AL協会
あれからどのくらい時間が経ったのだろう。現実の整理と理解が追いつかない俺はただ窓ガラスの向こうの風景を見ていた。既に夕日となっており、オレンジ色の街並みが広がっていた。
ただ、相変わらず頭が二つの馬やエルフのような生物、見たことのない生物があちらこちらに目についた。
「はぁ、、、」
溜息とともに魂まで抜けていくかのようだった。
と、その時ドアの開く音が聞こえて、慌てて振り返った。
「こんにちは、鯨井零斗さん。私たちはAL協会という組織の者です。本日からあなた様の生活を支える者です」
黒いコートを羽織った、いかにも怪しい男女4人がいきなり部屋に入ってきた。かなり事務的に話しているが、内容がさっぱり不明。
あ、これ。やっぱり、、、、、、、
アカンやつや
「い、いきなり。な、、、何なんですか?生活を支える?どういう意味ですか!」
すると、深々とかぶっていたフードを取り外した中年ほどの男が
「2017年7月1日。9時17分。鯨井零斗。交通事故に伴う爆撃で死亡」
ははははは?
そして、その隣にいる若い女は告げた。
「鯨井様は一度、あちらで亡くなられましたが、正確に申し上げると、亡くなったことになっている状態です」
ますます意味が分からない。亡くなられている状態って何だよ。じゃあ今ここにいる俺はいったい。
「あの、全く意味が分からないのですが。。。」
「そうおっしゃるのも当然かと存じます。分かりやすく説明しますと、あちらの世界をAとして、こちらの世界をBと例えます。Aで生まれてAで暮らしていた鯨井様がAで亡くなられる。その瞬間にBの世界に転送されたとお考え下さい。よって、ここにいるあなた様はこうして生きています。あちらでは亡くなったこととして反映されています。ただ、遺体などはもちろんあちらではございません。ここにいるあなた自身がご遺体となっております。物理的には亡くなられてはいませんが、事実としてはAにおいてあなたは死者です。」
「じゃあ、、、ここにいる俺は。。。どういう状況なんですか??物理的とか事実とかよくわかりません」
「要するに、あなた様はこの世界において完全にフリーな存在ということです。もともとAの世界にいたあなたはAで寿命を迎えられた。そして、ここBではもともと存在していなかった人間。運命のレールから外れた存在なのです」
運命のレール?というか、俺の寿命って19だったのかよ。。。えぇ、嘘だよな
「俺はこの世界にいるべき存在ではないと?そういう意味ですか?」
「いいえ、そのようなことは一切ございません。むしろ、必要な存在なのです」
「はぁぁ、、?え。」
「あなた様はこの世界に必要だと認定され、こちらでスカウトさせていただきました。」
スカウト??芸能人かよ。
「スカウトっていうことは、ここで働くっていうことですか?ここの人間じゃないのに」
そもそも、ここの人間とか口に出してはみたものの、いまだにさっぱり意味が分からない。地球が二つあるってことか?世界って国って意味じゃないよな。世界ってなんだ?地球か?惑星?何なんだ、、、
「はい、そうです。1LDKの部屋が貸し出されます。衣食住は完全に当協会が負担いたします。もちろん仕事上必要なもの一式は提供いたします」
「はぁ、、、そう、で、、すか」
なかなかの福利厚生。生活費は負担してくれるのか。
「ただ、給料なのですが、給料はお金ではなく、あなた様の契約を延長することとなります」
「あの、俺は契約社員ということですか?」
おいおい、就職できたと思ったら、期限付きかよっ!
「はい。あなた様は現在契約期限7日間ということになります」
「7日間、、、、、、、え?ええええええええええええええっ!」
おいおいおいおいおい。どういうことだよ?じゃあ一週間後、契約切れたら。。。
「契約切れとなりましたら、Aの世界へ戻されます。あなた様の事故が起きる直前に戻ることになります」
「それって、死ぬ直前ってことですか」
「残念ながらそうでございます。ですから、あなた様にはこの一週間のいちに一定のノルマをクリアしていただきたく存じます」
「ノルマ?」
ヤバイ。ブラック臭が漂うな。この会社。ノルマあり。期限付き、、、、社畜かな?
「ノルマをクリアいたしますと、さらに期限が追加され、最長100年間働くことが出来ます」
「100年って、、、そんなに」
「はい。あなた様には寿命がございません。ここにいるあなた様は年もとりません。よって、働こうと思えばいくらでも働けます。ですが、こちらの事情によって100年という期限を付与しております」
「あぁ、、、、え、、、、、え?」
年を取らない?は?そんなことありえるのか?俺はどうなってしまったのか、、、
「続きまして、鯨井様が仕事で使う武器についてご説明いたします。鯨井様は交通事故に伴う爆撃によって生涯を終えましたので、爆撃スキルということで、火属性と光属性の魔術が使用可能となっております」
「魔術、、、、ですか」
魔術師になったのか俺。やっぱり、これは夢だな。うん。
「使用方法に関しましては、後程担当のスタッフがお教えいたします。そして、最後に初めのノルマについてご説明します。今回のノルマは、、、、、、」