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なんの加護もなく、いきなり異世界転移!  作者: 蘇我栄一郎
サバイバル
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ダンジョンからの脱出

 衝撃の事実を知ってから半年が経過した。

 俺はいまだにダンジョンに居る………と言うか、ダンジョンからの脱出には至っていない。

 しかしながら、あの日から俺は飛躍的に成長しているのは間違いないだろうと断言出来る。


 その証拠に、ステータスを見て貰えば納得出来る筈だ。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【 名 前 】 セイイチロウ=キリュウ

【 年 齢 】 5

【 種 族 】 ハイヒューマン

【 レベル 】 15


【 体 力 】 18

【 魔 力 】 18

【 攻撃力 】 18

【 防御力 】 18

【 俊敏性 】 18

ステータスポイント:残り60

【種族スキル】 ステータス操作

【 スキル 】 気配遮断2.5 気配察知2.3

        木工2.9   槍術1.9

        短刀術1.9  弓術3.5

        投擲術3.1


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 あれから弓術と投擲術を新たに取得したのだが、スキル取得には……あるいは、熟練度の上昇には隠された効率的な手法が存在することに気付いた。

 それは、実に単純なことだった。


 練習で弓を射るのとは違い、実践で標的に弓を射ると、練習とは隔絶した速度で熟練度が上昇したのだ。

 百の練習より一つの実践とはよく聞くが、言いえて妙ということだ。


 それに気付けてからというもの、確実に自分が安全だと判断出来る場合に限り、躊躇なく戦うことにしている。

 しかし、モンスターと白兵戦をするのは流石に無謀な為、弓術や投擲術で戦うことにしていた。

 そのせいか、槍術や短刀術の伸びは悪い。

 ちなみに、投擲術はリンゴ擬きや石を拾って投げていたら取得していた。


 こんなんでスキルを取得して良いのかと思ったが、取得出来て損は無いのだし、素直に喜ぶことにした………少しだけ、ほんとに少しだけ、何か知らんがガッカリとはしたが……。

 多分、スキルの有り難みが無くなったような気がしたからだと思われる。


 まぁ、それは置いておいて、毎日欠かさず続けている内なるエネルギーとやらを感じる訓練は一切の成果も見せていない。

 俺には魔法の才能が無い可能性が高くなってきたと言うことだ。


 それは非常に悲しい。

 何故なら、魔法が存在する世界に居るのだから、当然魔法を使いたいと思うのが人の通常の反応だからだ。

 それに漏れることもなく、俺も使いたいと思っている。

 しかし現実は厳しく、何度もステータスを確認しても魔法の魔の字も現れずに現在に至る……。


 なんでやねん! 俺、頑張ってますやん!!


 この世界に来て、二度めのマジ泣きである。

 だけど、まだ俺は諦めないぞ! きっと魔法を覚えてみせる! そう自身に言い聞かせながら、毎日を過ごしている今日この頃です。


 あぁ、それと………レベルが上がってステータスに割り振るポイントが貯まっているのだが、何れに割り振るべきか悩み、いまだに残したままになっている。

 今は弓術や投擲術でモンスターを倒しているし、あまりステータスは関係していないので、必要にかられているという状況でないのもステータスにポイントを割り振っていない理由だ。


 まぁ、こんな感じがここ半年の成果になる。

 自分で言うのも何だが、かなり頑張っていると断言しても良いだろう。


 ……で、今日からはダンジョンからの脱出を一番の目的として行動しようと思っている。

 理由は単純で、人と触れ合いたいというのもあるし、何より切実なのが食事についてだ。

 この世界で目覚めてから、ずっっっっとリンゴ擬きしか食ってないんだぞ。


 モンスターを倒すとアイテムを落とすのだが、そのアイテムは肉の塊である。なので、それを食べれば良いと思うだろうが、生で食べる訳にもいかず、かと言ってモンスターに襲われるかも知れないのにのんびり地面で火起こしする訳にもいかず……。

 その結果、リンゴ擬きで空腹を誤魔化すしかなかったのだ。


 もう限界ですよ。えぇ、限界です。


 と言う訳で、気配察知のスキルを使い、なるだけモンスターの多い方へと進もうと考えている。

 普通は逆なのでは? そう思うだろうが、今まで出来るだけモンスターと出会わないように移動して、ダンジョンの出口も人にも遭遇しなかったので、今日からはその逆の発想で、という訳だ。


 まぁ、上手くいくのかは不明だが、何ごとも挑戦することが大事だと思うのです。


「さぁ、出口に向けて出発じゃ!」


 気配察知と気配遮断のスキルのお陰で、今ではモンスターに襲われることは非常に少ない。

 まぁ、絶対に無いとは言わないが、最初の頃に比べたら遥かに少ないのは間違いない。

 実際、今も何となくではあるが、進行方向の右側からはモンスターだと思われる気配を察知出来ている。


 となれば当然、その気配の主とは接触しないようにしながら、気配の多い方へと足早に進む。

 そして疲労を感じるほど移動したら、当たり前のように生えている背丈の高い木に登り休憩をする。


 そうやって進むこと一週間。

 この世界に来てから初めての人工の建物と思われる物を発見した。


 まぁ、そうは言ってもストーンヘッジのような物であり、人が住む家などとは全然違うが……。

 しかし、これは人工物で間違いない筈だ。

 考古学者でもない普通のオッサンの俺にはよく分からないが、自然に鳥居のように岩が重なるとは思えない。

 だから、これは人工物だと判断した訳だ。


「まぁ、しかし……だから? って話になるな」


 この世界に来てから初めての人工の建物に興奮したが、ふと冷静になると……。

 だが、ダンジョンに人工物が存在するということは、この辺に人が住んでいる可能性も………いや、それは無いか。

 何故なら、ダンジョンではモンスターは無限に出現するらしいからだ。

 なんでも、昔の学者が沢山の冒険者を雇い、ダンジョンのモンスターを全滅させてみたらしいのだが、少しの期間をおくと何故か再びモンスターが現れたらしいのだ。


 そんな場所に街とか作るか? 普通作らないよな。俺だったら、絶対に作らない。


 ならば、この目の前のストーンヘッジ擬きは何の為に存在するのだろう?


「ふぅむ………分からん!

 取り敢えず、何か文字が刻んであるかも知れないし、一応細かく確認してみるか」


 ふむふむ、へぇ~、ほぉ~………それで? あぁ、成る程ね!


 ハハハ! ワロス!! 文字なんか刻んでないし、それどころかツルッツルですよ!


「何なんだよ! これは何!? 期待させておいて、そこからの落胆を狙った誰かの罠か?!」


 ガッカリです。非常にガッカリですよ。私をここまでガッカリさせるなんて、たいしたヤツですよ。


 俺は人生で一番大きな溜め息を吐きながら、ストーンヘッジの中心に腰を下ろした。

 そして、何となく空に視線を向けて………いや、本当は涙が溢れないようにしているのだが……。


 そんな風に、厳しい現実に()(ひし)がれていると、突然周囲の景色が陽炎のようにユラユラとしだした。

 それに驚いた俺は、サッと素早く立ち上がり手製の槍を構えた。


 そしてほんの数秒が経過すると、周囲の景色は森ではなくなっていた。


「はぁあ!? え?! 何!?」


 もうパニックですよ。この世界に来た当初よりビックリしてまっせ!


 辺りには嫌というほど背丈の高い木が生い茂っていたのだが、今はその木も一本も見当たらない。

 その代わりに、無数の大きな岩が転がっている。

 そして何より驚くべき変化は、当たり前のように有った空が今は無く、コンクリートのような天井が存在していた。

 勿論、四方にも壁が有る。


 もしかして、出口? そんな疑問と言うか期待が脳裏に過る。

 だが、気配察知のスキルに反応が有り、その期待も直ぐに消え去った。


 俺はそのスキルの反応に従って、岩場に身を寄せて姿を隠す。

 そしてそれと同時に、その反応した方へと視線を向けた。


「あわわわ………あれはアカン、アカンやつや」


 全長八メートル、筋肉逞しい緑色の肌をした巨人。

 あれはモンスター解体全書に記載されていた奴で、サイクロプスと呼ばれるモンスターだ。

 眼球が一つしかないが、その一つだけの眼球は非常に大きく、錬金術の素材にウンタラカンタラと書いてあったのを覚えている。


 はっきり言ってヤバい状況です。

 俺はオークジェネラルとしか戦ったことがないし、その時の戦いでも白兵戦はせずに、安全な樹上から一方的に弓で攻撃していたにすぎない。

 目の前に居るあんな化け物と戦う(すべ)など持ち合わせていないのだ。


 え? これって詰んでない?


 四方を壁で塞がれていて逃げ場がない。

 五十メートル四方の部屋………そう、まるで巨大な部屋なのだ。


 どうしろっちゅうねん!


 ヤバくない? いや、ヤバくない訳がない。

 何処かに出口でもないのだろうか、そう考えて視線を巡らしていると、サイクロプスの背後に小さな扉を見付けた。

 と言うか、サイクロプスが巨大過ぎて扉が小さく見えるだけで、人間サイズで言えば通常の大きさだ。


 サイクロプスにバレずに彼処に行ければ………あるいは、バレるのを覚悟でサッと行ってバッと入るとか?

 でも、扉に鍵とかしてあったら、まず間違いなくサイクロプスの餌食になる。


 どうしよう……。もしサイクロプスと戦闘になったとして、俺の持つ弓矢では皮膚を貫くことも出来ないだろうし……。

 何せ、俺の持つ矢は手製であり、羽も鏃も無いただの尖った竹の棒なのだ。

 とてもサイクロプスのようなモンスターに通じるとは思えない。


 ……いや、待てよ。あの大きな目なら? イケるんじゃなかろか?


「とすると、先ずは弓矢で目を潰して、それから扉にダッシュ?」


 この作戦ならイケる気がする!


 何となく、この危険な場から脱出出来そうな案を捻り出した俺は、震える手で弓を強く握りしめた。

 そしてサイクロプスにバレないように、気配遮断のスキルを使って岩に身を寄せつつ少しずつ接近を始めた。

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