表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ドラグニカシリーズ

藤堂亜理紗のリベンジ

作者: 三城谷

「――勝負致しましょう!」


 それはある日の事。休み時間になった瞬間、俺のクラスへと彼女がやって来た。机をバンと叩き、身を乗り出す形で俺へ迫る。休み時間の度、毎度毎度飽きずに良く来るものだと思う。


 「この間の決闘で戦意喪失してた奴が、随分と熱心になったもんだな」

 「あの決闘は水無月さんの邪魔が入りましたわ。その影響でほぼ中止というのは明らか。なら、再び貴方と私が決闘するのは道理ですわ!」

 「仮にも序列3位なんて言われる奴が、無名の奴、それも編入してきた新参者に負けちゃプライドが傷付くか?」


 俺がそう言うと、彼女は乗り出していた体を元に戻して腕を組んだ。彼女が負けたのが悔しいから、ちゃんとした決闘をもう一度して、それで勝敗を決めたいという意志なのだろう。

 確かにあの時は邪魔が入ったし、俺も試す事は試せなかったが……今は戦う気分じゃない。


 「序列など関係ありませんわ。私が、貴方に、負けた事が嫌なのですわ!」


 彼女は一言一句強めに言い放つ。そこまで真っ直ぐに言われてしまっては、引き下がるのも失礼に値するかもな。……仕方がないか。


 「はぁ……分かった。今日の放課後で良いか?」

 「っ……最初からそう言えば良いのですわ。では放課後、決着を付けましょう?霧原零さん」


 そう言って彼女は、俺の教室から姿を消した。放課後がここまで面倒と思う日が来るとは、正直思ってもいなかった。


 「良いのか?あんな約束して」

 「海斗か。別に良いさ。取って食われる訳じゃないし、どのみち精算しなくちゃいけなかったしな。良い機会だろ」

 「そうか。まぁ頑張れよ。影ながら応援はしてやる」

 「そりゃどうも」


 俺は海斗とそんな会話をした後、自分の椅子へと腰を下ろす。その間、俺は少し彼女という存在を調べる事にした。これが決闘に活かされるかは、俺自身の記憶力と予測がマッチングするか否かで決まる。

 まぁ……なるようになるだろ。多分……。


 


 「やっと来ましたわね、霧原零さん」

 「早いな。まだ数分あるはずだぞ?」


 そして放課後となり、俺は事前にもらっていたメールの内容に従い、決闘用の闘技場へとやってきた。だがしかし、約束の時間まではまだ時間があるというのに、彼女は既にその場所に居たのであった。


 「レディを待たせるとは良い度胸ですわね」

 「レディ、ね。これがそういう華やかな話で、ウキウキな気分になってたら早めに行動したかもな。まぁそんな事は無いし、来る日も無いと思うが」

 「そうですわね。少なくとも貴方に声を掛けられて、嬉しがる生徒は少ないでしょうね」

 「ズバリ言ってくれるな。そういうお前は、そんな相手が居るってのか?」

 「……居ませんわね」


 なんとも悲しくなる会話だ。まぁ、これは華やかな雰囲気を彩る為に会っている訳じゃ無いしな。くだらない雑談は、これぐらいにしとくか。そろそろ彼女も、行動に出るらしいし。


 「では、やりましょうか。準備はよろしくて?」


 そう言いながらやる気満々だ。彼女は予想通りに武器を具現化させ、持ち手を地面へカツンと立てて言った。やるしか無いかと思いつつ、俺も戦う意思を彼女に示す。


 「適当にやるぞ、ウロボロス」

 「余裕があるのですわね。その態度、気に入りませんわ!――ふっ!」


 前触れも無く、警告もなく彼女は武器を突き出す。俺の耳元で風を貫く風圧を感じ、反射的に受け流す処理をして正解だったと安堵する。


 「いきなりだな!完全なるフライングじゃねぇか!」

 「勝負において、敵が開始の合図を待つ事はありませんわ!」

 「あくまで実戦向きやる決闘なら……お前の方こそ良い度胸だなぁ、まじで」


 振り払われた槍を下がって回避すると、追い討ちでもう一度突きを繰り出す彼女。並大抵の人間なら、このコンボだけで空中に居る間の隙を突かれて御陀仏だ。だがしかし、実戦ならそう甘くは無い。


 「っ……す、素手で!?」

 「そんな真っ直ぐに突かれれば掴みたくもなる。まぁ正直、この程度で驚くのは拍子抜けだな」

「っ!」


 俺は槍を引き、彼女と一緒にこちらへと引き寄せる。強制的に引き寄せられた彼女は、何をされるかと恐怖したのだろうか。目を瞑ってしまっている。


 「それじゃ決着は付けられないな」

 「え?……ぐっ!」


 俺は油断を見せた彼女の首に手刀を入れ、半ば強引に決闘を終了させた。糸の切れた人形のようになった彼女から、カランカランと音を立てて地面へと落ちた槍はその姿を消していく。

 気絶してる彼女の体は、温もりを帯びているのと同時に軽く感じた。


 「黙ってれば美形なんだけどなぁ。勿体無いぞ、お前……ま、聞こえてるはずねぇけど」


 俺はそう言いながら、気絶した彼女を医務室まで運ぶのであった。その決闘を眺め、俺の背中を微笑みながら立つ少女に気付かずに……。



 その日の夜。深夜帯に目覚めた彼女の元に、一通のメールが届いていた。何か添付されている事に気付いた彼女は、訝しみながらもそのメールを開いた。


 「な、なななな、なんですのこれはっ」


 そのメールには、自分がお姫様抱っこをされている画像と録音データが添付されていた。その録音データを送ってきた者は、身元を隠していて特定出来ずにいた事を俺は知らない――。


 「にゃふー♪」

 「ご機嫌ですね、水無月さん」

 「ちょっと面白い物を見ちゃって、くぅちゃんも後で見る?にゃはは」

改行、訂正を致しました。(2019/06/25 19:25)


ご拝読、有り難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ