イラっとする言葉らしい
祖父母に「長生きしてね」、「元気でね」とか1回も言ったことはない。幼稚園に入っている頃は言葉をあまり理解していないため、そんな言葉を贈ったかもしれない。
私は結構恥ずかしがり屋なので、母や父に「大好き」とか「ありがとう」とかあまり言わない性格だ。
なので、社会人になってから贈り物を送っている。
祖父母にも同様だ。
年に数回程度には、言葉として表すようにしている。
そうでないと、母がたまに怒る。
めんどくさいなと思うが、普段から言葉にすれば何も起こらない。
そう私が悪いのは知っている。
この話は、そんな何気ない当たり前の言葉の話だ。
母方の祖父母に私だけ遊びに行った時だった。
私は掘りごたつに入り、みかんの皮を剥いていた。
いつもこたつの上に籠の中に入ったみかんを1つ取っては食べ、また、剥いては食べるの繰り返し。
そのあとは、みかんを食べすぎて腹をくだす。
祖母は、いつも茶の間に取り付けられた食器棚が後ろになるようこたつに入る。
今思えば、お客さんが来たらすぐ食器を取り出すことができるからだと思う。
私には7つ下の従兄弟がいる。
とんでもなく頭がいい。
市内で1位には飽き足らず、県内で1位を叩き出している。
いつか全国1位を叩き出すのではとドキドキハラハラだ。
それを自慢されていると母は口をこぼす。
私は、常に疑問を持って授業を受ける子だったので理解するのに時間がかかる子だった。
そのためテストの点数はあまり良くない方だった。
まあ、そんな頭のいい従兄弟は1年ぐらい祖母の家に住んでいた。茶の間の柱に身長記録が書いてある。
それに加え、写真まで貼ってある。
祖母がこたつに入って、何分かたったことであった。
「おばあちゃん、長生きしてねって言われるとカチンってくるのよね。」
何気ないトーンで話された。
「ヘェ〜」と冷静に私は答えるが、内心では「ええええええええええ!!!!!!そうだったの!?」とみかんの皮は驚きを隠せない。
どうやら、祖母曰にとっては、幼かった妹と従兄弟の「おばあちゃん、長生きしてね」フレーズは地雷だったようだ。
私が生まれた時は、祖母は50歳ぐらいだった。しかも私と妹は2歳しか離れていない。
妹が幼稚園に入った頃はまだ60歳にもなってないということだ。
孫にとってはおばあちゃん、おじいちゃんは、年の離れた老いた大人にしか見えないのかもしれない。
まあ、まだまだ当の本人は人生これからだという時に、純粋な顔で言われたらカチンってくるのも無理もない。
幼稚園や保育園では祖父母のために、「長生きしてね」、「元気でね」の学ぶ言葉は、どうやら現実世界では地雷フレーズしかないようだ。
母に、このことを話したら、腹を抱えながら、笑っていた。