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運命

夕焼けが何処か懐かしい。空は俺がいた世界と何ら変わらないようだ。雲があって、太陽が地を照らしている。その地上にいるのは俺にとって違和感しかない奴らばかりだが、、、


「鯨井零斗さん。これから7日間よろしくお願いします」


俺より数十センチ低い身長の少女はにっこりと微笑んだ。


「メイザちゃんだよね?あの、本当に申し訳ないです。俺なんかが護衛に付いちゃって」


こんなぽっと出の俺に何ができると言うのか。

こんな小さな女の子の命を託すなんてマジで許しがたい会社だ。悪徳業者に違いない。通報ものである。詐欺師だな、うん。


「いえいえ、気にしないでください!私も自分の身はなるべく自分で守ります」


ほぉ、なるほど。頼られてはいないようだね、俺は。一先ず安心、、、なのか?


「ところで、メイザちゃんは何かに追われているのかい?」


一瞬表情が暗くなった後、少女は口を開いた。


「生贄、なんです。」


「いけにえ、、?それってつまり。」


「私の人間としての寿命はあと7日以内なのです。」


「だ、誰がそんなこと決めたんだよ!大体何の為に、、、」


「この世界は決められたレールの上をただひたすら進んでるだけなんです。運命はすべて定めの書に書き綴られていて、私たちの身に起こることは全て予め定められているのです」


予言書があるということか?


「それじゃあ、メイザちゃんは一週間以内に生贄に捧げられるっていうことなのか?」


「はい。細かい日時までは知りませんが、私は吸血鬼になると定められています」


「き、吸血鬼、、、」


「はい、この世界には人間以外に吸血鬼やキメラ、ドラゴン、エルフ、屍鬼など様々な種族が共存しているのですが、吸血鬼とアンデットとは紛争が絶えないのです。そこで定期的に人間の子を選んで生贄として捧げ、その代わりに紛争を阻止しているんです」


「それも全て定めの書っていうやつに書いてあるのか?」


「恐らくそうだと思います。ただ定めの書に書いてある全文は私たちには知らされていなくて、自分の設定だけが公開されているのです」


設定、、、まるで物語の1キャラじゃないか。


「まさかこの世界の辿る道は既に全て決まっているのか?」


「そこまでは分かりませんが、その可能性もあるかとは思います」


すると、少女の表情が急にこわばった。


「どうした、、」


「すみません、今から吸血鬼が私を襲いに来ます。」


「え、」


唐突すぎて思考が追いつかない。

すると、目の前に俺より一回り大きい大男が現れた。口からはよだれがした垂れ落ち、牙が剥き出しになっている。眼は赤く光り、俺らを睨みつけていた。


「っ、、、!」


急いで少女の腕を掴み、逃げようと掛ける。


だが、、、


「その女はこちら側のものだ、何故邪魔をする」


「きゃあ!」


吸血鬼が少女の首を掴んだ。

彼女の体は宙を浮く。


「テメェ!!」


小さな女の子の首を掴むとは何事だっ!

俺の中で恐怖よりも怒りが芽生えた。

無我夢中でさっき教わった呪文を唱える。


「全てを焼き尽くす炎、我が力となれー」


指先から炎の龍が現れた。だが、制御ができない。狂ったように暴れながら火の粉を振りまく。

これでは誰に当たるか分からない。

だから、いきなり魔法使いにはなれるかってんだ!無理だろー!


すると、運良く炎の龍が吸血鬼の腕に直撃した。


「なんだ、この術はっ!糞ガキが」


少女が地面に落ちる。そして、あろうことか炎の龍の尻尾が俺に向かって飛んできた。


まさかの自滅パターン、、、

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