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なんの加護もなく、いきなり異世界転移!  作者: 蘇我栄一郎
サバイバル
3/71

ステータスとスキル

 本を読むこと二日間。

 その間は樹上で生活を続けている。

 食事はリンゴ擬きの巨大な果実が有るし、小便や大便は木の上からしている。まさに原始人の生活だ。

 しかし、もう既に死んでいる人が所有していた服が有るので、見た目は現代人と言っても過言ではないだろう。


 まぁ、五歳児の俺にはサイズが合わないので、シャツを(ふんどし)のようにしているだけなのだが……。

 それでも、葉っぱだけで股間を隠していた時よりはマシであろうと思う………そう思いたい。


 ともあれ、本を読んで色々と分かったことがある。

 先ず英雄伝を読んでいて、このゲームっぽい世界には冒険者ギルドや魔法ギルド、あるいは錬金術ギルドと呼ばれる様々なギルドが存在することが判明した。

 ギルドを簡単に説明すると、一つ一つの職種の組合みたいな物だと思われる。


 そして、一言に人間と言っても多種多様な人種が居るようだ。地球のように、黒色人、白色人、黄色人という単純な感じではないらしい。

 何でも、ヒューマン、ハイヒューマン、獣人、エルフ、ドワーフ、竜人、と言った感じで沢山の種族が居て、しかもその内訳に更に細かく分類すると一度には覚えきれないほどになる。


 こんなに沢山の種族が存在すると、地球の人間のように数えきれないほど戦争が繰り返されていると思われるのだが、不思議なことに二千年前から戦争はしなくなったらしい。

 その理由は本当かどうかは不明だが、神々が地上に降臨し、戦争を止めたのが理由なのだそうだ。


 はっきり言って、胡散臭いの一言である。

 しかし、戦争が無いのは良いことなので、その辺にツッコミを入れる気は無い。


「でも変な世界だよなぁ。

 戦争が無いのなら、もっと科学が進歩していても不思議じゃないと思うんだけど、何でいまだに剣とか弓とかでモンスターと戦ってるんだろ? 拳銃とか作れば良いのに……この世界の人はアホなのかな?」


 とも思うが、ならお前が拳銃を作ってみろと言われれば当然無理なので、それについてもツッコミはしない………ちょっとツッコんだけどね。


 更に分かったことは、魔法やスキルという概念のことだ。

 例えば剣を毎日振っていると、何時の間にか剣のスキルを覚える物なのだそうだ。個人差は有れど、絶対に覚えるらしい。

 そして魔法のスキルに関して言えば、これは才能の有無が存在し、皆が絶対に覚えられるという訳では無いそうだ。だいたい、三千人に一人という低い割合らしい。


 そしてそして、これが一番面白いのだが………


「ステータスオープン!」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【 名 前 】 セイイチロウ=キリュウ

【 年 齢 】 5

【 種 族 】 ハイヒューマン

【 レベル 】 0


【 体 力 】 18

【 魔 力 】 18

【 攻撃力 】 18

【 防御力 】 18

【 俊敏性 】 18


【種族スキル】 ステータス操作

【 スキル 】 


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 やはりゲームっぽい。でも、ゲームにはなくてはならない存在であるステータスが有るのは盛り上がる。

 そして俺が唯一取得しているスキルは、種族スキルのステータス操作と言う物で、レベルが上がると自分で数値を割り振れるようだ。

 なかなか面白いと思えるのだが、俺はヒューマンじゃなくてハイヒューマンなんだな。ヒューマンとハイヒューマンの違いは、あいにく本には記載されていなかったので分からない。

 ただ、今分かっているのは、ステータス操作が出来るのはハイヒューマンだけらしいということだ。

 他の種族は、レベルが上がると勝手に数値が変化して、自分で操作出来ないそうだ。それはそれで不便にも思えるが、ハイヒューマンの種族スキルであるステータス操作とは違って、他の種族にはその種族特有のスキルが存在するので一長一短と言った所だと思われる。


 そしてステータスについての常識で一つ驚いたのが、普通ならレベル1のステータスの数値は大きくても成人で一桁後半ということだ。

 俺はレベル0の段階で軒並み18も有るぞ。これは正直言って嬉しい。

 ただし、その後の成長で1レベル上がるごとに上昇する数値の変化は個人差が有るらしいので、最初が良くても数値の伸びが低ければ意味は無いが……。


 まぁ、今は素直に喜んでおこう。うん、そうしよう!


 ってことで、一通りの知識は頭に入れたことだし、次はスキルを習得することに専念しようと思う。

 先ずは魔法が存在するらしいので、その未知なる魔法のスキルを得ようではないか!


「魔法全書に書いてある通りなら……目を瞑って座禅しつつ集中すれば、内なるエネルギーを感じることが出来るらしいんだけど……」


 俺は魔法全書の最初のページに書いてあったことを実践し始めた。

 いったいどれだけの時間が経過しただろうか……。

 はっきり言って、内なるエネルギーとか一切感じないんですけど!


 樹上三十メートルで、(ふんどし)一丁で座禅を組むというアホなシュチュエーションで真面目に取り組む俺。

 アホなの? 馬鹿なの? そう言いたくなるような滑稽な姿だろう。

 そんな姿をイメージしてしまうと、マジで泣けてくるよ。


 だけど、少しだけ仙人っぽくて………ちょっとだけカッコ良くね? とも思うのだが、やはり泣けてくる。


 そのまま二時間、あるいは三時間が経過するが、やはり何も感じられず、何時の間にかマジ寝をしてしまっていた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


地球の皆さん、おはようございます! この世界の皆さんも、おはようございます!


 いやぁ、昨日はアホな姿のまま寝てしまっていたよ。

 今日は本気出すぞ!

 いや、これは危ない言葉だな。何だかんだ言って、結局本気を出さないヤツだわ、これ。


 と言う訳で、改めまして、今日もやっていきまっせぇ!!


 良し! 良い感じで気合いも入ったし、先ずは腹ごしらえからしますかね。

 まぁ、そうは言っても、木になっているリンゴ擬きを採取して、入手したナイフで皮を剥くだけのお手軽な料理………いや、料理とは言わんな。


 ともあれ、リンゴ擬きを食べた後は、昨日に引き続き内なるエネルギーとやらを感じる練習ですよ。

 もしかして、俺に魔法の才能が無いとかの可能性も有るが、一日や二日で才能の有無を決めつけるのは早いと思うのだ。

 多分、一ヶ月くらいは考慮しといた方が良いと思われる。

 その為、午前中は魔法の鍛練。午後は人を探して、モンスターに注意しながら森の中を進もうと思う。


 そんな訳で、先ずは魔法の鍛練を始めます!


 昨日と同じく座禅を組んで目を瞑る。そしてそのまま集中して、内なるエネルギーを……。


 もうマジで溜め息しか出ませんよ。何も感じることが出来ないまま、多分三時間は瞑想してたと思う………いや、迷走していたと思う。

 ハハハ、上手いこと言ったな、俺。


 イカンな、何か妙なテンションになってきてます。

 多分、何の効果も感じられないから、イラついてるのかも?

 まぁ、魔法使いの割合は三千人に一人とからしいし、スキルを覚えたら儲け物って程度に考えとこうと思う。


 それはそうと、昼食の準備………まぁ、皮を剥くだけなのだが……。

 それをしつつ脳裏に過るのは………


「う~ん、ここ数日はリンゴ擬きしか食ってないから………いや、美味いのは認めるよ。認めるけど、流石に飽きるぞ。

 はぁぁぁ、焼き肉が食いてぇよぉ」


 俺はガンジーか! フルータリアンのガンジーか!!


 毎日毎日、リンゴ擬きを食べ続けるんだぞ。流石に誰でも飽きるだろう。

 果物ばかりを食べてるせいか、大きい方をする時は硬いヤツが出るんだよね。食物繊維の摂り過ぎだと思います。


 はぁ、まぁ一先ずそれは良いや。さっさと人を探して移動しよう。


 スルスルと軽やかに、まるで猿の如く木を降りて………って、うるさいわ! 誰が猿じゃ!!

 イカンイカン、肉が食いたくて変なテンションになってきた。

 これからモンスターが跳梁跋扈する大地を移動するのだから、冷静と情熱の間に意識を持って行かねば。


「三日ぶりに地面に足をつけると、何か妙な気がしてくる。

 マジで猿になった気分だよ」


 さてさて、青い巨人が居た方向は危険だし、勿論ゴブリン擬きが居た方向も危険だ。

 となれば、北か南になるのだが………ここは南にしておこう。特に根拠は無い、何となくだ。

 ちなみに、北とか南とか言ってるが、方角は適当に言ってるだけである。

 太陽が昇る位置を見ればだいたい分かると思うだろうが、何故かこの世界は太陽が沈むことが無いらしく、常に太陽がその存在を主張するかのように明々と輝いているせいで、方角もさっぱり分からん。


 まさにファンキーでファンタジーな世界だな。


 俺はそんな取り留めも無いことを考えながら、のんびりと森の中を進み出した。

 (ふんどし)一丁の為、枝などで肌を切らないように注意しつつ、勿論モンスターにも注意しつつ進む。


 風の影響でカサカサと音がすると、念の為に身を低くして暫くはジッと待つ。

 もしかしたらモンスターだという可能性もあるからなのだが、注意し過ぎだろうか?

 いや、注意するにしても、し過ぎるということは無いだろう。命は一つしかないのだから、念には念を入れて当たり前だ。

 だが、そのせいで遅々として歩みは進まない。


 二キロか三キロほどを進むのに、恐らく三時間ほどは経過したと思われる。

 しかし、ここで大雑把な行動に出るのは愚の骨頂だ。それは間違いない。

 だからこそ俺は、歩くスピードを変えることもなく、ゆっくりとではあるが着実に歩みを進めた。


 そうして歩くこと更に二時間。

 体力的には問題ないが、精神的な疲労が半端ではないので、今日の探索は止めにして木に登った。


「あぁ、木の上がアホみたいに落ち着くわぁ。

 もうマジで猿だな、これじゃ」


 一人寂しく誰に聞かせるでもなく呟くと、朝食や昼食と同じくリンゴ擬きを採取する。そして、ウエストポーチからナイフを取り出し皮を剥いた。

 既に飽き始めた果実で腹を満たしたら、疲れを取る為に横になり目を瞑った。


 魔法を覚えられたら、もう少し進むスピードを早められるのだが……。

 いや、俺にもし魔法を使える才能が有ったとして、スキルを覚えられても敵に通じなかったら意味がないか。

 どっちにしても、暫くはゆっくりと進むことになりそうだなぁ。


 そんな風に考えていると、何時の間にか眠りについていた。

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