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冒険者登録

 

 冒険者ギルドは外からでも分かるほど賑わっていた。

 入って一番目につくところにあるのは大きなボード。

 ここに依頼や情報などが張り出される。


 今も何人かの冒険者がボードを見ながら話し合いや検討をしていた。

 私と同じくらいの子供もちらほらいる。

 冒険者は危険も伴うが見返りも大きい。

 本格的に冒険者にならなくても薬草採取の依頼はギルドから常に出されているので、子供の生活費稼ぎによく使われている。


 ボードの右に受付、左に買取カウンターが設置されていた。

 用途に合わせて部屋を半周するような形になっているようだ。

 恐らく混雑防止の為だろう。


 ボードには寄らずに受付へ向かう。

 受付の職員がにこりと愛想のいい笑顔を浮かべた。


「冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご要件でしょう」

「冒険者登録を。私と、彼の二人分です」

「かしこまりました。ではこちらの用紙に必要事項をお願いします。代筆は必要でしょうか? 」

「いりません」


 渡された用紙には名前・出身地・魔法の有無などを書く項目があった。


「お名前以外は空欄でも結構ですが、記入して頂けますとギルドから能力にあった依頼を要請する時などの参考にさせていただきます。たとえば干ばつ地域に水魔法の得意な魔法使いを、などといった形ですね」

「なるほど」


 ルチア・水と風の魔法・治癒魔法。出身地と性は書かない。


 もし何かあったとしてもパラディン家に影響が出るようなことでなければその時に名前を出せばいいし、逆に影響がある時は伏せておくことか有利に働くだろう。


 治癒魔法も本当なら伏せておきたいけれど、私は自分やライアンが負傷した時は治癒魔法を使う。

 あとから変に探られるより先に申告しておくほうがいい。


 ライアンも名前だけのようだ。

 彼の場合魔法薬学は学問だし、薬師では無いので名乗れない。

 魔法はあまり得意ではないらしい。


 全く使えないわけではない。

 魔法薬を作ることも出来るので魔力がない訳では無いのだが、それを火や水などに変換する能力が高くないそうだ。


 今も少しでも出来るようにと日々努力を重ねているらしいが、やはり芳しくないと苦笑しながら教えてくれた。


 その分近接系の武器を扱えるし、魔法薬学と魔法論理学がずば抜けている。

 なので総合的に見れば大変優秀なひとなのだけれど。



 書き終わった紙を職員へ返す。


「はい、ありがとうございます。ではプレートへ交血設定を行いますので、こちらへ魔力か血を一滴お願いします」


 差し出されたのは魔法陣の書かれた紙とその上に置かれたプレート。

 これに自分の魔力か血を一滴垂らすことで個人の魔力と紐付けするらしい。


 プレートを偽装して別人になりすまされることへの対策だという。

 魔力操作が苦手だったり出来ない人は血を使うので、交血設定と呼ばれている。


 痛い思いはしたくないので魔法陣に魔力をかざす。

 魔法陣が淡く光った。


「ありがとうございます。ではこちらが冒険者ライセンスになります。御説明は必要ですか? 」

「お願いします」


 ある程度知っているけどこういったことはちゃんと聞いた方がいい。

 私は説明書を熟読するタイプだ。


「かしこまりました。ではまず、冒険者のランク制度から」


 受付の職員がひとつ頷く。


「冒険者はSからFまでランクが分かれており、最初は皆さんFランクからとなります。個人ランクとパーティランクは別にありまして、パーティランクはメンバーの総合力でランクが決まりますので必ずFランクからという訳ではありません」


 ソロのBランクがふたりでパーティを組めば、そのパーティは最初からAランクとして扱われる、というわけだ。


「自分のランクのひとつ上か、パーティランクの依頼までお受け頂けます。もしFランクの方が三人、などといったパーティの場合パーティランクもFランクなのですが、個人ランクのひとつ上のEランクまでの依頼を受けることができます」


 自分のランクのひとつ上まで受けられるのなら当然だろう。


「同じように、パーティランクはFランクだったとしても、個人がEランクだった場合その方はDランクまで依頼を受けることが可能です。この場合、他のFランクの方は依頼を受けることができません」


 そこまで聞いてふと疑問に思ったことを聞いてみる。


「もし個人でランクが上の依頼を受けて、パーティで行ったらどうなりますか? 」

「他の方が依頼に同行したことが判明した時点でそのパーティのランクと依頼を受けた個人のランクをFランクまで下げる事になっております。これはたとえSランクの冒険者でもFランクになります」


 わりと厳しかった。

 ちなみにダンジョンに潜るのには特にランク制限はないようだ。


「ランクの上昇は依頼の達成回数と達成率、普段の素行や依頼主からの評判などで判断されますので、早くランクを上げたいのであれば堅実に行動することをオススメします」

「なるほど」


 急がば回れ、というやつだ。


「依頼はそちらのボードに張り出されます。依頼を受ける際は依頼票とプレートを受付にお持ち頂き、終了の際はその街のギルドにプレートをお持ちください」


 終了の受付は依頼を受けた街のギルドでなくてもいいらしい。

 冒険者はあちこち行くので、そのほうが都合がいいのかもしれない。


「また、採取依頼などの場合は先に買取カウンターで依頼である旨と品物をお渡しいただき、証明証を受け取ってから一緒にお渡しください」


 買取カウンターを先に通す事で終了受付がスムーズに行えるようにするためだろう。


「護衛依頼などは依頼者が護衛先のギルドに連絡をしてはじめて達成となりますのでお気をつけください」


 これは護衛対象の無事を確認する為には必須なので納得。


「ボードの依頼の他に、素材買取も行っていますので、個人で持ち込まれた素材や薬草などは直接買取カウンターへお願いします。ダンジョンの出土アイテムも買取カウンターで受け付けております。勿論ご自分で各所へお売り頂いても大丈夫ですが、ギルドに持ち込んで頂いた場合はランク評価に加算されます。また、魔物の解体や素材の鑑定も行っていますが、こちらは手数料として一回につき150リル必要になります」


 1リルがおおよそ10円なので、1500円程だ。

 ちなみに先程の串焼きは50リルである。

 素材の相場は薬草でひとつ80リルから。

 ただ薬草はほぼ鑑定が必要ない。

 魔物の素材ならものによっては物凄い額がつくので、そこまで高いわけではない。


「ランクが上がる際はこちらのプレートに星の型を打ちます。ランクが下がった際は型の上から線で消し、また新しく型を抜きますのでランクの上下はプレートでわかるようになっております」


 つまり一度落ちた事実は隠せない。

 なかなか評価が厳しい。


「以上でひと通り御説明させていただきましたが、他にご質問などありますでしょうか? 」

「いいえ、大丈夫です。また何かあったら聞きにきてもいいですか? 」

「はい、いつでもお越しください」

「ありがとうございます」


 説明を聞き終え、一応ボードへ向かう。

 目的はダンジョン攻略なので依頼を受けることはそんなにないとは思うが、情報収集は必要だ。


 ボードには様々な依頼が張り出されていた。


 ざっくりランク別にわけてあるようで、意外と見やすい。

 Fランク、Eランクは基本的に薬草や鉱物の採取依頼や家キュロック――これは前世で言うネズミを大きくした魔物で、民家に住み着く――の駆除依頼などだった。


 それらと別にダンジョンや街の周りの魔物の出没情報などが張り出されていた。

 こちらはじっくり読む。


 ダンジョンの十階層までは既にある程度マップも出来ていて、そこまで危険でもないようだ。


「とりあえず、十階層までを目標にしておきましょうか」

「いいと思います。無理をする必要もありませんしね」

「じゃあ、まずは準備ね」


 ダンジョンは何が起こるかわからないので、しっかり準備しなければ。


一度投稿しましたが、ちょっと長くなったので分けました。

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