オールスターで来いとは言ってない
誰か嘘だと言ってくれ。
実習の班わけはその時一番好感度の高いキャラとなる。
なのでキャラと同じ班になってもひとりだろうと思い込んでいた数分前の私に言いたい。
現実はいつだって予想の斜め上をいくものだと。
班わけが張り出されていた掲示板の前には軽い人だかりができていた。
一年生にしてみれば一大イベントであり、この班わけがそのまま生死にも繋がってくるので感心が高いのは当然なのだ。
それを見越して少し時間をずらして来たのだけれど、まだまだ沢山の生徒が集まっている。
と、私が着いたのに気づいた生徒からざわめきが広がった。
「…………私、何かしたかしら? 」
「さあ? ここまで注目されるようなことは記憶にありませんが……? 」
「そうよね」
明らかに見られている。
本当にそこまで注目されるような事をした記憶は無いのだけれど。
せいぜいが第二王子とのやり取りくらいなもので、それだって最近は恒例行事じみてきていて注目されるほどのことでもない。
不審に思いながらもさっと割れた人混みを抜けて掲示板の前に向かう。
クラス事に分けられた張り紙の中、自分の名前を探す。
そしてすぐに見つかった。
「…………………………ああ、これか」
「そのようですねぇ」
班わけの紙の1番上、最初の班。
1班
アランドルフ・ルルベア
ウォルター・フォン・ザウスクラスト
ユーリカ・フォン・ザウスクラスト
ライアン・カーネリアン
ルチア・パラディン
レベッカ・ライラック
そろい踏みである。
誰が決めた。
責任者でてこい。
せめて王子二人は別にするべきでは!?!?!?
これほど吹き荒れる内心を一切表情に出さなかった自分を褒めたいと思ったことはない。
確かに好感度上げしてませんでした。
場合によっては全員横並びってことも、まあ、有り得る話ではある……のか?
でも! これは! あまりに作為的では無いですか!?
ほかの班との基礎力のバランスとか考えて作ったのだろうか、と言いたくなるような班わけだ。
そりゃあ生徒たちもざわめくし、私が来たら注目もするよね、と先程の反応の全てを理解しました。
「やあルチア嬢、どうやら同じ班になれたようで何よりだ! 」
「ウォルター第二王子殿下」
「しかも兄上やレベッカ嬢もいる! たいへん素晴らしい。君も二人の優秀さは知っていることだろう。この実習は成功間違いないね! 」
「………………そうですわね」
「ああそうそう、兄上が班員の顔合わせと方針の擦り合わせがしたいので明日か明後日のどちらか放課後に時間を作れないだろうかと言っていたのだが」
「……では、明後日にして頂けましたら嬉しく存じますわ」
「うむ、伝えておこう! 」
「ありがとうございます。では、私はこれで」
「ああ、また明日」
恭しく例をして学生寮の方へ足を向けた。
「………………ライアン」
「はい」
「薬草茶が飲みたいわ。目の覚めるような味の」
「とっておきのブレンドを淹れましょうね」
ライアンの労りに満ちた台詞が身に染みた。
泣いてなんてないんだからね!!!
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