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ヤスラギ委員長は死ぬほど忙しい  作者: スウェイル
第一章︎ ︎ ︎委員長、死す
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山本光剛

「――せっかくだから、ヤスラギくんに決めて貰おうかなって、思ってるの」

 

「はァ……!?」


 俺はたまらず、声が出た。

 

 どうして!

 よりにもよって!!

 遅刻組のあいつに決めさせるんだ!!!

 

 そんな激しい怒りがコウゴを突き動かしたのだ。


 渉外輸送班の輸送担当、高校一年にして181センチと体格にも恵まれたツンツンヘアーの持ち主、山本光剛(やまもとこうご)

 

 彼はクラスの中で、最も早くに召喚された古参中の古参。

 すなわち、この世界に一番乗りした男である。

 

 この世界に召喚されたタイミングによって、12HRの生徒たちは大きく三つのグループに分けることができる。

 そのため、それに準じたグループごとの呼び方が存在した。


 親睦を深めるための遠足からの帰り道。バスの中では多くの生徒が、はしゃぎ疲れて寝静まっていた。

 そんな状況を一網打尽にするかのように、まとめて召喚されたのが先月、4月21日のこと。

 

 その記念すべき日よりも前に召喚されていた者たちは「古参組」、あるいは、一部には「不良組」などと呼ばれている。

 

 入学早々に茜先生の授業中に寝ていたがために最速で召喚された連中だ。

 そんな経緯からも分かるように、素行不良の者が多く、茜先生も“次”がくるまで手を焼いていたという。


 続いて、4月21日に召喚された者は「遠足組」、「本命組」などと呼ばれたり、自称してたりしている。


 古参組がたったの4名なのに対して、その総勢は21名。

 ほとんどの生徒がこのタイミングで召喚されたため、古参組とは違って、とくにこの大きなグループで強く結束はしていない。

 

 古参も新参も関係なく、新しい班割りが出来たことも、その要因の一つに挙げられる。


 そして、ヤスラギを含む5名が「新参組」、「遅刻組」などと呼ばれ、真面目な者や変わり者が多いせいで、古参組とは反りが合わないことも多数ある。

 

 コウゴがヤスラギを敵視する理由も、そんな背景が一つに数えられるのだった。


 くそっ、このままじゃ康良義(アイツ)のいいように話が進んでしまう。

 

 そう思ったコウゴは、声だけでなく、手も大きく挙げて主張する。

 

「ハーイッ!! 異議ありでーす!!

 なんで後から来たヤツに決める権利をあたえるんですかぁー? ボクはー、おかしいと思いまーす!!」


 真面目な人をバカにするかのように、一人称をボクに変えて、そう叫んだ。


「それは……、ヤスラギくんって学級委員長だから、こういうの得意かな、って思ったから……」


 まさかの反応にサクラも困惑する。

 ヤスラギ単推しのサクラは反対意見が出るとは露ほども思っておらず、曖昧な答えしかコウゴに返せなかった。


 それが火に油を注ぎ、コウゴをヒートアップさせる。

 

「は、なんだそれ。俺はアイツが学級委員長だなんて認めた記憶はねぇぞ!?」


 学級委員長などの係分担は遠足に行く三日前に決まったことなので、コウゴが知らなくて当然だ。

 

 周囲で聞いている者も、そりゃそうだろうと心のなかだけでツッコミを入れる。

 

 しかし、これについては傍にいたギンガとマヒロも同意見だった。

 

「たしかに」

「ラギ長のこと、古参組(おれら)は噂でしか知らねぇんだよな」

 

 いくらクラスメイトとはいえ、面識がほとんど無いというのも事実。

 後から来たやつにデカい顔をされても素直に従うほど、お人好しではない。

 

 だが、そうなると今度は……。


「じゃあ、逆にあんたには決められるっていうの? みんなが納得するように!」


 ヤスラギ推しの最古参であるサクラが黙っちゃいなかった。


 ――念の為、状況を確認しておくと。

 

 コウゴは、ヤスラギの直接の指名で決まるものだと認識しているが、これは誤解だ。

 

 サクラが提案したかったのは、あくまでも「公平な選び方を決める」という議案の解決を、学級委員長であるヤスラギに任せる、というものだった。


 しかし、一方のサクラも、言葉が足りずコウゴにその意図が伝わっていないことに気づいていない。


 サクラからすれば「後から来たヤスラギって奴は信用出来ないから、古参組のオレ様に仕切らせろ」と言われているようなものなのである。

 そりゃあサクラも怒る。


「どうなのよッ!?」


 壇上から身を乗り出し、サクラは問い詰める。


 いやいや、とてもコウゴには務まらないでしょ。

 傍観する誰もが、そう思った。


 サクラもそう思ったからこそ、コウゴに口論をふっかけたのだが。

 

「あぁ、もちろん決めてやるさ!! 魔法の杖を使いたくてウズウズしてたのは俺らだけじゃねぇんだ。

 ここに来たのが早い順に、“杖を持つ権利”をゲットするってのは、じゅうぶん公平な決め方なんじゃねぇか!?」


 コウゴから思わぬカウンターが飛んできた。

 自分たちが絶対に選ばれるであろう、とても自己中な案を平気で持ちかけるその図太さは大したものだ。

 

 だが、公平な視点からみれば、たしかにその決め方は悪くなかった。

 

 むしろ、魔法の世界なのに1ヶ月以上も生殺しにされた彼らの心情を汲むならば、それが最も不満の少ない決め方だろうと、思えるほどに。

 

「……くっ、一理あるわね。けど、……」


(それだと、肝心なヤスラギくんが一番最後になっちゃうでしょうが!! 無し! 却下! 反対よ!!)


 思いっきり私情を挟んだ反対意見は口には出せず、サクラは必死に睨みつけることでコウゴに対抗するしかなかった。


 そんなサクラに助け舟を出したのは。

 

「はいはーい。でもさ、正確には“杖を持つ権利”じゃなくて、“試験を受ける権利”なんだから、普通に成績順でいいんじゃない?」


 先程までの様子からコウゴの味方側だと思われていた、渡辺閒宙(わたなべまひろ)だった。


 彼はコウゴの発言を訂正しながら、そう提案した。

名前:渡辺閒宙

年齢:15(9月12日)

性別:男(眼鏡)

容姿:170cm、落ち着きのあるテニスバカ

髪と肌:黒、眉にかかる長めのスポーツ刈り、ガッツリ日焼け

一人称:オレ

動物に例えると:ギンギツネ

イメージカラー:濃い青色、光沢のある黒

似ているキャラクター

(活動報告にあります)

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