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聖剣←魔王↑勇者  作者: 灰猫
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覗き魔王と精霊化

 「……なるほど、な」


 瞑っていた目を開き、何故か己の膝でじゃれ合うティーリカとピリを見る。


 「このエルフの子供。中々面白い存在だ」


 「ふぇー?いきなりなんなのさー」


 「んー?」


 くすぐり合う手を止めて魔王を見上げる二人に魔王はため息を吐く。


 「勇者、貴様はコレの異質さを体験しただろうが……」


 「異質ー?………あ、気配が読みづらいって事ー?」


 「そうだ」


 先程まで目を瞑っていたのはピリの存在に興味を抱いた魔王が魔力を操ってピリを調べていたからだった。


 「…………」


 「…………え?それでー?ピリちゃんがどうしたのー?」


 「む?何故貴様にそれを言わなければいかんのだ?」


 心底疑問に思ったらしい魔王の言葉にティーリカが怒る。


 「いやいやー、それはないでしょー!?気になる事言って答えは言わないとかイジメー?イジメなのー!?魔王のバカー、こみゅしょー!」


 「ほう、貴様。我をバカとな?8000年存在し、知を蓄えた我をバカ、とな?」


 「その蓄えた知の中にスプーンの使い方が載ってなかったのが驚きだよー?ジャンル偏ってないー?大丈夫ー?」


 怒りから憐れみの目になったティーリカに魔王は言い様のない怒りが沸き起こる。


 「く………ふん。ならば我の知を見せてやろう。『解析』『投影』」


 魔王がピリの頭に手を乗せ、術を唱えると翠色の粒子が宙へ漂う。


 「これがコレの魔素と身体を形作る元の配合と配置だ」

 

 「………………………」


 粒子で作られたピリの身体が淡く光って宙に静止している。


 「ふん、驚き過ぎて声も出ないか」


 「これ、ピリ?」


 「む、そうだ。これは貴様を象ったモノだ」


 「キレー」


 「ふん、中々見る目があるな貴様。我の術は細部まで拘り抜いた傑作のみよ」


 ピリの言葉に気を良くした魔王が誇らしげに語る。


 「魔王、コレ、ボクのも作れるの?」


 そんな魔王にいつもの間延びした喋り方が消えたティーリカが話しかける。


 「む、当然であろう。貴様なぞあの戦いの時に既に調べ終わっておるわ」


 「〜〜〜〜〜っ!!?」


 頬を押さえて顔を徐々に赤くするティーリカに魔王は燻げな顔を向ける。


 「魔王のエッチー!!」


 「ふぉっ!?な、なひをふるきはまー!!?」


 身体は子供でも心は乙女?なティーリカは己の身体の内外隅々まで知られていると思い魔王に飛びかかって頬を抓る。


 「や、やめぬかっ!?いきなり何をとち狂った貴様っ!?」


 「うぅ……バカー、エッチー、覗き魔王ー……お嫁に行けないー」

 

 ティーリカを掴み、膝へと手で押さえ付けるが次はべしべしと魔王の太ももを叩く。


 「なんなのだ一体……コレの事を聞きたいのではないのか?」

 

 「子供でも乙女の秘密を暴くなんて許せないー……」


 べしべしと繰り返し膝を叩くティーリカに魔王は呆れる。


 「よく分からん事を言う奴よ……まぁ、やがて消える者の事を知っても貴様には価値が無いのだろう」


 「……………ちょっと待って」


 魔王の口から出た不穏な言葉にティーリカは魔王の顔を見る。


 「誰が、消えちゃうって?」


 掠れたような声がティーリカから漏れる。

 己の心臓が段々と鼓動を早め、嫌な汗が出てくるのが分かった。


 「む?だからコレよ」


 「んー?」


 ぽんと掌を乗せたのはピリ。

 あどけない顔で頭に乗せられた魔王の掌を掴んで遊んでいる。


 「魔王殿……今の言葉、どういう意味でしょうか」


 後ろにいたロアが緊張した顔で魔王へと問い掛けてきた。


 「どういう意味、か。ふむ、そうだな。消えるという言葉は相応しくないか。いいだろう我が知識を貴様らに披露してやろうではないか」


 そう言い放つと魔王はピリの投影をグニャリと歪ませると何やら細く螺旋を描いたモノへと変える。


 「これは貴様らを形作るモノ、設計図だ。これは種によって別な形となる。人種はコレだ」


 「わーっ!?魔王のバカー!!」


 螺旋の横にティーリカ子供バージョンの姿が映り、頭部分に螺旋が表示される。


 「螺旋の形が違うだろう。性別はこの螺旋を形作るモノの構成で変わる」


 そこでティーリカの投影が消えてピリのモノだけになる。


 「これが女。貴様だ」


 「ふぇぇぇえっ!!??」


 次いで現れたのはラニの投影。スレンダーだが出るところはしっかりと出ている身体付きをしている。


 「コレは男、貴様だ」


 「んなぁっ!!?」


 しなやかな肉付きとしっかりとした筋肉。力よりも速さや跳躍、スタミナに重きを置いた身体はロア。


 「で、貴様らの螺旋はコレだ」


 構成はやはり女性のラニと一緒だが、それ以外でロアと一致する箇所もある。


 「興味深いのはこの部位」


 魔王が背中を掻く棒を螺旋の中心へと向ける。


 「これ、私達にはありませんね……」


 ラニが魔王の示す螺旋の中心、三本の細い垂直な線を見て呟く。


 「当然であろう?これは精霊を構成するモノだ」


 「「「…………え?」」」


 そんな魔王の言葉にティーリカとロア、ラニの呆気に取られた声が被る。


 「………ん?」


 唯一、ピリだけは何も分かってはいない。





 「……つまり、その精霊を構成する線が中心でも螺旋を描いちゃうとピリちゃんが消えちゃうの?」


 魔王がその後に見せた螺旋は精霊のモノ。

 それは外と内に相対する方向へと螺旋を描いたモノだった。


 「そうだ、古い文献には精霊化と書いてあったな。実験等の過程や結果が載っていた」


 「え、じゃ、じゃぁピリは誰かの実験に!?」


 怒りの表情で立ち上がるロアに魔王は鼻を鳴らして呆れる。


 「阿呆め、古い文献と言ったであろう?確か……5000年程前だったか。その時でさえ相当古いモノだった。今では存在した事すら誰も知らんだろう」


 「な、ならば……何故」


 「その文献には成功例が書いてあった。目と耳に優れ、魔力との親和性がとても高い。更に寿命が人より長く、それは容姿に優れていたとあったな」


 視線がピリとラニに向かい、ティーリカがハッとする。


 「魔王………まさか、親子で、なんて………ダメだからねー!」


 「ふなぁっ!?」


 「……んー?」


 ティーリカは先の事から未だに混乱しているようで突拍子も無いことを言ってラニを慌てふためかせる。ピリは不思議そうに首を傾げていた。


 「……こやつが何を言っておるのか分からんのだが」


 「御使い様は……少し疲れているみたいですね」


 再び膝の上でもがき出したティーリカを魔王が抑えながら説明を続ける。


 「その、成功例とは……まさか我らの祖先、でしょうか?」


 「ほう、気付いたか。恐らくはそうであろう。そして組み込んだ螺旋は人と精霊。こやつのコレは先祖返り、とでも言った方がいいか。そのうち肉の身体は魔力のみの構成となり、特殊な目や術でなければ見も会話も出来なくなるな」


 「そん……な」


 立ち上がっていたロアが膝から崩れると頭を抱える。


 「確信は他にもある。我の目は特殊でな、魔力を見る事が出来る」


 そう言うと魔王の右目が黒から紅と色を変える。


 「この状態で見ると今よりハッキリとこやつが見え、気配も分かる。精霊となりつつある証拠だ」


 「元の状態へと戻す事は出来ないんですかっ!?」


 「さあな」


 必死なロアに魔王は素っ気なく答える。


 「これは我がこやつの存在を調べて分かったこと。何故こうなったかは推測出来たがコレをどうすれば元に戻すかは我の知識にはない」


 「あ、あぁ……くっ」


 ロアが魔王を睨むように立ち上がるとそのまま部屋を出ていく。


 ラニも相当なショックを受けている様で魔王の膝にいるピリを口を押さえて見ている。


 「……魔王、何とかならないの?」


 「無理だな」


 我を取り戻したティーリカが魔王へと尋ねるがやはりその答えは素っ気なかった。

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