すれ違い
風邪で更新出来ませんでした、すみません。
ざわめきが落ち着かないまま寮分けは終わった。
それもそのはずで、灰色はゲーム上では皆が普通に目指す色だったけど、この世界の常識では歴史上でも数人しかいない色なのだ。
そりゃあ新入生代表にもなる。
そんな納得と同時にせりあがってくる感情がある。
尊敬と、後悔だ。
おそらく同じ転生者としてこの世界に生まれたのに、そしてこの世界は親友の作った世界だと言うのに、私は世界で二番目にこの世界に詳しいはずなのに。
ヒロインの身体という圧倒的アドバンテージがあるのに。
灰色を目指す努力を、私はしていなかった。
もちろん手を抜いたわけじゃない。
私は私で、出来るだけのことをやったと胸を張って言える。
けれど、得意不得意があると言って全パラメータを上げる努力を怠ったのではないか?
歴史上ほとんどいない色だからと、自分が灰色を出すことを最初から念頭に置いていなかったのではないか?
出来るだけのこととは、出来ないことをしようとはしなかったと言うことではないか?
そんな後悔と、私より知識量で劣るだろうレベッカ嬢が灰色を手に入れた事への純粋な尊敬が入り交じっている。
灰色を目指すのは、ゲームでさえとても難しかった。
全てのパラメータをバランス良く伸ばし、かつどれも高水準でなければいけないのだから、当然だ。
シナリオを無視して圧倒的な高スペックを要求する王太子殿下ルートを勝ち取ることが出来たのはきっと彼女の努力。
レベッカ嬢の基本スペックもライバルなだけあって高いとはいえ、ゲームでは灰色ではなかったのだから。
「すごいなぁ」
思わずぽつりと零れた言葉に近くにいた何人かが私に視線を向けた。
先程の灰色の衝撃であちこちで似たような声があがってるので誰も不審には思わないだろう。
この世界を、とにかく死なないように生きようと思っていた。
目立ちたくないと、思っていた。
誰のルートも選ばず自分の力で生きたいと、思っていた。
けれど、彼女は。
与えられた能力と立場を活かしていて。
目立つことを厭わなくて。
目指すものへのひたむきさがとても眩しくて。
友達になりたいな、と思った。
同じ境遇だからというよりも、その生き方に。
真っ直ぐな燃える瞳に。
強烈に憧れてしまったから。
「とりあえず、知り合いにならないと」
今はまだ彼女の中では私はただのゲームのヒロインだろうから。
同じ転生者だと思われてすらいない。モブみたいなものだ。
彼女の人生の主役は彼女だから。
あの瞳にきちんと、私として映りたい。
まずはクラス分けだけど、成績順なのできっと寮とクラスはほぼ同じになるだろう。
話しかけること、認識してもらうこと。
「がんばろ」
ふん、と気合いを入れた。
学園での目標がひとつ増えた日。
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