VSおっぱい拳
R01.11.17 修正
スパパン!(ズドドーン!
スパパン!(ズドドーン!
一振り爪で葉を切って
一振り小指で小枝落とし
一振り手刀で枝薙いで
一振り腕は幹をも断つ!
これぞ流々の使う拳法、手刀のみならず、腕全体までも鋼と鍛え、鋭い切れ味で万物を裂く、青龍刀を模した拳法、龍宮王国に伝わる秘拳…「琉宮拳」
「うぉお、そいつで牙クジラをやったのか!こえーこえー!」
外道河童…否
外道=尻喰らいは生きていた!
二度の斬撃を一晩で治し、ピョンピョンと山中を駆けまわり追い縋る刃を躱す躱す!
「くかかかか!この山はオイラの庭に同じよ!捕まえてみろや小娘!デカブツ!」
逃げる尻喰らいを追いかけて、流々と知月は静畑の山を駆けのぼる!
この山を庭とするのは知月も同じだ!逃がしはしない!
「嬢ちゃんその坂越えると傾斜があるぞ坂上左だ」
「ありがとう!むむん!当たらない!」
スパパン!(ズドドーン!
スパパン!(ズドドーン!
木々生い茂る山中を切り開き、延々と続く道が生まれる、北へ北へ…ついに二人は山を抜けた!視界が開け飛び込むのは土砂に埋もれた倒木と岩、一昨日の激戦地、牙クジラが抉った広大な斜面だ!
木を盾に逃げていた尻喰らいは傾斜を下り、麓に見える大きな池まで一目散!
「うぉおおお!」
ズドドドオオオオオン!
知月が倒木をぶん投げて、尻喰らいの行く手を遮った!刹那止まった尻喰らいに流々の斬撃がついに追い付き…
「せいやー!」
「舐めるな!」
スパパパアアン!
立ち上る土煙と倒木を切り裂き、されども尻喰らいは避け切った!河童特有の手足の自由、驚異の軟体の自在な体捌き!山中で見せた野猿のような動きではない、跳ねまわる動きは一切なくなり…地の上を滑るように腰を低く、足運びで一つで体重を転がす…
「この動き…拳法!?」
「あぁ…あいつは…武術の才を持っている!」
◆ ◇ ◆ ◇
日は山頂を少し過ぎ、消えかけた影が再び伸び行く…
場所は静畑のクジラ牙池、少女は河童と対峙していた。
遂に追い詰められた外道尻喰らい
刃を向けるは旅の武闘家、名を流々
追い付いた知月は息を呑む、距離を取る二人、張り詰めた空気、筋肉だけが取り柄の自分が間に入っては…一瞬で倒され地に伏すだろう。獣と人の対峙ではなく、二人の武闘家のタイマン試合だ…尻喰らいの雰囲気が先ほどと違う!同じ河童である…知月は、その空気と構えに覚えがあった。
心がざわつく…
「おぃおぃ、どうなってんだ?デカブツ」
尻喰らいは少女の後ろの仲間に、いや…仲間だった男に声をかける。
山の妖怪が人間とつるんで妖怪退治か?そんな軽蔑の眼差しを向ける…外道が…とその眼差しを真っすぐ受け止め、知月は瞳の中に汚れを見る。
「気安く話しかけるな、ならず者が…」
許すわけにはいかない、見逃すわけにはいかない…このならず者、外道の河童、欲望に魂を喰われた怪物だ。
ひび割れた器は、零れた水は…決して元には戻らない、ならば倒して進むのみ。
同族の情けなど下らないと、もっとでっかい器を持てと…きっとあの人ならば言ったはず。
「お前が悪さばかりするから、人間達が嬢ちゃんを雇ったんだよ!」
いい迷惑だ!そう吐き捨てるような同族の言葉をしかし尻喰らいは気にも止めない。答えを聞いたらもう用無しだ、思考はどんどん先に進む。
「へぇ~、嬢ちゃん退治屋か何かかい?」
ヘラヘラと喋りかける尻喰らいは舐めるように少女の体を観察する。
年は10を2か3過ぎた程度に見えるが、人間の年は解らねぇ…背丈でみても、小さなばあさんかもしれないし、妖術師か何かかかもしれない。
(実際先日、それで痛い目あっている。)
…まぁ“嬢ちゃん”って男の呼び方からするに、婆じゃねぇ、年は10と半ば、背丈は平均的な童っこだ。手足も肉付きが良い訳でなし、むしろスラリと細すぎる気さえする。不気味なのは、長い青髪に前髪で目が見えない事と、さらけ出した腕の異常な傷跡だ。
全国各地で悪さを働き、その土地土地で退治屋と戦い続けてきた尻喰らいの観察眼は本物だ。
今その目で警戒するのは相手の武器、傷だらけの腕、子供の腕とは思えないが
(あの腕で木を豆腐みたいに切ってやがったな)
こわい、こわい
尻喰らいが見ていると、少女の手はゆらりと動き指先を揃え、構えをとった。
尻喰らいには少女の動きが、日本刀を構える侍に重なる、あの両腕は刀と見よう。二刀持ち相手はいつぶりか…
「本当は…退治屋…ではありませんね。ただの武闘家…、全国行脚の修行中の身です」
「っへ、そうかい!」
退治屋ではない、武闘家なら怪しげな術は使うまい、事実…不死身である河童を切り倒し、満足して帰るような間抜けやろうだ。
プロの退治屋なら昨日の勝利の時を逃さず、岩でも置いてあそこに封じられていた事だろうに。
(勝機はそこだな…ふん)
傷を見るに相当の鍛錬をしているようだが、相手が“少女”ならオレの勝ちは揺るがない!
「嬢ちゃん!仕事は選んだ方がいいぜ!」
◆ ◇ ◆ ◇
空気が変わる!
音も無く、合図も無く…
しかし対峙する二人は同時に構える!
流々は「手刀」指先を揃えた手を軽く前に出し腰をほんの軽く落とした。
右足を後ろに下げ半身の体勢、後ろ脚をやや曲げ突撃に備える!
対して尻喰らいは、足を内またに腰を落とし、両手の平を相手に向ける形で突き出す。
掌は丸く、何かをそっと包むように優しい形…そして、あろうことか戦いの最中目を閉じ唇を突き出し…
「気をつけろ!嬢ちゃん!奴は“おっぱい拳”の使い手だ!!」
おっぱい拳図
戦いとは無情、向かい合い、矛を交えたならもう退く道は無い…二人は命をかけ、向かい合いそして覚悟し、構えたのだ。瞬きすら命とりになる、張り詰めた空気、しかしそれを溶かすように気の抜けた声が空気を揺らす。
「お…っお?おっぱ?えぇえ!?」
流々は混乱した、聞き間違え?えぇええぇ?おっぱ?えぇ…なんて…?え?なんて?
「気を付けるんだ!“おっぱい拳”!奴め…禁じ手を使いやがった!」
落ち着こう。うん、私…だ…大丈夫!
流々は咄嗟に一歩後ろに飛び、距離を取った。
知月もおそらく河童だが、目の前の糞河童と違い、イイひとだ、短い付き合いであったが彼の行動は男気と優しさに満ちていた、信用に足る!
「ど…どうゆう事?」
おっぱいって聞こえたけど、違うかもしれないし“大破威拳”とか、そういう名前かもしれない。
「我々河童は尻好き…」
知月は重々しく答えた。えっあっ…うん。
嘘か本当か何度か尻子玉を要求された。
あと道中も視線をお尻に感じていた。
え?お尻?え?何の話?
「おっぱい拳は尻好きの誇りを捨てた外道の拳だ!河童村でも伝えられるのは一人のみ…我欲を捨て去る修行の果てに許された技!」
えぇええええええええええええええええええええええええええええええ
やっぱりぃいいいい!?
うぇえええ?
流々は噴き出す冷や汗を拭い動揺した心を静める。この身を一振りの刀に見立て、揺るがない心を修行してきたが、まさかここまで動揺してしまうとは、まだまだ己の未熟を感じる。
…落ち着こう
「お…おっぱぃけんってどどど…どんな拳なのの?」
無理、高鳴る胸が落ち着かない、無理
冷静に相手の構えを見る、拳法ならば構え技には必ず理があり、それを解すれば対処がかなう、如何に珍妙な拳法といえ、流々の武の経験と才能をもってすれば対処は可能!…な筈!落ち着こう…ヒーひーふー
内股の足、中腰…
両手を突き出す諸手の構え(両手拳)、丸い掌をこちらに向けて…
「見ろ…あの手の構え、あれはおっぱいを揉みしだく形だ」
「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
無理無理無理無理無理
なにこの糞ガッパきんんもぉおおおお
あばばばばば
流々は思わず更に一歩下がる、いや…全力で飛んだから数メートルほどは下がった。くしくも今までの人生で一番飛べた、重力を振り切った、人体ってすごい。
「クククッ…どうした嬢ちゃん?俺を退治するんじゃないのかい?」
腐れガッパはすぼめた口から舌をチロチロ出しながら語りかける!
無理無理無理無理…そうしながら、ジワリジワリと内股で進んでくるいやぁああああああ!!
涙が溢れてきた…
気を抜いたら、漏らしてしまいそうな恐怖と悪寒を流々は感じていた。
どんな厳しい修行をしても戦いの中でも、こんな恐怖を感じた事はない!
牙クジラと戦った時の方が100倍増しだ!
しかし、そんな恐怖の最中であっても、流々は構えを解きはしなかった。
刃を思わせる、鋭い手刀、尻喰らいは実際それを警戒し、攻めあぐねていた。
(……何か一手、あの構えを崩せば勝ちだな)
「…嬢ちゃん」(ペロペロペロ
「ヒィイイ!」
変な声が出た、もう無理、本当無理、ちびる…ちびった。
「…この指を見てみな」
……
…………
………………
コリコリコリコリ
何かを包むように丸を描いていた掌
指は大きく開かれ、
何かを揉みしだくように動いていた。
そして今、少女は気づいた
コリコリコリ
人差し指の動き
何かを転がすような、弾き、弄ぶような動き…
コリコリコリ
あの手のひらがおっぱいを揉みしだく形だとすれば
あの指の位置は…あの指が弄んでいる物は…ち…
「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
理解した瞬間、流々の心は崩壊した!
武闘家としての矜持は崩壊し、おもわず構えを解いてしまった!
腕を交差するように、胸を守る
嫌だ!あんあ醜悪な生き物に胸を弄ばれるなんて!
奇声と共に涙が溢れ
完全に武闘家としての流々は死んだ…
その刹那
「かかったな!尻がガラアキだぜ!!」
一瞬で間合いを詰め、背後に回った河童がいやらしく笑う!
熟練した河童はなぜるように一瞬で、尻子玉を奪うという…!
尻喰らいの指はが蠢きながら向かうは流々の尻!
(…そうか!胸に気を取らせガラアキの尻を狙う…これが…これがおっぱい拳の神髄!)
知月はとっさに駆け出すが距離が遠い!間に合わない!尻が…尻が危ない!
「ッヒ!」
流々は構えもなにもなく
ただ、長年の修行で培った反射神経で体を捻り背後の尻喰らいの頭を打ちぬいた。長年の修行で磨かれた刃はこんな時でも鈍りはしない!
大木すら、大妖牙クジラさえ屠った琉宮拳の一閃!
…しかし!
「残念!」
尻喰らいは亀のように頭を同体にうずめ避けていた!(キモイ!
そうして、不安定な体制で、腕を振りぬき…体の正面を曝け出した少女の胸に両手を突き出す!
「おっぱいは頂きだぜええええ!」
…あれ?
勝負あり!
その瞬間に時が止まった。
勝負あり!
そのようになる…“はず”であった。
尻喰らいの攻撃、諸手は確かに流々に届いた…胸に届いた…おっぱいに届いた…しかし、なんという事だ!
「おっぱいなくね!?」
その驚愕が尻喰らいの動きを止めて、その言葉が流々の力となった。
…ッカ!
スパパーーーーーーーーーーーーーーーン!
(ブシャァアアアアアアアアアアア!
◆ ◇ ◆ ◇
夕日が山影にかかる頃
紅く染まった湖の横…緑の血だまりで少女は泣いた。
「うわぁあああああああん!」
「だ…大丈夫だ嬢ちゃん!俺は尻が好きだ!」
深く静かな山の奥
静かに広がる池のほとり
涙にくれる少女と
全裸の男は静かに抱き合った。
馴れ初め図