33.他人の財布で食べるご飯は美味しい!
ヴォワザン家に王家主催の舞踏会への招待状が届きました。
世間では小麦を高値で売った守銭奴と伝わりましたが、王国を救った救世主です。
ふふふ、流石に呼ばないという選択肢がなかったようね!
宰相のアポニー伯爵は策士でした。
すべて小麦を国王が2倍の値で買い取ったことにされました。
教会に寄付した分も全部ですよ。
(でも、領主と商人に払い下げた分しか、払ってくれません)
国王陛下、万歳!
もちろん、父上は「詐欺だ!」と騒ぎません。
国王(宰相)に貸し1つと思えば、安いものだ。
◇◇◇
私は王家の舞踏会には呼ばれたことがなかった。
王家の舞踏会は社交会の翌日に開かれる王族の舞踏会だ。
しかも去年は第一王子の舞踏会デビューだった。
どうして婚約者の私が呼ばれないの?
この舞踏会に呼ばれていないことから第一王子と私の婚約は偽装ではないかと早くから囁かれ、去年の時点でほぼ肯定された。
アンドラは滅茶苦茶怒っていた。
「姉様が呼ばれないとはどういうことですか?」
「王族のパーティーだから、王族でない私は呼ばれないのでしょう」
「姉様はもっと怒るべきです。姉様は第一王子の婚約者なのです。しかも第一王子は婚約者であるのに、我が家に一度も訪ねて来ない。それどころか手紙すら送って来ない。たとえ好意を持っていなくとも礼儀は果たすべきです。第一王子は最低です。姉様を馬鹿にするのも程があります」
「ありがとう。アンドラ、貴方が怒ってくれるからわたくしが怒らずに済むのよ」
「姉様!」
まぁ、こんな感じよ。
さて、第一王子の舞踏会デビューで一曲目は踊らず、二曲目からラーコーツィ家のカロリナ嬢、その次がセーチェー家と踊ったらしい。
「私は弟のお下がりで満足せよ言うのか!」<怒>
「王子、どうぞお気をお鎮め下さい」
「これが怒らずにいられるか?」
「彼女らの最初をすべて弟に奪われたのだぞ」
「彼女達はすべて第二王子様の婚約候補でございます。王子はすでにエリザベート様という婚約者が………」
「黙れ! その名を口に出すな! あんな変人は知らん!」
第一王子は相当怒って大暴れた!
情報屋って不思議ね。
王宮内の話をどこで仕入れてくるのかしら?
しかし、『小麦事件』はそれを一遍した。
ラーコーツィ家、セーチェー家と同等の財力をヴォワザン家が見せつけたのだ。
国王の目が南方に向いた。
◇◇◇
「エリザベート、貴方はなんてことをしてくれたの?」
「母上、大丈夫でございます」
「何が大丈夫ですか? 今日、お茶会で聞かされるまで知りませんでしたよ。どうして黙っていたのです」
「問題ございません」
「はっきり答えないさい。我が家の借財はいくらですか?」
「300万金貨(3000億円)でございます」
「なっ、何ぃ!」
母上がコメカミを押さえて倒れそうになる。
そりゃ、そうだ。
教えない方がいいと思ったので教えていなかった。
でも、南方大臣の部下である財務事務長は交易所の財務書を見ることができる。
その額を見て目を回した。
お茶会で財務事務長のご夫人が母上に心配そうに尋ねたのだ。
「ヴォワザン家の財政は大丈夫なのでございましょうか?」
「財政? 何のことです」
「母上、問題ございません」
「主人から聞きましたが、多額の借金をされたと聞いております。もし、お困りでしたら、いつでもお声をお掛け下さい」
「ご安心下さい。ご心配のようなことにはなりません」
「(エリザベート、あとで詳しく聞かせない)」
「(はい)」
なんてことがあったのよ。
屋敷に帰ると、さっそく問い詰められた。
母上は会計簿すら見ない人でしょう。
「小麦が売れれば、半分は返ってきます」
「半分って、まだ150万金貨(1500億円)も借金が残るのでしょう」
「はい」
「はいではありません。貴方って子はなんてことをしたの!」
王国の税収は700万金貨(7000億円)くらいであり、その内、小麦の税収が500万金貨(5000億円)に当たる。
酷く落胆し、ソファーにぐったりして力が入らないようだ。
◇◇◇
「という訳で、トーマ。皆に連結決算の話をして下さい。私が大丈夫と説明しても聞いてくれないのよ」
「何がという訳か判りませんが、了解しました」
私の説明では納得してくれないので、皆に信頼の厚い天才トーマ君をお呼びした。
「まず、奥方様が心配されているのは、我がヴォワザン家の税収が100万金貨、支出が80万金貨であり、収入が20万金貨しかないことでしょう」
「そうです! その20万金貨も蓄えに回る訳ではありません。ほぼ使い切っています」
「ですから、足りない分は南方交易所から借りればいいだけのです」
「そんなことをすれば、借財が増えてゆきます!」
「別に問題ありません。ヴォワザン家と南方交易所は連結決算ですから、はじめから借財はゼロなのです」
「言っている意味が判りません」
「こんな感じなのよ」
「判りました」
判り易く言えば、お父さんがお母さんに借金をしているだけ、家単位で見れば借金なんて存在しない。
極端な話!
私が150万金貨(1500億円)を返さなくていいと言えば、ヴォワザン家の借金は1日で無くなる。
もちろん、そんなことをすれば南方交易所のみなさんは慌てるわ!
でも、みなさんが出したお金は投資だから無くなって文句が言えない。
投資というのは返さないでいいお金だ。
商人のみなさんは私を信じてお金を預けているだけのよ。
失敗しても私の信用が無くなるだけで、お金を返す必要はない。
つまり、他人の財布で食べるご飯は美味しい!
悪役令嬢の本領発揮ね。




