河童小僧の伝説 終 VS海獅子=八手牙魚
伝説回(後の世の
バキバキバキ!
…遠くに狼煙が見えた刹那
船が揺れた
大人の胴ほどもある八つの腕が海上に飛び出し船に巻き付く
普通の船員なら絶望だろう
訓練を受けた兵士でもちびる事間違いなしの状況だ
しかし
少女二人は不敵に笑った。
スパパパパ!
料理人ランランの包丁が唸りを上げて
腕を切る!
一撃で切れずとも“切れ目”で十分
獰猛な相方
大陸の獅子の血を引くガルガルが
足に飛びつき引きちぎった。
1本
2本
…残りは6本!
「…ハハハ!こりゃデカいタコ焼きが出来るなぁああ!」
「まだ来るぞ!?頼むぞ相棒!」
バキバキバキ!
再びの攻撃!
3本
4本
5本
…残りは3本!
「じれったい…海に飛び込んじゃまずいよな?」
「あぁ、せめて2本…いや1っ本にしてからじゃねーか?」
怪力無双
勇猛果敢
二人の少女にとって
船上での戦いなら八手牙魚など脅威ではない。
脅威は海中での対決と
むしろ船へのダメージだ。
…しかし、このデカブツは頭が悪い。
痛覚も鈍いのか
一回切られてもまた手を出してくる頭の悪さだ。
「馬鹿の一つ覚えに攻撃たぁ…ガルガルみたいだな!さすが海ライオン!」
「ハハハハハ!ランランおもしろい!それ遺言でいいの?」
バキバキバキ!ボキャ!
度重なる攻撃に船体がきしむ…
下手したら船底がもう危ない…
6本!
…な…七本目を逃した!
残りは二本だ!
二人は海へと飛び込んだ!
海中でも一人一本ならぶち切れる!
そういう自信と
実績が二人にはあった。
それに八手牙魚討伐の時点で船が沈むのは覚悟してたが
出来るなら無事な方が良いだろう!
ドボボン!
泡を巻き込み、水中に入る!
まだ沖合だ…海の底はどこまでも暗い。
本来の生息地
浅瀬ならもっと綺麗だったのになと
ランランは呑気に考えながら…ブチブチ
7本目!
襲ってきた腕を左手でつかみ
右手で包丁を入れながら引きちぎる
海面にはすでにもう一本浮かんでいて…おそらくガルガルがやったのだろう。
これで相手はただの魚だ。
ただデカいだけで動きも遅い間抜けな魚
獲り逃してもそこまでの脅威になりはしない。
息継ぎの為にも一度戻ろう…
そう思い水面に向かうランランの足を
何かが掴んだ
“9本目の腕!?”
ッボ!!
水面に上がる水柱…その数2本
シュタタンと
船上に舞い戻り少女達は目を見合わせる
先ほどの軽口が嘘のような獣の目を光らせた互いの眼差し
「何本…じゃねぇや!…何匹見た?あたしは三匹」
「マジか?とっさだったから足しか見て無かったぜ」
バキバキバキ!
ボッギャ ペキキ!
海上に上がる腕7本
「一度には襲ってこれないのな」
9本
10本
「けどやべえぜ?もう船が限界だ!」
予備としては
帰りように小舟も浮き輪も積んではいるが
無傷の相手がいる状態では自殺行為だ。
「ロープで体縛って海中で叩くか?」
「危険だが…やるか…腕が船上に来てるタイミングで一人もぐって“頭”をつぶす」
訓練を受けた兵士でもちびる事間違いなしの状況だ
しかし
少女二人は不敵に笑った。
1匹
2匹
…しかし、笑えているのもここまでだ。
バキバキバキ!ボッキャブゴッベキベキベキベキ…!
遂に船が限界を迎えた。
海中にはまだ数匹…
「ったくよぉおお!百獣の王なら群れんじゃねーよ!」
残った小舟でランランが言う
「遺言にしては恥ずかしいぞ?…ライオンってのは群れるんだよ」
バキ!(ボシャァ!
最後の足場も無くなった…!
「遺言にして堪るかぼけぇええええええええ!」
「彼氏も出来ずに死ねるか糞がぁあああああ!」
ドボボン!
時刻は夕刻…
傾く夕日が海を染める。
夜になれば万事終わりだ。
二人は一気に怪物共に襲い掛かり…この地獄を逆に喰らいつくす!
そんな覚悟で飛び込んだ。
ブクブクブク…
巻き込んだ泡が晴れると
ぷくぷくぷく…
ひっくり返って浮かびくる八手牙魚
1匹2匹
(なんだ?)
ギュッボボボボボボボ!
…その魚影は、雷のごときスピードであった。
水面での待ちと違い
四方から伸ばされる腕は10本 20本 30本
巨大な腕の網目を縫うように
その魚影は駆け抜け
怪物たちの目をつつき
怪物たちの腕を縛る
「わっしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!」
先に上に…水面に浮かぶ怪魚の腹に上っていた
ランランとガルガルは
水中に飛び上がった河童小僧を抱きとめた。
「楽しかった!おで強い!」
「……お…おう!やるな!」
「ありがとな、見直したぞお前」
「てへへ~」
((可愛い))
河童小僧はリンリンに八手牙魚をプレゼントするためにやってきたそうだ。
いっぱい獲れたので誇らしげだ。
「どうするか…、小僧ちゃん…とりあえず私たち南トリトン島に行きたいんだ。
日が暮れるし…島の人達は不安だろうからな」
「わかった!友達が来たらおさかな運んでもらうの!それまでまってて!」
「解った…友達?リンリンか?」
ザバババッバババ!
海面が盛り上がり
巨大な怪魚が姿を見せる
静畑の海を荒らしていた大妖“大崩れ”
そして二匹のペンギンも腹に上がってきて
小僧と話している。
「ありがとう!二人はおねーちゃんたちを島に案内してあげて!」
ピシっと
敬礼をしたペンギンを残し小僧は海に戻っていった。
「…すごいなアイツ」
「ああ」
…しかし、ペンギン二人は焦っている
船が無いので人間二人を運べない…
海中に潜って浮かぶ怪魚を押してみても
ペンギンの力じゃどうしようもない…
…それは河童小僧も同じようで
「うわあああん!お魚流れていっちゃう!」
大崩れが一匹はかみついて確保したが
他の獲物がどんどこ流れている…
あぁ…日が沈む
「うわあああああん!」
…その時だ。
本当の方から数隻の船がやってきていた。
琉宮七星家の旗を掲げているが
船長は見覚えのない男だ。
黒い肌を夕日に赤く染め
風にドレッドヘアをなびかせている。
「誰だ?」
「分らん」
…船が近づき
ドレッドヘアの船長が叫んだ!
「ガルガル!ランラン無事か!?」
「えっあっはい!」
「あ…あぁ、船はやられたがなんとかな…」
二人の返事に
男は一瞬顔を緩ませ…しかし
すぐさま眉間に眉をよせ、戦場の男の顔つきになる。
「さすが二人だ!…だが一匹倒したとて油断するな!今回は八手牙魚の大量発生だ!お前達!酒を海に撒け!」
言うが早いか
船員がドボドボと蓋を開けた酒樽と海に落とす
「えぇえええええ!?」
「も…勿体ない!なんでえええええ!?」
「これで海中の奴らを酔わせ…海面に引きずり出す!みんな…ロープと守りの準備をしろぉおお!」
サバァア
…大崩れが浮かんできた。
あとペンギンも
「…よし!」
「「良しじゃねぇえええよぉおお!?」」
…事の顛末を知り
男はその場で倒れ込んだ。
「えぇえ!?ロンロン様だったんですか!?」
何故か船員も驚いている。
「…まじかよ」
「えぇ…」
普段のロンロンは大人しく、交易の港で父の仕事の手伝いをしながら
ひたすら本を読むもやしっこだ。
怪物が出る海にくるようなキャラじゃないし…うん
ドレッドヘアじゃないし…
「お前らしくないなぁ…」
あんなに声を荒げ、力強く。人に指図するキャラじゃない
「ハハハ…いたた、うでが…あっそうだった。えっと八手牙魚だね」
彼は倒れたまま船員に指示を出し
河童小僧にロープを渡した。
獲物を確保し、小舟で島に伝令を飛ばした。
手紙をしたため、ペンギンに本島へ託を頼んだ。
「キャラじゃないなぁ…」
こんなに頼れる奴だったかなぁ
ガルガルは頬を掻き思い出す。
小さい時から見ているがり勉と
夕日に照らされた船長だ。
…どうにも考えこんでいると
ランランが先にお礼を言った。
「ありがとな!ロンロン…おまえここまでずっとオール漕いでたんだって?」
「ハハハ…慣れないことしたから体が痛いよ」
らしくないなぁ…
「でもまぁなぁ~」
ランランが笑いながらこっちをみた。
お礼は何故か口を出ないで、ランランに先を越されたが
これなら私も言えそうだ。
必死にがんばり
慣れないことして
激を飛ばして駆け付けて
けっきょっくおくれてやってきたとは…なんとも抜けた笑い話!
「お前らしいなぁ~アハハハハ!」
「わっわらうなよ!?必死だったんだぞ?」
オールを漕いだぐらいで寝たきりだ
「わたしとランランなら三日三晩でも漕いでられるぜ!?
「ぐぅう…心配したんだぞ!?」
情けない姿に涙を浮かべて
いつもの気弱な顔に戻った。
「アハハハハ!お前らしい!お前らしいなぁ!」
小さい時からそうなのだ
誰かが困るとひっしに考え、助けに行ってはケガして帰る。
「お前らしいなぁ!……ありがとな!」
…
……
………
その翌日
本島の屋敷に戻った一行は
ガルガルの家で“花束”を受け取った。
「ロンロン様からガルガル様へと預かっておりました」
ロンロンは石になり
私も石になった
「お…お前らwらしくないぞwwwww」
ランランが腹を抱えて笑っている
「う…うるさいぞランラン!そ…そだなロンロン!どどど…どういうつもりだだ…?は…花束とかららら…らしくないぞ?」
「え…えっと…旅に出…出ちゃうってきいたらか…えっと…」
なんだろう、顔が熱い
「らしくないのはお前だぞ?ガルガル!ダハハハハハハ!鏡みろよww」
「うるぇせえええ!それが遺言で良いんだろうなぁあああああ!?」
こうして、八手牙魚の騒動は一件落着
リンリンの歎願で出陣した船団も、ペンギンの手紙でUターン
リンリンと河童小僧は涙の対面をはたし
河童小僧の頭にたんこぶが出来た。
「うわあああん!」
「もう!心配かけないでよね!!」
…さて
会議の結果であるが。
河童小僧が望むなら
二つの道が用意されていた。
1つ、琉宮王国に残る事
2つ、静畑村と王国をつなぐ、定期便の任務に就く事。
会議のメンバーは2を望んでいた。
河童小僧と別れがつらいのはリンリンだけでなく
静畑にだって友達もいる
選ばせるのはまだ早いかと
それに嫁いだと言ってもルンルンは元姫だったし
パパんとしては連絡は取りたい
…しかし、
この二つの案は河童小僧を「大人」と認めて仕事を与える措置なのだ
子供として扱うならば
河童長老がいったように、問答無用で連れ帰って文通でもさせればいい話
「どうする小僧ちゃん?」
「うーん、解った!おで働く!」
働くならば河童小僧は示さねばならなかった
しかし…示した。
「パパん、これなら認めないといけないわねぇ~」
「ぐぬぬぬん」
ルンルンは小僧を抱きしめる妹を眺め
隣にいる父に声をかけた。
河童小僧の後ろには
12体の八手牙魚が並んでいた。
あとペンギンとヒラメとエビと
大妖=大崩れがどや顔で海から顔を出してる。
…あとウミネコもなんか加わった。
「おで頑張る!リンリンお姉ちゃんの船守る!」
「ありがとーー!」
リンリンと同じ仕事だと勘違いしているようだった。
微笑ましい。
琉宮王国七星家が八星家に
星が加わるのはまだまだ先の話である。
結構力業で駆け抜けてしましました(いつも通り)
ロンロンくん活躍の予定だったけど
二人と小僧が強すぎました。
飛び込んで一撃で頭狙いはじめた時は
私のが頭抱えましたよ。うん
あと、多分ですけど
ルンルンの使う琉宮拳は“対、八手牙魚”の拳法なんだと思います。
鬼ヶ島で海割ったりもできてましたし
後付けさくさく、だけどなんだかしっくりきます。




