静畑おでんと河童小僧
R01.11.17 修正
「河童じゃねーーーかぁああああああああ!」
ブワッ
溢れる涙が止まらなかった、いや本当。
欄乱は親友の結婚相手「破外甲羅 知月」を思い出してまた泣いた。
ここは静畑村の“おでん横丁”グツグツと煮えるおでんを囲み、酒を嗜む大人の店だ。欄乱はお酒が飲めなかったので静畑山のミカンを絞ったジュースを一気にあおった。甘い!旨い!もう一杯!
「…おいおい嬢ちゃん!気持ちは解らんでもないが…ハゲさんは良い人だぜ?お嬢ちゃんが飲んでるそれも…はげさんが丹精こめて作ったミカンだで?」
「くぅ…うぅ…でも、ハゲさんって…うぅ」
「ったく!でももヘチマもねぇわ!…っま、流々嬢ちゃんのお国の人だろ?今日はお代はいらねぇから食ってけよ!」
おででん!とおでんが出される、旨い…旨いけど…うん、旦那緑だし…全裸だし…うぅ、もういいよ、河童でいいよ…せめて服着ろよ…ぅぅ…
泣きながら、やけ呑み、やけ食いをする欄乱は良かった。
ショックではあるが、親友であるが…んまぁ…血の繋がりはないっちゃない。
問題は実の妹である鈴々の方だ。
「…………………」
「お…おぃ…そっちの嬢ちゃんは喰わなくていいのかい?」
「…………………」
魂が抜けておられる、うん、仕方がない。姉が河童の女房になり、自分は河童の妹だ。
「元気出せよ…な、河童妹」
「…………………」
…怒りで覚醒するかと思ったが反応がない。あ、そうだ。静畑名産生わさびを鼻につめてみよう…どうだ?
「…………………」
「うぁああああああああああああああああ!」
溢れる涙が止まらなかった…いや本当。私は今日、大切な二人を無くした。そんな気分だ!流々はいいさ、自分で選んだ道だ…うん、祝福しよう、全裸でもいいよ…でも…あぁ鈴々!…あぁ鈴々!
彼女はこんな傷を抱えて!国に帰り…そして父(王様)に…どんな顔で報告するんだ?そして姉が継ぐハズだった乙姫の地位は彼女が継ぐことになるだろう…耐えられるのだろうか?
否…、彼女の心はもうすでに…耐えらえれてなど…いないとゆうのに!
「うぁああああああああああああああああ!」
私は鈴々を抱きしめ号泣した。私の心が通じたのか鈴々の瞳に涙が溢れ…こぼれた。十分だ…!依然、瞳に光はもどらず…けれど、彼女の心はまだそこにある!この涙が…その証だ。
ガラララ
「こんばんわー」
「へいらっしゃーい」
懐かしい声が聞こえた。1年前、国を出る彼女を見送った日は、遠くにいっちまったと思っていたが。まさかここまで遠くに行っていようとは…その声は、もう、過去の知人の声なのだ。辛い
うぅ…
「あら二人とも!ここに居たのね~フフフ、美味しいでしょ?静畑おでん!」
……ちくしょう幸せそうな顔しやがって…うぅ、お前の妹は…生きる人形と成り果てたんだぞ!?うぅ…言えないけど!
「すまないな、外で食いたいとかいっちまって…うん、飯の準備とかしてくれてたのか?」
「大丈夫大丈夫!うちの夕飯はその日に河原で魚とって焼く感じだから」
ブッワッ
河童じゃねぇえか……!
「それに良かったわ、今家の方には知月さんのご実家の方々が来てて…その。うん。ちょっと生臭いから」
チョコチョコッ
「ここか!おで おでん食べたい!」
「あらあらゴメンね、ほほいっと!」
流々の後を付いてきてたのか、緑のペンギンそこにいた。流々はペンギンを抱き上げて、自身の膝にちょこんと乗せた。なにそれ可愛い。
「はーい挨拶できるかな?」
「おっす!おらぁ 河童小僧だ!」
なにそれ可愛い。
見た目はどう見ても緑のペンギン、真ん丸していて首がないけど。言われてみれば皿と甲羅は背負っている。大きさはリュックサックと言った所か…。
「お…おう、可愛いな…私は欄乱、こっちの子は鈴々ってんだ。私は流々の親友で、鈴々は流々の妹だな」
「わかった!だいこん食べたい!」
うーん、可愛い。
「河童小僧ちゃんは知月さんの甥っ子らしいのよ、私も今日知り合ったの…ちょっとまっててね、ふーふー」
「うーん、流々のその姿見てるとなぁ」
子供の世話をする母親の様だ。…なんだか本当。しっくりしている。
寂しさと不安もあるわけだが、結婚は目出度いし幸せそうだし、しっくりくるなら…
「……おめでとな。応援するよ」
「………」
「ありがとう欄乱!今日は私おごっちゃうわよ!」
「ハハハ!いいよ、ってか店のおじさんが驕りって言ってくれてたしな!」
「あらそうなの?ありがと親父さーーーん!」
……本当、なーんもかーんもがしっくりくる。
「おい鈴々!気持ちは解るけど目を覚ましな?案外姉ちゃん…良い人見つけたのかも知れないぜ?」
「フフフありがと!ところで鈴々はどうしたの?鼻にワサビ刺したりして…」
うーむ、説明できない。
「あっそうだ!」
「河童小僧ちゃん!このねーちゃんの隣来てくれねぇか?大根とってやるからよ」
「わかったー!でも次たまご!おでミカンジュースも飲む!」
さぁ鈴々!河童への偏見をなくすんだ!…可愛いだろ?うん、私も正直まだまだだが…理解しようぜ、歩み寄ろう!人と人の繋がりは相互の気持ちが大切だ!
「フフフ…そのジュースの正体はね…」
「それも聞いたぜ アハハ!旦那の自慢がしたいんだな!」
さぁて!
折角遠くからやって来たんだ!嫌になるほど聞かせてもらうぜ!根掘り葉掘りと聞き出してやるか!こうして、三人娘は語り合った。
生気を失った鈴々であったが…隣に置いた河童小僧が良い働きをした。
「ねぇちゃんは食べねーでええのか?ほで!だいこんとてやるど!」
「……………あ…ありがと」
河童小僧の優しさにふれ…どうにか正気を取り戻した。街にとった宿に向かい欄乱と鈴々、二人はこんな会話をしたんだとか。
「ねぇ…欄乱…」
「おっ何だい?」
「私、河童小僧ちゃんと結婚するわ」
「落ち着け。」
人の心は砂上の城、些細な事で粉と散る…祝言の日まではあと10日ほど、それまでに心、戻ればよいが…今宵も静畑の夜は優しく、おでんの湯気とお茶の香りで満ちていた。ぽっかりと浮かぶ月はミカンのようだ。
「式が終わったら旦那連れて琉宮だよな?先に手紙出しとくか」
「そうね、お父さん…河童長老さんも来るらしいわ、小僧ちゃんはどうする?楽しいわよ?」
「いくー!」
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拝啓 国王ドンドン様
旦那さんは河童です 緑です 全裸です。披露宴へは旦那さんと、お義父さんの河童長老、そして河童小僧という3人で向かいます。食べ物の嫌いはありません、私は存じ上げないのですが尻子玉という食べ物が好きらしいです。
そして、鈴々も壊れてしまいました。理由はそうです、今、手紙を読んで泣いている、国王様と同じ理由なんだと思います。
旦那さんは河童ですが良い人です、村の人々からも頼られています。
流々もとても溶け込んでいて、笑顔で…だから、安心してください。帰りの足が出来たので、予定より早く帰れそうです…またなにかありましたら連絡します。あと私の父にお伝え下さい静畑のおでんは黒い、なんか黒い。技を盗むから店のメニューに加えたい。と
欄乱
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河童小僧と鈴々図