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ヤスラギ委員長は死ぬほど忙しい  作者: スウェイル
第一章︎ ︎ ︎委員長、死す
22/49

蒔田希穏2

「……おっ、来たな」


 それから二分前も経たないうちに、ヤスラギは広場まで降りてきた。

 

「おまたせ、キオン。こんな時間に一体、何を……」


 と、言いかけて、ヤスラギはキオンが手にしている奇妙な青色の発光体に目が止まる。

 

 ぼんやりと発光していて、質量というか存在をあまり感じさせないその物体を指さして、ヤスラギは尋ねる。

 

「……それは、何?」


「あぁ、これが俺の見せたかったものさ」


 といって、ヤスラギに手紙をそっと手渡した。


「手紙……?」

 

 ヤスラギは受け取った手紙を訝しんで見つめると。


「……あぐっ」


 なんとなく、あの童謡を思い出したので、読まずに食べるフリをした。


「いや、ヤギかよ」


「ヤスラギだよ」


「知ってるよ!! いいから、はよ読め! 消えちまうぞ!」


「えっ、嘘!? コレも(魔素メールみたいに)消えるのか!」


 ボケたり驚いたりと忙しいヤスラギは、慌ててポケットからスマホを取り出すと。


「ねぇ、コレ写真に撮ってもいい? そうすれば消えても読み返せるから」

 

「あー……、読んだあと消してもらうかもだけど、それでも良ければ、いいぜ」

 

「ありがとう」

 

 素早く許可をとって、消える前に写真をパシャリ。

 最近の機種は自動で明るさを補整してくれるため、光る手紙の輪郭も鮮明に撮れていた。


 さて、問題の手紙だが。


 その内容は、短い文章らしきものがカタカナで羅列されているだけの、少し不気味なものであった。


 

 マタアシタココニコイ

 

 ミライカラノテカ゛ミ

 

 ツキ゛カラハヨケ゛ン

 

 ソウシ゛ヨウク゛イレ

 

 スイシヤコヤラクライ

 

 ミナミノモリハキケン

 

 ヒルメシヲカイヒセヨ

 

 カイキ゛ニサンカセヨ

 

 フタリノヒミツニセヨ


「……なんか、読みにくいね」

「まぁ、たしかに全部カタカナだし、小文字の区別も無いからな。

 ……うん、まとめて読むとたしかに読みにくいわ、コレ」

 

「……ふむ?」

 

 「まとめて」とは、どういう意味だろう?

 

 そんなヤスラギの疑問に、キオンはすぐさま答える。


「あぁ、この手紙な。なぜか、毎日一行ずつ増えてくんだよ。なぜかは知らないけどな。

 ……で、この一番下のやつが、今日の増えた分だ」


 そう言って、キオンは一番下の行を指した。

 

「“二人の秘密にせよ”……か。

 なるほど、だからさっき僕を呼んだのか」

 

「そういうこと。

 ちなみに、最初にこいつを読んだときは、スッカスカの中身の一番上に“マタアシタココニコイ”とだけ書かれていたから、もぉー怖いのなんのって……」

 

「うわっ……、それは怖い……」

 

 新手のホラーかと思ったぜ、と付け加えつつ、キオンは本題へと移る。


「で、コイツは二行目にもある通り、どうも“未来からの手紙”らしいんだ。

 毎日、“また明日ここに来い”って文章から始まる謎の手紙が、深夜0時キッカリにここに出現して、だいたい5分くらいで自然に消える。

 多分、そろそろ……」


 キオンがそう言った直後、手紙はポワッと光を放ち、何も無い空中に向かって光る泡のようになって浮かび上がり……。

 

 フッと、そのまま消え去った。


「ほらな」

 

「はぇー……写真、撮っておいて正解だった」

 

「だな。やっぱ電波がなくても便利だな、スマホって」


 写真であれば、じっくりと観察できる。

 ヤスラギたちは二人してスマホを覗き込み、あらためて手紙の写真を舐めるように調べた。

 

 しかし、書いてある文字以外には特に何も見つからない。


「うーん……」

 

「……まぁ、5分くらいとはいえ毎回、便箋に隠されたメッセージとかが無いか調べてきたから。

 多分、これ以上の情報は出てこないだろうな」

 

「ふむふむ。ちなみになんだけどさ――」


 事情を大体把握したヤスラギは、気になったことをキオンに尋ねる。


「――三行目に“次からは予言”ってあるじゃない?

 この下の内容は全部その日に起こることの予言だったの?」

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