河童の皿と雨と大岩
グロ回
ザァアアア…
雨が降っていた… いいぞ…
ザァアア…
土が…緩くなっていく… クックック…
(岩を乗せられた時は焦ったが…素人だな…こんな川辺に封印するとは…)
(………)
海で育った雨雲が
火野丸の国、静畑山を乗り越えて…
雨止めの山脈にぶち当たる。
ザァアア…
ザァアア…
ザァアア…
ザァアア…
行き場を無くした雲が溜まる、溜まった雲から雨が降る
山脈あれば渓谷があり
山があれば谷がある
そこには小さな流れが出来て
小さな流れは下へと下る
道は違えど行き場は同じ
それは静畑の海原だ。
流れ流れ
道はだんだん合わさって
大きく深く、うねり猛り
ドドドド
(来た!!)(何が?)
外道=尻喰らいを封じた岩に
増水した川が殴りつけた。
グワァンドドドド
(チィ…駄目か!)(どこだここは?)
それでも大岩は動かない!
しかしだ…岩が揺らいだその刹那に
尻喰らいは右腕を外へ出した!
自由になった腕はしかし、激流にもまれ、石に打たれる
ベキベキベキ
(ぐぁあ!ぐぬん!)(痛みを感じない)
…しかし、外道=尻喰らい
ひとたび切られ
ふたたび切られ
みたび潰され
岩を置かれて、尚も蠢き、尻を求める
今更この程度で怯むわけなし
しゃにむに腕で水を掻き
川底を叩き
暴れに暴れる
…ああそうして!流れ転がってきた石を掴んだ!
ッガ!
ッガ!
ッガ!
河童とは不死身である。
所説あろうが、人ではない、妖だ。
命が器にたまった水として
それを飲み干し人は死ぬ
河童は頭の器に山の気を受け
命の水を満たす妖
まぁ一説だ。
万物の理はまだ霧の向こう
とにかく外道は生きていた。
岩に潰され
手がひしゃげても
命は消えず
欲望は枯れず
「ぐぁあああ!ぐあああ!尻ぃい!」
(乾く、乾く、乾く)
自由になった腕を振り回し、石を掴んで
砂を堀り、小石を掻きだし、自由になる…自由になる
ザァアアアア…
ザァア…
サァアア…
ァアァ…
…
ガリ…ガリ…
雨は止み
日が昇る
ガリ…ガリ…
ガ…ズボォ…
また日が沈み
水嵩が引いたころには
不穏な音もいつしか消えて、大岩の下
ぽっかり空いた穴一つ
ボゴゴゴゴ
穴が崩れて岩が揺らぎ
ぐらりと大きく転がって
ゴロゴロゴロ
バシャァアアン
「忌々しい岩だ…俺が自由になったら消えやがった」
(空腹だ…ひび割れた椀だ…皿だ…乾く…乾く…空っぽだ…)
河童は忌々し気に川底を見る
グルグルルゥ…
「腹へったなぁ」
(乾く)
河に飛びこみ水を飲む
ガリガリガリガリ
小石を喰らう
「ゴップゥ!ボゴゴ」
(苦しい)
♪
河童は阿呆だなんでも喰らう
石を齧って池に沈む
河童は阿呆だなんでも喰らう
鳥を食おうと崖から落ちる
河童は阿呆だなんでも喰らう
火に手を伸ばして黒焦げだ
阿呆な河童池の底
阿呆な河童は崖の下
阿呆な河童は灰になっても
何度も何度も蘇り
なんでもかんでも食らいつく
…それは、知月ルンルン達が、別れの涙を流した頃の事。
ザァアア
ザァアア
「………」
河原にあったはずの大岩が無い
その事に気付いた知月は村の出入り口にまた馬を繋げた。
尻喰らいは“尻”に執着するので
馬を襲う時は後ろからだ。
こうしておけば馬に蹴られて…すごすごと山に逃げ帰るのだ。
次に馬が襲われた時が…
最後の戦いになるだろう
尻喰らいを岩に封印したあと
父、河童長老と相談してある。
あの大岩には、ご先祖の“河童の皿”を張り付けていた。
何枚も…何枚も…
何度命を奪えども、河童の皿が山の気を吸い蘇るのだ…
だが…それだけではない。
(ご先祖様が…どれだけ“吸い出してくれたか”だ…)
「うわあああ!」
幼い妻の叫びに知月は我に返り振り返る
尻喰らいよりも愛する嫁だ。
「どうした?」
「うわあああ!あなた~大きいサワガニとれたわよ!岩の下にもいっぱい!」
「凄いぞルンルン!それは静畑タランチョラだ!デカした!」
海育ちの嫁は山の生き物にうとい
ムカデは苦手だが、蜘蛛はカニと認識していて平気なようだ。
ちなみ海の生き物でもフナ虫はもちろんエビもダメで…
正直基準が解らない。
「おいしいの?」
嫁は珍しそうにタランチョラを棒でつつく。
さすが武を収めただけあり、的確に頭を打って気絶させていく。
拳大の黒い蜘蛛が、次々とひっくりかえり泡をふく。
「あぁ!山の毛ガニと俺たちは呼んでいる。ご馳走だぞ!
毛が針みたいにささるからな…焚火で焼いてから鍋で煮るんだ。
…真っ赤に茹で上がると身がぷりぷりだ」
「わーい!!カニ大好き!」
「おぉ!村の連中にもご馳走するか!」
魚様に用意していた袋に蜘蛛を詰めて
夫婦はその川を後にした。
ちゃぷん
カサカサカサ…
石の下に隠れた蜘蛛が数匹
夫婦と逆の方へと逃げる
ちゃぷん
カサカサカサ…ガブリ(旨い)
カサカサ…ガブリ(旨い)
カサ…ガブリ(旨い)
ベロンベロン(…足りない)
「くんくんくん…女の尻の匂いがするな、それと生臭の匂いもある」
(懐かしい匂いだ)
…その日の夜
村の入り口の馬がわなないた。
河童に襲われ、追い返したらしい。
虫が苦手なのに
蜘蛛は食べるってもう解らんよなこの子
※ちなみに河童が食べるだけで村人は食べません




