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なんの加護もなく、いきなり異世界転移!  作者: 蘇我栄一郎
サバイバル
7/71

 勢い良く扉を開いてみると、そこは十畳ほどの部屋だった。

 少しだけ肩透かしをくらった気分だが、部屋の中央にポツンと水晶球が置いてあるのを見てちょっとだけ警戒する。

 また突然何処かに移動させられてはタマランからな。


 なので、水晶球は後回しにして最初は周囲の壁を調べ始めた。


「うむ、うむ。

 普通の大理石ですな。特に変わった所は無し、と」


 真っ白い大理石は見ていて実に美しいと思えた。

 ちょっとだけナイフで切り取って持って帰ろうかな? 大理石って高いから売れるかも?


 いやいや、もう現実逃避は止めよう。

 やはり部屋の中央に存在する水晶球が鍵なのだろうし、ここは怖れることもなくガバッと掴んでやろうではないか!


 とは思うものの、やはりちょっぴり怖いので、近くまで寄ったら槍でツンツンとつついてみた。

 想像してみてほしい………(ふんどし)一丁でビビりながら水晶球をツンツンする五歳児。


「……ふふふ」


 想像すると自分でも笑えてくるわ。

 アホ丸出しですやん! ワハハハ!


 と、一人で奇妙なテンションになってほくそ笑んでいると、突然周囲一帯が輝き出した。

 俺はあまりの眩しさに思わず瞼を閉じる。


 そして数秒後、室内に女性の笑い声が響き、俺は閉じていた瞼を素早く開けた。


「………誰? って言うか、人!?」


 約十ヶ月ぶりの人だ!

 俺は嬉しさのあまり叫ぶように声を上げ、知らず知らずの内にガッツポーズをしていた。


 そんな俺を見た女性は、腹を抱えて笑い出した。

 さっきよりも女性の笑い声は大きくなっており、少々アホみたいに見える。


 まぁ、俺のこの姿もアホ丸出しなのだが……。


「失礼な! そなたの方がアホ丸出しじゃ! 自分で分かっていて、失礼千万じゃぞ!」


 え!? 俺の心を読んだのか?! 自分でも知らない内にサトラレになってしまったのか??


「いや、そうではない。(わらわ)が特別なだけじゃ」


 どっかの飴玉のCMみたいなことを言う女性。

 見た目は美人だが、やっぱりアホッぽい……。残念美人ってやつだな。


「褌一丁の(わらし)には言われたくないわ!」


「まぁ、そうでしょうね……それで、何で心が読めるんですか?」


 何か人に出会えた喜びも、少しだけ半減したような気分だよ。


 そんな俺の気分を知ってか知らずか、女性は腕を組むと尊大な仕草で口を開いた。


「妾は神じゃ。そなたの地球とは違う別の神ということになる。

 本来、妾は……いや、妾を含めた神々は、人に姿を見せては不味いのじゃが……地球という科学が発展した世界に生きるそなたが転移して来たので、仕方なくこうやって会いに来てやった訳じゃ」


「う~ん……なに言っているのか良く分からんな。やはりアホなのだろうか? はたまた……」


「声に出ておるわ!!」


 いや、どっちみち内心の考えも読まれるなら、声に出しても一緒かと思って……。


「やめろ! 口から出した声と会話してるのか、それとも内心の声と会話しているのか、混乱するじゃろ!」


「すんまそん。それで、貴女は本当に神様なんですか?」


「うむ、まごうことなき神じゃ。アナステアと呼ばれておる」


 ふむふむ、自分で尋ねといて何だが、それを確認する(すべ)を持ち合わせていないので、ぶっちゃけ俺はどうしようもないな。


 女性の………アナステアと名乗る神は、いちいち芝居がかった仕草で言葉を続ける。


「そなたは、事故か故意にかは分からんが、魂が二つに別れ……その結果、半分の魂はそのまま地球に残り、もう半分の魂はこの世界に転移して来たのじゃ。

 恐らく、何者かの手によってということは無いじゃろうと思う。妾達神々でも、人の魂を切ったり繋げたりは出来んのじゃからな。そう考えると、まず間違いなく事故じゃろうの。

 まぁ、それは良い。問題は此方の世界に来たそなたじゃ」


 魂、ねぇ……俺には良く分からんな。

 って言うか、この世界はゲームの世界じゃ無かったらしい。

 当初この世界に来た時は、ゲームなら死んでも復活するんじゃね? とか考えていたりもした。


 ……マジで無謀なことしなくて良かったぁ。


 一人で焦ったりホッとしたりしている俺を見たアナステアは、少しだけ微笑むと言葉を続ける。


「この世界はの、そなたの世界とは違って文明のレベルは遥かに低い。しかし、妾達神々はそれを好んでおるし、変える気も無い。

 じゃからの、そなたが地球の知識を使って爆薬や鉄砲を作るようなことはしないでほしいのじゃ。もっと言うなら、この世界に存在する武器以上……いや、この世界に存在する武器以外の物は作らないでほしい。

 例えば、クロスボウもそうじゃし、そなたの国に存在した刀もそうじゃな」


「まぁ、貴女の話が真実だと仮定すると、俺は他所の家に土足で入っていることになるので……言う通りにしますよ。

 他に注意することは有りますか?」


 アナステアは俺の返答が望むものだったのか、好意的な様子を見せる。


 しかし俺から言わせて貰えば、むしろ普通なのでは? と言いたい。

 何せ、他所様の家で好き勝手に振る舞うアホは居ないだろう。少なくとも、日本人ならそんなことはしない。


「うむ……他には特に無いのじゃ。

 武器に繋がるような物を作らなければ、何をしても良いのじゃ。存分にこの世界を楽しんでくれ!

 妾達神々も、そなたの行動を見て楽しんでいるからのう。

 ……グフフ、森の中での行動といい、さっきのサイクロプスとの戦闘といい、この部屋での……ププッフフフハッハッハッ!

 そなたは面白い男じゃのー! 皆も腹を抱えて笑い転げておったわ!」


 な、何だと!? 真っ裸で一心不乱に逃げていた姿や、葉っぱ隊の姿や、褌一丁で試行錯誤する毎日を全て見られていたというのか!?


 俺のプライバシーがががががが……。


 いや、もうこの際開き直ろう! 何ならこの場で意味もなく素っ裸になってやる!


「な、何故いきなり褌を脱ぐのじゃ?!」


「開き直ったのですよ! 何なら尻の穴も見ますか?」


「け、結構じゃ!」


「結構? そうですか、それなら見て頂きましょう。見たがりさんですね」


 おもむろに俺がアナステアに背を向ける。

 そして………


「その結構ではないのじゃ! 見たくないと言っておるのじゃ!」


「冗談ですよ」


 アナステアは両手で顔を覆っているが、指の隙間から覗いているのが明らかだった。


 うむ、少しだけ神々に反抗出来て俺の溜飲も下がったことだし……。

 って言うか、俺は何をしてるんだろう?


 何か馬鹿馬鹿しくなってきたので、無言で褌をしめ直した。

 そして、この部屋に有る水晶球が何なのかをアナステアに尋ね………あの、もう褌をしめ直したので普通に戻ってくれません?


「う、うむ。

 こ、この水晶球はのう、ダンジョンを一番最初に踏破した者への神々からの贈り物じゃ。この水晶球を手に取れば、神々の加護と特殊なスキルを得られるのじゃ。

 現在、この世界………エルドラドと呼ばれておるのじゃが、このエルドラドでは数百のダンジョンが存在しておる。

 ちなみに、ここのダンジョンは妾が制作したダンジョンで、モンスターは亜人を中心にしておる」


 まだ顔色は真っ赤だったが、アナステアは吃りながらも詳しく説明してくれた。

 その情報は実に有意義なものであり、その言葉通りならば俺はここのダンジョンの初めての踏破者ということになる。


 うむ、それは素直に嬉しいことだ。スキルも貰えるしな!


 しかし気になることが一つ、踏破してあるダンジョンと踏破してないダンジョンは区別がつくのだろうか?

 スキルが貰えるなら当然これからもダンジョンに挑戦したいし、そうなると色々なダンジョンに入ることになるだろう。

 しかしそこでいざ踏破してみて、もし誰かが踏破した後なら無意味でしかないではないか。

 きっとその時にはガッカリ感が半端ない筈だ。


 そうはなりたくないな、俺は。


「それはそうじゃろうな。しかし、そればかりは教えられんのじゃ。

 知っていては面白みに欠けるじゃろ?」


「まぁ………確かに」


 納得出来るような出来ないような、複雑な気持ちのまま相槌を打つ俺の反応を見たアナステアは、苦笑して一言"仕方ないのう“と言うと続けて口を開いた。


「一つだけ教えておいてやる。

 現在、沢山の神々がダンジョンを制作しておるが、踏破されたダンジョンは二十個だけじゃ。

 ちなみに、ここ十年ではそなただけになるのう」


「へぇ~、それならハズレを引く確率は低いですね。

 安心してダンジョンに入れそうですよ」


「うむ、妾のダンジョンもまだ幾つか存在するからの。そなたが踏破した時は、また姿を見せてやるのじゃ!

 多分、他の神々も姿を見せるやも知れんのう。

 そなたは面白い男じゃからな。きっと(じか)に話たがっている筈じゃ。

 ではさらばじゃ!!」


 アナステアは喋るだけ喋ると、満面の笑みを浮かべたまま颯爽と姿を消した。

 突然現れたり、突然消えたり、あれも魔法なのだろうか?

 それとも、神々だけが持つスキル?


 まぁ、多分人間の俺には習得出来ない物なのだろう。

 瞬間移動みたいでカッコ良いから、本音を言えば取得したいスキルだけどね。


 まぁ、それはそうと、アナステアが用意した水晶球を手に取ってみるとしましょうか。

 全ステータスが三倍になるとか、取得経験値が三倍になるとか、そんな凄い性能のやつだと嬉しいなぁ。


 色々なスキルを妄想して、かなり期待が膨らむ俺は、ドキドキと鼓動を早めながらゆっくりと水晶球を手に取った。


「………は? 何も起こらな……うおっ!?」


 確かに手に掴んでいた水晶球は、スウっと姿を消した………いや、より正確に述べるならば、消えたと言うより俺の体の中に吸い込まれていった。


 不思議な現象ですよ。流石は神が作った水晶球だ!


 そんな風に驚くと共に感心もするのだが、どんなスキルなのか気になるので直ぐにステータスオープンと口にする。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【 名 前 】 セイイチロウ=キリュウ

【 年 齢 】 5

【 種 族 】 ハイヒューマン

【 レベル 】 25


【 体 力 】 18

【 魔 力 】 78 (-75)

【 攻撃力 】 18

【 防御力 】 18

【 俊敏性 】 18

ステータスポイント:残り96

【種族スキル】 ステータス操作

【 スキル 】 気配遮断2.5 気配察知2.3

        木工2.9   槍術1.9

        短刀術1.9  弓術3.5

        投擲術3.1

【 魔 法 】 火魔法0.1

【ダンジョン】 ステータスポイントUP

【 加 護 】 愛の女神


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 おお、サイクロプス一体を倒しただけなのに、レベルが10も上がってますよ。

 そして、肝心のスキルは………何か良く分からんな。何これ?

 レベルが上がった時に貰えるステータスに割り振るポイントが増えるってこと?


 微妙じゃね? いや、そうでもないか……。

 ステータスポイントは、その時々によって増えるポイント数は変化しているので明確に分からないのだが、普通に貰えるよりも多くなるなら地味に効果が有るよな。

 いや、冷静に考えるとかなり有効なスキルかも知れない。

 派手さは皆無だが、これは良いスキルを貰えたな。


 アナステアさん、ありがとう!


 ただ一言言わせて下さい! 貴女は、愛の女神なんですか?! 滅茶苦茶似合わないです!

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