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ヤスラギ委員長は死ぬほど忙しい  作者: スウェイル
第一章︎ ︎ ︎委員長、死す
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鈴木康良義


異世界日記

[ 5月25日(水)]


 せっかくなので、今日から日記をつけることにした。


 元の世界に帰れるようになるまで何日かかるか分からないし、不安なことばかりだけど、死んでも生き返れるらしいので気楽にやっていこうと思う。


 クラスの皆が自分よりずっと前に来ていたのには驚いたけど、おかげで色々と教えて貰えた。

 足を引っ張りそうな自分が遅れて来たのは、ある意味、正解だったかもしれない。


 今日は、この世界について説明を聞いたあと、皆がどんなことをしているのかを見学した。


 ただタイミングが悪く、研究開発班と拠点管理班しか見れなかった。どちらも忙しいなりにやりがいのある、楽しそうな仕事に見えた。


 明日は、残りの二つである渉外輸送班と戦闘探索班の見学と魔法の基礎を習得をする予定だ。

 所属する班が決まれば、いよいよ自分も“異世界探索チーム『ヒポカムポス』”の一員となる。


 『ヒポカムポス』とは、ギリシャ語でタツノオトシゴのことだそうだ。どうしてタツノオトシゴなのかは今度、先生に聞いておくとしよう。


 それにしても、まさか12HRの担任である落合茜先生が、異世界側から僕らのことを召喚するだなんて、事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものだ。


 『元の世界に戻る方法を探し出す』ことが、最終目標だけど、ひとまず自分に出来ることを頑張っていこうと思う。






「ふぅ……やっぱりこの時間帯は、何か書いてないと落ち着かないな」


 紙を束ねただけの簡素なノートをパタリと閉じて、ヤスラギは小さくため息をついた。


 時刻は午後9時過ぎくらいだろうか。なんとも濃密な一日だった。


 疲れきった腕をよいしょと持ち上げて、魔力で灯っていた明かりを消す。


 部屋はとたんに真っ暗になり、ガラスのない木窓から入るわずかな星明かりだけを頼りに、僕はのそのそとベッドへ向かった。


 昨日まで暮らしていた現代の日本とは余りにもかけ離れている光景に、ヤスラギはしみじみと異世界に来たことを実感する。


 さて、日記も書いたし、今日はもう寝よう。


 まさしく激動の一日だった、とヤスラギはベッドに潜り込んで今日の出来事を振り返る。




 ――高校に入学して早1ヶ月半。


 全ての始まりは、今日、初めて茜先生の授業で居眠りをしてしまったことだった。


 まさか、そんなことがきっかけでこの世界に来ることになるなんて、夢にも思わなかった。


 奇妙な研究室の真ん中で目を覚ました僕。

 白衣と軍服を合体させたような不思議な格好の担任の(あかね)先生に言われた言葉が、今もまだハッキリと思い出せる。


――「おはよう、鈴木くん。寝てくれないと安全に召喚ができないから、困ってたのよ。

 鈴木くん真面目だから、なかなか寝てくれないんだもの。寝てくれるまで、ずーーーっと待ってたわ!」


 ……聞けば、自分以外のクラスメイトはとっくの昔に、こちらに召喚?されていたらしい。


 その後、僕は質問に質問を重ねることで、詳しいことまでは理解しきれなかったけど、なんとか現状だけは理解できた。


 あくまでここに居るのは、“魔法の力でコピーされて造られたクローンの僕”なのだ、と。

 

 魔法なんて……と言いたいところだが、現実として起こっている以上、受け入れるしかなかった。


 自覚は無いが、あくまでこちら側がコピー。


 なので、オリジナルの自分もクラスメイトたちも、元の世界ではこれまで通りの生活を送っているそうだ。


 それを聞いたとき、正直、ホッとした。


 向こうの世界では普段通りの日常が流れていることに安堵したのだ。

 僕がここに来てしまったことで、周囲に心配や迷惑をかけてたりはしないのだ、と。


 あとは、僕を召喚した魔法についても聞いてみたっけ。


 なんの仕掛けもない普通の教室で、寝ている人間を原子レベルでコピーして、別の世界に再構築する……。


 あらためて言葉にすると、割ととんでもないことをしているな、あの先生。


――「そうねー。生物学の知識と、複数の高等魔術を同時に操作する技術、それと万能の魔力が山のようにあれば、誰でも出来るわね」


 たしか、めっちゃいい笑顔でそんなことを言っていた。

 誰にでも出来る芸当ではない、ということで間違いないだろう。


 "魔法"や"魔力"、ほかにも"魔術"、"魔導具"、"魔素"に"魔物"。

 僕たちの世界で学んできた科学だけでは説明がつかないような現象や物質に、この『魔』と言う文字が付いている。


 他のクラスメイトたち(特に僕以外の男子たちれの飲み込みの早さを思い知らされたときは、自分ももっとゲームや漫画を嗜んでおけばよかった、と後悔をした。


 こんなに不思議な後悔をしたのは初めてだ。


 ま、これからじっくり学んでいけばいいだろう。勉強は好きだからね。


 これまでの学校の勉強とは目的こそ違えど、本質は変わらない。


 ……実践的なこと、空想的なこと、柔軟な想像力や判断力も必要になるだろう。


 未知の世界を生き抜き、元の世界への帰り道の確保をする。

 ……生半可なことでは無いはずだ。

 

 ……主人公が異世界にそのまま転移する物語というのは、いったいどんな結末を迎えるのだろう。


 ……アニメやゲームとは無縁だった自分には、まったく想像がつかないな。


 …………ははっ、しばらくは夢の中の方がまだ、リアリティがあったり、して、……zzz。


 新しいことの連続で、すっかり疲れてしまったヤスラギは、ごろんと寝返りをうつと、そのまま深い眠りにつくのだった。

名前:鈴木康良義

年齢:15(11月11日)

性別:オトコ

容姿:170cmの痩せ型

髪と肌:黒のナチュラルショート、色白

一人称:僕

イメージカラー:白、紺

動物に例えると:ボーダー・コリー(牧羊犬)

似ているキャラクター

(活動報告にあります)


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