原作のはじまり
ラフィノアさんの治療を終えると同時に意識を失ったあと、目が覚めてからは怒涛の毎日だった。
ずっと様子を見ていてくれたらしいライアンに体の調子を確認されて問題ないことを確かめてから、すっかり意識を取り戻したラフィノアさんの健診をした。
その際に烈風のパーティメンバーの人たちからものすごい感謝をされ、依頼料と追加報酬もかなりの額を渡された。
あまりの金額に追加報酬は断ろうと思わなくもなかったが、ラフィノアさん含め全員から是非受け取って欲しいと言われてしまえば何も言えなかった。
もちろん依頼として受けたので、しっかりと報酬を受け取る必要はある。
それだけの金額を出すに値する働きが出来たという事でもあるので、固辞するわけにもいかない。
おかげで今やパラディン家に由来しないポケットマネーが結構な金額だ。
もともと抉れていたりで足りない部分があったせいもあって、ラフィノアさんの肩の傷は残念ながら大きな痕になってしまった。
それでも本人は命の代償としては軽すぎると笑う。
実際彼女の怪我を完治させるまでに日を開けつつ五回にわけて治癒魔法をかける必要があったので、ほんとうにギリギリのところだったと言える。
あと少し私達がシリカに来るのが遅かったり、指名依頼を出すのが遅れるなどして治療が遅れていたら、きっと助からなかっただろう。
ラフィノアさんの治療の合間にダンジョンにも挑んだ。
12階層まで攻略したが、そこから先はぐんと魔物の強さが上がっていたので、ライアンの判断でそれ以上の攻略はしないことになった。
ちなみに、現在ダンジョンは29階層まで判明している。もっと深い可能性もあると言われているので、間違いなく大規模ダンジョンだ。
怪我から復帰した烈風は颯爽とダンジョン攻略の先頭に舞い戻った。
シリカの街でのダンジョン攻略に一区切りつけてからはライアンと二人で様々な街と国を旅した。
途中でとある商会の娘を助けたり、貴族の駆け落ちに巻き込まれたりしつつも特に大きな問題もなく旅を続けることができた。
気付けばあっという間に3年が経っていて、私は今年13歳を迎える。
この3年で更に大きくなったパラドックス商会と、レベッカ嬢がはじめたと言う教会への寄付。
孤児の子供たちへの読み書き、算術の勉強会などの影響で戻った王都の様子はかなり変わっていた。
もちろん、いい方にだ。
普及した調味料で食事事情は良くなり、教育のおかげで生活水準も僅かに向上していた。
結果街は賑わい、その賑わいに商人や冒険者、傭兵などが集まり更に発展する。
王都はまさに今花開かんとするみずみずしい花のようだった。
記憶にあるゲームの世界より上がった生活水準に、喜びとほんの微かな不安を抱えつつ学園の門をくぐる。
この学園に入学するということは、私にとってかなり特別なことだ。
本格的な乙女ゲームのシナリオが、はじまろうとしていた。
―――――――――この時の私はまだ、これからの学園生活がとんでもないことになるとは全く思っておらず、その結果が国どころか世界まで巻き込むなんて露ほどにも思っていなかった―――――――――
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