逃げるが勝ち
腕にじんわりとした痛みが走った。
滲み出てくる紅に俺は顔を顰める。
「あらあら、美味しそうな人間の血ね。あなたはまだ
若いわね」
これは非常に不味い状況だ。吸血鬼との距離は僅か数センチ。俺の命はこの女吸血鬼にかかっている。
ニヤリと笑い、口元から鋭い牙が垣間見え、だらだらとだらしなく涎が垂れ流れている。
美しいお顔が台無しだ。
「鯨井君、君のバリアだと駄目みたいだ。ここは私に任せてくれ」
後ろからそう囁くと、ルーカスは素早く俺の前に出た。
「まあまあ、美人な顔が崩れてるよ?お姉さん」
「ふん、なんなのよ。貴方こそ真っ白で不味そうね。私は健康な人間の血が好きなのよ。丁度そこの子みたいな」
「ひっ」
これは、まさに告白!だがしかし、全く嬉しくない。
なんだか、背中がゾクゾクするんですが。
「そうか、それは残念だな。俺は不味そうなんだな?」
すると、ルーカスは自らの手首に持っていたナイフの刃を切り込んだ。
ポタリと血が垂れ始める。
すると、女の吸血鬼とその周辺にいた吸血鬼の息遣いが荒くなりはじめた。
どうやら、血を間近に目にすると興奮状態に陥るらしい。
「血、血をくれー」
余程、血に飢えていたのか、
5匹の吸血鬼はふらふらとルーカスの方に吸血鬼が群がっていく。
「鯨井君!今のうちに逃げろ!!」
「で、でも。ルーカスはどうするんだ?」
まさか囮になるつもりか。
「お、俺?俺はこうするさ」
そう言うと、ルーカスは興奮状態の吸血鬼達に回し蹴りを喰らわせ、さらに小型ナイフを投げつけ、まるで忍者の様に素早く逃げていく。
「ちょっ、ちょっと置いてくなー」
慌てて俺はルーカスの後を追う。
って、あんたも逃げるんかい!!
「因みに吸血鬼は興奮してるから気をつけてねー」
「そんなっ!」
「血をよこせー」
ええい、これは考えてる場合ではない!
ここは全力で逃げるしか無いー!




