彼女は、可能性
それを見た時、面白いものを見つけたと思った。
ここ最近は大きな戦や魔物も出ず、興味を引かれるような事がない平和な日々だった。
そんな中リアメカ帝国に新しいダンジョンが出来たとの話題が耳に入る。
ダンジョン攻略は自国のものに限らない、と。
つまり、強者が集まるはずだ。
ダンジョンを攻略するために集まった冒険者しかり、ダンジョンの魔物しかり。
きっと今より面白いと、ダンジョン行きを決めた。
シリカの街に入ってからはなかなか楽しめた。
街の話を聞くに最深部の攻略者は『烈風』と『双頭の蛇』。
どちらも純粋な強さでいえば今一歩物足りないが、まあそんなに悪くもない。
何より一番の収穫は、ダンジョン一階層に居た二人組の男女だ。
一階層の魔物は状態異常攻撃が厄介で、対応出来ないで手こずる奴も意外と多い。
特にはじめてダンジョンに潜る初心者は慌てて逃げ帰ることもあるほど。
ところがその男女は冷静に対応していた。
パッと見まだどちらも成人していない子供な上に装備は新品。
どう見てもダンジョン初心者だったが、手際よく少女が魔法で逆に魔物を戦闘不能にし、少年が仕留める。
見事な連携だった。
少年の方のナイフ捌きもなかなかだが、特に少女の魔法がいい。
魔物の打った魔法と同系統の魔法を重ねて、支配権を上書きした上で反転するなんてなかなか出来る事じゃない。
普通は魔法を打ち消してから別の魔法で反撃する。
二手かかるところを一手でこなしてしまうのは中々の実力だった。
思わず掛けた声に振り返った二人は揃ってとんでもない美形だった。
これは人目を惹くだろうなあと内心思いつつ敵意が無いことを告げる。
別に今すぐ何かしたい訳じゃなかった。
単に、これから伸びるだろう存在を把握しておきたかっただけだ。
ルチアと、ライアン。
強くなる可能性に満ち溢れた二人だった。
もしこれから先、彼らが俺の期待通り強くなるならまた会うこともあるだろう。
向かってくる魔物を切りながら、抑えきれない歓喜が笑みを作る。
楽しみでしょうがなかった。
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