走馬燈のように
「19にもなって、まだそんなことをぬかして・・・」
母親の顔が浮かぶ。ごめんなさい。20歳になれなくて。
「母さんのことは頼んだ・・・」
3年前に病死した懐かしい父親の顔が浮かぶ。ごめん。父さんの頼み事、守れそうにないや。早く楽な生活ができるように19で就活したけど、就職する前にこんなことに・・・
今まで何してきたんだろうな。
映画製作会社やゲーム会社のシージー製作に携わりたいと思い、デジタル・映像の学べる専門学校に通ったが、この一年ちょっと友達と遊んでばかりだったな。コンビニでバイトもしたけど、殆ど自分の遊びに消えていった。
だから、就活は本気でやった。大手から中小まで50社以上エントリーし、必死で面接をこなした。親孝行するには、安定した良い会社に入社することが一番だ。
頑張ったけど、やっぱり世間は甘くない。自分の希望とは反対に次々に「お祈り」が来た。
それでも俺は内定を勝ち取ろうと必死だった。専門学生もエントリー可能であれば、小売業界などにも応募した。
自分の価値を他人に決めてもらう為にPRした。
自分じゃ、自分の価値は分からないし。客観的に見ようとすると、どうしても価値が下がる。
まぁ、その程度の人間だったってことか・・・所詮。
やっと最終までたどり着いた中小ゲーム製作会社の専門職の面接も寝坊するし。
せめて、社会人になって。人の為になりたかった。
これじゃ、迷惑しか掛けてないじゃねぇか。
「零斗、卒業旅行はハワイな」
ああ・・・友人の正輝の姿が浮かぶ。そう言えば、そんな約束していたな。まだ日本から出たことも無かった・・・
狭い世界で終わるのか。
学生のまま。
何も知らずに。
世の中の黒い部分、白い部分。
何も知らない。
規則に縛られ、学校に行き、学習。自分の時間は自分の為に使う。
誰かに保護してもらって、気にかけてもらって・・・
俺は変われずに。
俺のままで・・・・・
あと、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼女欲しかったぜ。
※ ※
醒めない夢は永遠に続くはずだった。
※ ※
手足に感覚がある。俺はまだこの世にいるのか。
「!」
目を開くと、そこには四角い空があった。鉄でできた無機質な枠の向こうには空が広がっていた。ここは病院か?俺は助かったのか。
だが、体に痛みが一切ないことと、ナースコールや点滴が無いことを確認して、ここがただの部屋だと確信した。
無機質な部屋。ベッドも椅子も何もない。
もしかして、牢獄か?
信号無視したから?
俺は立ち上がり、窓を除いた。
そこには、見たことのない光景が広がっていた。