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ヤスラギ委員長は死ぬほど忙しい  作者: スウェイル
第一章︎ ︎ ︎委員長、死す
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鈴木康良義5

 宿舎棟の灯りがぽつりぽつりと消え始める午後11時。

 ほとんどの部屋が暗闇と静寂に包まれる中、まだ煌々と卓上ランプが灯る部屋がひとつ。


 夜更かし部屋の主は鈴木ヤスラギ。

 

 丁寧に文字を書き連ねること1時間半、ようやく作業の終わりが見えてきた。


 彼は今日の会議の内容を忘れないように、日記にすべてを書き写す。


 そんな彼の手元には、見慣れた小型の機械がひとつ。

 グレープ社製のスマートフォン、通称マイフォーン。

 

 ランプにも負けない明るさの画面には、先程まで会議が行われていた講堂の黒板を撮した写真が鮮明に表示されているのだった。

 

 

~異世界日記~

[5月27日(金)]

 今日は朝から慌ただしい一日だった。

 

 先生にも無事に許可をもらい、正式にすべての班に所属することができた。

 記念すべき最初の仕事は、クラス全員が集合した緊急会議の進行役だ。

 

 まずは今朝の出来事から。

 カケノリが徹夜で『シルバーズ・リング』を改造して、持ち運びやすい折りたたみ式にしてくれた。


 ついでだからとメモリージェムの専用保管ケースまで用意してくれて、本当にカケノリは感謝してもしきれない。


 詳しくは後ほど書くが、なんとスマホまで貰ってしまった。

 そのかわり、今後、彼の頼みにはほぼ無条件で応えることになったが、大丈夫だろうか?

 いや、大丈夫じゃない。


 そして、そんな朝に招集をかけたにもかかわらず、奇跡的に会議には全員が参加した。


 なお、この日記は会議の議事録もかねている。

 発表した順に各班の情報をまとめておく。


【施設管理班】


 班長 殿岡奏(とのおかかなで)

 班員 金原海濡(きんぱらみれい)、鈴木康良義、立花香織(たちばなかおり)立浪麻玲(たつなみまあれ)蒔田希穏(まきたきおん)水守(みなもり)こころ、八坂真美(やさかまみ)


〜主な仕事〜


 施設の建設、施設の管理、食堂の運営、木工製品の生産、陶器の生産、食材調達(河川&養鶏)


〜検討課題〜


 ①放棄された建物の活用


 山頂の第三倉庫→キノコの培養室(研究開発班)

 仮設馬小屋→雨天時用の多目的室(戦闘探索班)

 壊れた水車小屋→修理して発電実験(研究開発班)


 ②食材の確保について


 製品の出荷により資金も潤沢になってきたので、渉外輸送班による物資の搬入頻度を、3日に1度から2日に1度に変更することで当分は賄う。

 ヤギ、ヒツジ、ウシを購入し、東部エリアにて酪農を試験的に開始。

 鶏小屋の拡張、および有精卵からの孵化をさ目指す。

 

 ③修繕などの依頼について


 これまでも何度か依頼が伝言ゲームのように回ってきたせいで、食い違いが起こった。

 混乱を防ぐために、今後は僕(鈴木)が依頼の窓口となる。

 

 また、ほかの班の手が空いている人にも協力を求めてもよいと各班長から承諾を得た。

 →班員のほとんどが女子なので、どうしても男手が不足していた。

 

【戦闘探索班】


 班長 |狩野達人

 班員 赤坂和歌奈(あかさかわかな)芦田風雅(あしだふうが)、太田翔典、三戸雷斗(さんどらいと)進藤敦紫(しんどうあつし)、鈴木康良義、對馬鷹仁(つしまたかひと)藤沢昌汰(ふじさわまさた)春川里緒菜(はるかわりおな)細田舞琴(ほそだまこと)源琉花(みなもとるか)元柏響季(もとかしわひびき)


〜主な仕事〜


 狩猟(毎週木曜)、木材や鉱石などの資源採集(不定期)、周辺警備、必殺技開発、戦闘訓練、敷地内の物資の運搬(「飛翔」スキル持ちのみ)、研究開発班と共同しての装備品の開発(武器、防具、罠、便利グッズなど)


〜検討課題〜


 ①警備の負担軽減について


 最近は、猛獣や魔獣が学習したのか、敵の侵入がほとんど無い。だが、万が一に備え、警備の人員を削減できない。


 近隣のダンジョンや冒険者ギルドの情報も集まったため、遠征に人員を割くためにも警備の自動化を希望する。

 →現状の技術レベルでは不可能。魔法の杖を入手した後、再検討。


 ※ただし、食料の調達が安定してきたため、狩猟の頻度を10日に1度に変更することで、遠征そのものは実施可能。


 ②保存食料の開発について


 施設管理班と共同で開発。

 →完成度が高ければ商品として販売することも視野にいれる。


 ③遠征時の連絡手段について


 【伝心】スキル持ちが源さんしかいないため、僕(鈴木)と渉外輸送班の朝倉、佐藤、湯ノ本の4人のうち2名ないし3名が同行し、常に3人は遠距離でも連絡を取れる者がいるようにする。

 

【研究開発班】


 班長 太田翔典

 班員 伊東晴明(いとうはるあき)江崎栞織(えざきしおり)、鈴木康良義、春川里緒菜、望月北斗(もちづきほくと)

 

〜主な仕事〜


 龍脈の保全管理、魔法の道具および機械の開発、物質コピー&魔力式3Dプリントの補助、班員それぞれの魔法実験(理解力不足で説明不可)


〜検討課題〜


 ①スマートフォンの製作について


 5日前に『魔力を変換して電力にする充電器』が完成し、電波を利用しないアプリならば継続的に使えるようになったため、先生の協力でスマートフォンの生産を開始した。

 

 ただし、連絡手段としての使用は技術的にまだ無理なので、並行して魔法を用いた連絡装置の開発を進める。

 

 ②物質コピー&魔力式3Dプリントの活用方法について


 先生が僕たちを召喚するときに用いた魔術を使うことで、元の世界の物をこちらに用意できる。

 その条件が、全員に共有された。

 

 一、現実世界にいる茜先生が、その瞬間に認識している物に限られる。ただし、一度でもコピーして、こちらに出力したものは除く。


 二、原子レベルでの再現になるため、素材に使われる原子の番号が大きい物ほど消費魔力も大きくなる。(車などはコストが桁違いに高い)

 

 三、龍脈からの魔力だけでは、一日に一台スマートフォンを生産するのが限界なので、急ぎの場合は魔素結晶や魔法石などの魔力変換効率の高いエネルギー資源を用意すること。


 また、これまでに「制服」、「下着」、「眼鏡」、「コンタクトレンズ」、「筆記用具」、「黒板」、「チョーク」、「黒板消し」、「参考書」、「電子辞書」、「自転車」、「水筒」、「シャンプー」、「リンス」、「石鹸」、「洗顔料」、「化粧水」、「ヘアワックス」、「タオル」、「調理器具」、「胡麻ドレッシング」、「焼肉のタレ」、「テニスラケット」、「サッカーボール」などがコピー済みである。

 

 これらは魔力さえあれば、いつでも複製できるが、使いすぎには注意が必要だ。




 ここまでほぼノンストップで書き終えたヤスラギは、一息つくことにした。



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