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こんな世界は嘘である  作者: 我藤 育人
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第1話?:epilogue?

"嘘"ってなんだ?

相手を騙すのが"嘘"だというなら、相手が騙されたことに気づいていない状態、"嘘"が発覚する前の状態でそれは"嘘"なのだろうか?

発覚していない"嘘"は真実でそれの真偽を確かめて発覚するのが"嘘"なのだとしたら、この世界を"嘘"にしてしまったのは俺…ということになる。

俺が気づかなければ…!気づこうとしなければ…!


そんな考えが頭から離れない。

今考えるべきはそんなことじゃない。

今考えるべきなのは、どうやって"あいつら"から逃げるか…。

そもそも逃げられるのか…?

"あいつら"はずっと俺を追ってきているはずだ。自転車を全力で漕いでるおかげで距離はかなり取れたはず、逃げる手段は確保した。

あとは逃げ込む場所。絶対に安全な場所。


伸介(しんすけ)ー!!どこいったの!?」


来やがったッ!!


「早く一緒に帰ろうよ伸介ぇ〜。家出なんて馬鹿なことやめて、今なら許してあげるから」


その顔で、その声で、俺のことを呼ぶんじゃねぇ……!!

俺のことを呼ぶ彼女は、俺の隠れている路地裏に入ってくる。

ゴミ置き場の影に隠れている俺に向かって近づいてくる。ゆっくりと、着実に。

1歩、また1歩と近づいてくる女性。

彼女がゴミ置き場に到着する前にこちらから仕掛ける。


「これでもくらいやがれッ!!」


捨てられていた電子レンジの粗大ゴミを女性めがけて投げつける。それが彼女の左肩に命中する。ガシャン!と音を立てて地面に電子レンジと、


ーーー左腕が落ちる。


「痛いわ…。母さんそんな子に育てた覚え、ないわよ?帰ったらちゃんと教育してあげる」


「教育?改造の間違いだろ!俺はお前らの仲間になんてならねえぜ!!化け物がァ!!!!」


近くに止めていた自転車を横に薙ぎ払うようにして自分の母親の姿をした機械仕掛けの化け物にぶつける。


車輪の部分が頭に命中し、彼女の首を180°回転させる。


「伸介、伸介ぇ、伸すけェ、伸スケェ、シンスケェ!シンスエ?ジンスェEe!!」


制御していたなにかが壊れたかのように、彼女、いや"それ"は狂い出した。

小刻みに震えながら、ぎこちない動きで距離を詰めてくる。


もう一度頭めがけて自転車をぶつける。

しかしその攻撃を残った右手で受け止め、車輪の部分を握りつぶして形を変えてしまう。


「くっそがッ!!」


唯一の移動手段だった自転車を手放し、積み上げられた雑誌や家電などを倒すことで少しでも"やつ"を足止めする。


路地裏を奥に奥にと進んでいく。この先に何があるのか、どこに繋がっているのかはわからない。だが、少なくとも"あいつ"に連れていかれるところよりは安全なのは間違いない。


しかし、相手にしているのは"あいつ"だけじゃない、"あいつら"だ。

路地裏から脱出し、そこそこ大きな路地に出る。


「ん?伸介じゃん!!こんな時間に、こんなとこで何やってんだ?」


路地裏を抜けた先にいたのは藤池、俺と一緒のクラスで野球バカで、俺と一緒にバカやってた親友。


「なにヤッテるンだ?」


を装った"あいつら"。

一目散に逃げる俺を追いかけてくる。


「どコいクンだヨォ!?」


点滅している歩行者用の青信号を無視し、途中で赤信号に変わっても横断歩道を突っ走る。

それを当然、追ってくる"偽"藤池。


「なんでッ…!!なんでこうなったッ!!いったいいつから、どこから!!」


そう叫んだところで危機的状況は変わらない。

かにも思えた瞬間。


「マテヨ、シンスkガァァッ…!!」


"偽"藤池が車にはねられた。

硬いコンクリートの道路を転がって皮膚、いやコーティングされていた表面が剥がれて、冷たさを感じさせる灰色の、鉄の部分が出てくる。


その時に、自分の叫びが神に届いたと、神への感謝を誠心誠意行ったが、本当に神がいたならこんな世界になどならなかった。


飛ばされた藤池だったものがムクリと起き上がる。


「グギギギガァ、ギギンンググゲェェ!!!」


顔がズタボロになり、会話する機能に支障をきたしたのか、濁った機械音を口ずさむ。


そんな異様な光景が街中にあるにも関わらず通行人や彼を轢いた運転手は何食わぬ顔をしている。

それがあたかも当たり前であるかのように。

それが意味するのは、絶望。

この街が既に機能していないことを物語っているのだ。


「グギャァァァァーー!!」


鼓膜をつんざくような叫びが響き渡る。

耳を塞ぎ、目を閉じて意識が喪失仕掛けるのを耐える。

しばしの間続いた絶叫がピタリと止んだ。

静寂。様々な店や多くの通行人がいる街中では決してありえない静寂が、逆にこちらの恐怖心を煽る。


目を開ける。眼前の光景は、まるで一枚の写真のように、ピタリと、世界が停止していた。

その光景に唖然として、無意識的に後ずさりしてしまう。


…カラッ………。


なにかが足に当たったと思った時にはもう遅かった。

道路に落ちていた空き缶を蹴ってしまったのだ。一切音が立てられていない街に空き缶が転がる音だけが鳴る。


ギロッ。


横にいる背を向けていた老人の首が180°回転して俺を凝視する。

その目が、赤く赤く光っていた。


ギロッ。ギロッ。


反対の歩道を歩いていたカップルの四つの赤い目がこっちを見る。


ギロッ。ギロッ。ギロッ。


コンビニの店員が、サラリーマンが、女子高生が、こっちを睨んでくる。

その顔が全くの無表情なので余計に気味が悪い。


その沈黙は、まるで溢れ出ようとしているものを無理やり抑え込んでいるかのような感じだった。


なにかの表紙にその栓を抜かぬようにしなければ、いや。溢れ出る前に逃げなければならない。


自転車はさっき壊れた。車は"あいつら"が乗っている、ダメだ。そもそも運転できねえ。

コンビニの前に止まってる自転車、鍵がかかってる。原付きもダメ。


どうすりゃいいんだよ!!


「嘘だよな…、おい!!夢だろ?夢なら覚めてくれよ!!」


天に向かって叫んでも、神は助けてはくれない。

神が助けてくれるのは、それ相応の頑張りを見せたものだけ。俺の頑張りが足らなかった?俺は充分頑張ったはずだ。なら最初っから神様に助けて貰える程の人間じゃなかったってことなのか…。


人の温もりを持たない機械人形達の波に飲まれる。


俺は諦めたからダメだったのか…?

諦めなければ、……いやそんなことを考えるなんて無駄か。

諦めなければ…、いつかきっと…、そんな無責任な言葉に期待したら、きっと壊れちまうんだろうなぁ…。


だんだんと意識が薄れ、生きているのかすらわからなくなってきた。


そうだ、これは夢。


だからありえないんだ、こんな世界は…。


こんな世界は……、嘘である…………。







ーーーーーGAME OVERーーーーー


世界(ゲーム)をリセットします』





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