういう大事なことは、もっと早く言って欲しかったなー!?」


 さっきの光の剣(ライト・セイバー)になけなしの魔力を吸われてしまったヤスラギが、このあとしばらく手持ち無沙汰になったのは言うまでもない。

元ネタの日本語表記はライトセ「ー」バーなのでセーフ

もし英語に直す場合は、大文字の位置を変えれば誤魔化せるのかな。

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