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なんの加護もなく、いきなり異世界転移!  作者: 蘇我栄一郎
サバイバル
4/71

スキル取得

 魔法の修練と人を探して移動する毎日を、俺は約一ヶ月以上も続けた。

 その間、何度かモンスターと出会して逃げたり、リンゴ擬きを投げつけ逃げたり、手作りの槍を投げ放ったりして逃げたり………まぁ、一度も戦うこともせず、逃げ続ける毎日を送っていたよ。

 そして肝心の魔法についてなのだが、残念ながらいまだに内なるエネルギーとやらを感じることは出来ていない。

 それに、人に出会うことも出来ないままだ。


 流石に何の変化も無い毎日に少々苛立ちが大きくなり始めた頃、ステータスを見て驚くことがあった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【 名 前 】 セイイチロウ=キリュウ

【 年 齢 】 5

【 種 族 】 ハイヒューマン

【 レベル 】 0


【 体 力 】 18

【 魔 力 】 18

【 攻撃力 】 18

【 防御力 】 18

【 俊敏性 】 18


【種族スキル】 ステータス操作

【 スキル 】 気配遮断1.1


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 なんとなんと! スキルを取得してました!


 多分、モンスターに見つからないように隠れながら移動していたのが原因と思われる。

 マジで嬉しいよ。スキル全書の本には、スキルの名前や能力が書いてあるだけで、取得方法は一切記してないからスキルを無事に取得出来て非常に嬉しいです。

 ちなみに、スキル名の横に数値が有るが、それは熟練度だそうだ。

 その熟練度を上げると、どんどんスキルの性能がアップするという仕組みになっているらしい。


 ここ最近は何の変化も無かったから、この変化は一種の清涼剤のようで気分が晴れやかになりました。

 いやぁ、変化が有るって素晴らしい!


 実は、この気配遮断というスキルを取得していることに気付いてから、手製の槍とナイフを毎日振ることもしている。

 多分、これを続ければ槍やナイフのスキルも取得出来る筈だ。


 この調子で頑張ろうと思います!




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 気配遮断のスキルを取得してから更に一ヶ月が経過した。

 人に出会うことはなく、そして内なるエネルギーとやらを感じることは出来ていないが、またもやスキルを取得することには成功した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【 名 前 】 セイイチロウ=キリュウ

【 年 齢 】 5

【 種 族 】 ハイヒューマン

【 レベル 】 0


【 体 力 】 18

【 魔 力 】 18

【 攻撃力 】 18

【 防御力 】 18

【 俊敏性 】 18


【種族スキル】 ステータス操作

【 スキル 】 気配遮断1.9 気配察知1.2

        木工1.5   槍術1.0

        短刀術1.0


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 どうですか、このスキルの数々!


 気配察知は、移動の際にモンスターの気配を探りながら進んだのが取得出来た要因だと思う。

 そして槍術と短刀術の二つは、手製の槍と冒険者の遺品であるナイフを毎日振ることで取得しました。

 木工については、竹林を見付けたので、その竹で弓と矢を作ろうと思い実際に作ったんだけど………その際に、何度も試行錯誤して作ったのが原因だと思う。

 多分、弓で百個、矢に至っては千本は作った筈だ。


 その数々の苦労のお陰で、こんなにもスキルが増えました。

 マジで嬉しいよ! 良くやった、俺!


 そして今は、自作の弓を練習するのも日課として始めました。

 でも、まだ始めたばかりのせいか、まだスキルを取得出来てはいないんだけどね。


 午前中は木の上という安全な場所で、槍とナイフを精一杯振り、弓に矢を(つが)えて狙いを定めて放つ。

 午後は昼食後の一時間だけ内なるエネルギーを感じる修練をこなし、そして少しだけ移動する。

 そんなスケジュールの毎日になっている現在です。


 飯は相変わらずリンゴ擬きで、最早苦痛を通り越して苦行であるのだが、スキル取得という楽しみのお陰で幾分か楽しく過ごせている。

 そんなスキルについてなのだが、例えば槍を振るっていると、この動きは駄目だとかこの動きは良いとか、感覚的に判断出来ることが分かった。


 スキルってマジで凄いっすよ!

 剣道は社会人になっても続けていたのだが、スキルを取得さえすれば、誰かに教えを請うこともなくても自然と熟練者になれるということになるのだから、スキルの凄さを理解して貰えると思う。


 はっきり言って、スキルって尋常じゃない。

 もっともっと沢山のスキルが欲しくなってくるよ。


 そして何より、ここまでスキルを手に入れたのだから、そろそろモンスターと戦ってみても良いのでは? という考えが脳裏を過る。

 だがしかし俺は五歳児だし、レベルも0なので、モンスターと戦う勇気はまだ持てない。


 でも何れは戦うことも有るかも知れないし、レベルを上げられる時に上げといた方が無難なような気もするのだ。


「……でもなぁ、出会うモンスターが全部巨大で、正直怖いんだよね。

 ゲームの序盤で登場するようなウサギ系とか、小さいゴブリン系とかが理想なんだけど……出会すモンスターの身長が、最低でも二メートルも有るんだよなぁ」


 そう、それが問題なんだよ。

 木の上という安全地帯から弓で狙撃という方法が取れれば良いんだけど、そんなに都合良く行かないし、矢は(やじり)も無いどころか羽すら付けて無いただの尖った棒だ。

 とても巨人を仕留めることが出来るとは思えない。

 小さなモンスターなら通じるだろうけど……。


 そんな風にボンヤリと考えていると、なんと都合の良いことか、何度か追われることになった豚野郎がノソノソと歩いているのが樹上に居る俺から見えた。

 モンスター解体全書には、絵付きでオークジェネラルと書かれていた存在である。


 俺は、あの豚野郎に何度も追われたのだ。その豚野郎から逃げる為に、幾度も槍を失っている。

 その恨みを晴らす絶好のチャンスと言えた。それに、レベルを上げるチャンスでもある。


「これはイケるんじゃないか? 大きさも二メートルぐらいだし、五メートルを超えるような巨人よりもマシだろう。

 ただし、弓のスキルを取得してないのが問題だな……まぁ、矢はウエストポーチの中に八百本くらいは有るからイケるとは思うけど。それに、あの豚は木登りが出来ないらしいし」


 絶対に木登りが出来ないという訳では無いのだろうが、今まで出会ったオークジェネラルは、腹の贅肉が邪魔をして登れなかったのを確認している。

 となれば、樹上から弓を撃ち放題ということになる………かも知れない。


「ま、まぁ、豚野郎は足が遅いから、ヤバくなったら全速力で逃げれば良いし、何事もチャレンジでしょう」


 良し、挑戦してみよう!


 武者震いなのか、少し震える手を動かして、ウエストポーチから弓と矢を取り出した。

 そして矢を(つが)えると、確りと狙いを付けて放った。


 ヒュッと風を切る音と共に、矢は勢い良く飛んで行く。

 しかしオークジェネラルには命中せずに、一メートル離れた地面に突き刺さった。


 トスッという音に反応して、オークジェネラルは周囲に視線を巡らしている。

 まだ俺の居場所が木の上だとはバレていないようだ。


 今のうちに、もう一度矢を(つが)えて狙いを付ける。

 今度こそ、そう思いを込めて矢を放った。


 またも風を切る音と共に、矢は勢い良く飛んで行く。

 そして、矢は吸い込まれるようにオークジェネラルの横腹に突き刺さった。


「グヒィィイ!!」


 見事命中したことで、思わず笑みが浮かぶ。

 オークジェネラルは突然の痛みに混乱しながら、自分の横腹に視線を向けた。

 そして矢を抜くと同時に、此方に視線を移す。


 滅茶苦茶怒ってるのがここまで伝わってくる。

 何せ、大きな牙を剥き出しにしてドスドスと此方に駆け寄って来ているので一目瞭然だ。


 俺はそんなオークジェネラルに向かって、更なる矢を放った。

 今度も見事命中。

 だが、オークジェネラルはそれを気にした素振りも見せず、一向に歩みを止めない。


 ならばと、俺は何度も何度も矢を放つ。

 そして、十本ほどを撃ったところでオークジェネラルが、俺が登っている木の真下まで来た。

 しかし、やはり木登りが苦手なようで、不愉快そうにグヒグヒと呻くだけだった。


 そんなオークジェネラルを見て、自分の優位を確信した俺は、そのまま矢を放ち続ける。


「グヒィ……グヒィ……」


 凡そ百本ほどの矢を放ったところ、まるで針鼠のようになったオークジェネラルは、苦しそうに地面に倒れた。

 普通ならば、これで矢を射るのを止めるのだろう。

 しかし、だがしかし! 何度も豚野郎に追われた俺としては、これぐらいで許しはしない!! 俺には慈悲の心など無いのだ!!!


 という訳で、更に矢を放ち続ける。容赦なく、躊躇もなく、だ。

 そうして暫くの時間が経過した頃、オークジェネラルの反応が薄くなってきたので弓を射るのを中断した………って言うか、矢を刺せる場所が無くなったので中断したと言った方が正しい。


 そして数十秒ほど眺めていると、突然オークジェネラルの体が消えた。


 そう、まるで霞みのように消えたのだ!


 これはもしかしたら、オークジェネラルのスキルなのか?

 ビックリしながらそう考えていたのだが、驚くことにオークジェネラルが倒れていた場所には、オークジェネラルに刺さっていた無数の矢と共に肉の塊が一つ落ちていた。


「うぇぇ?! どういうこと!?

 え? ……まさか、ここってダンジョン??」


 英雄伝の本に記されていたのだが、ダンジョンに出現するモンスターを倒すと、アイテムを残して消えるらしいのだ。

 そして普通のフィールドでは、勿論倒したモンスターは消えることは無いし、倒したモンスターの素材は自分で解体しなければならないらしい。


 ということは……つまり、ここは………


「……ダンジョンってことか……」


 呆然としたまま呟いた俺は、内心で一言だけツッコミを入れた。


 どうりで人に出会わない訳だ、と。


 そしてその後、続けるようにもう一度ツッコム。今度は声に出して……。


「なんで普通の場所からスタートじゃなくて、ダンジョンからスタートなの!?」


 俺の叫びは、ヒュ~と吹く風と共に消え去った。

 人の住む場所を探していた時間は何だったんだろう……。

 大人になって、そしてまた五歳児になって、マジ泣きするとは思わなかった………。


 あ、ダンジョンだから陽が沈まないのか………。

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