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なんの加護もなく、いきなり異世界転移!  作者: 蘇我栄一郎
冬の到来の前に、やらねばならぬこと
21/71

駆逐してやる! その2

「……美しい……訳が無い!!」


 どこが淡くミステリアスに輝く湖だよ!

 ドブのように濁っていて、ドブのような匂いを放つ最低の湖じゃん!

 それに、さっきのは何だよ?!


 勇者のような、とか、駆逐してやる、とか……。

 人間って、絶望したり追い込まれ過ぎると頭が可笑しくなっちゃうんだね。

 ビックリだよ。


 俺は勇者じゃねぇし、昆虫を駆逐するとか嫌だよ。

 何でワザワザ自分からキモい奴らと対峙せにゃならんのよ。

 絶対に嫌です。絶対にやりません。


「フゥ………混乱の極致だったんだな、多分」


 絶望的な状況から脱した俺は、冷静さを取り戻し先程までの自分が如何に可笑しかったのかを理解した。

 しかし、それも既に以前のことであり、もう俺は普段通りの俺である。


 少し精神的に疲れたのもあるので、アホみたいに汚い湖を前にして地面に腰を下ろす。

 そして、何となくステータスオープンと口にした。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【 名 前 】 セイイチロウ=キリュウ

【 年 齢 】 6

【 種 族 】 ハイヒューマン

【 レベル 】 27


【 体 力 】 42

【 魔 力 】 78 (-75)

【 攻撃力 】 42

【 防御力 】 42

【 俊敏性 】 42

ステータスポイント:残り14

【種族スキル】 ステータス操作

【 スキル 】 気配遮断2.9 気配察知3.0

        木工2.9   槍術2.0

        短刀術1.9  弓術3.5

        投擲術3.2  剣術0.1

【 魔 法 】 火魔法0.1

【ダンジョン】 ステータスポイントUP

【 加 護 】 愛の女神


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 おお、レベルが上がってるし、剣術のスキルを取得してる!

 素晴らしいじゃない! やはり、先程の戦闘で剣を使ったのが原因だろう! メッチャ剣で刺したもんね!


 でも、火魔法は全然伸びてない。

 ま、まぁ、魔法の使用回数なんて数えるほどだし、それはしょうがないだろう。

 魔法に関してはこれから、ということで問題無い。


 取り敢えず、ステータスポイントを割り振っておこう。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【 名 前 】 セイイチロウ=キリュウ

【 年 齢 】 6

【 種 族 】 ハイヒューマン

【 レベル 】 27


【 体 力 】 46

【 魔 力 】 78 (-75)

【 攻撃力 】 45

【 防御力 】 45

【 俊敏性 】 46

ステータスポイント:残り0

【種族スキル】 ステータス操作

【 スキル 】 気配遮断2.9 気配察知3.0

        木工2.9   槍術2.0

        短刀術1.9  弓術3.5

        投擲術3.2  剣術0.1

【 魔 法 】 火魔法0.1

【ダンジョン】 ステータスポイントUP

【 加 護 】 愛の女神


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 当初の予定通り、均等に割り振りました。

 いやぁ、実に綺麗な数値の並びだと思いません?

 理想は、全て横並びにするのが良いな!

 まさに万能の戦士って感じだよね!


 少々ハシャギ過ぎてしまったが、それは成長したからこその喜びであるので致し方ない。

 うん、これには素直に喜ぶでしょう。


 まぁ、それはさて置き、疲れていた心もレベルアップのお陰で癒されたのだし、目的のレッドテイルフロッグを狩りましょう。

 ……とは言うものの、この湖に来てから既にその姿を確認しているし、何より五月蝿い!


 ゲロゲロゲロゲロと、蛙の大合唱ですよ。

 陸上ではなく、湖の水面にチョコンと顔を出した状態で、ずっと鳴いています。

 体長一メートルの蛙には、頭にチョコンと二本の触覚に似た物があり、尻尾は五十センチほどもあった。


 俺は立ち上がりながらウエストポーチから弓と矢を取り出し、浅瀬の近くまで移動する。

 そして、二十匹ほどの集団に目掛けて放った。


 放たれた矢は、一匹のレッドテイルフロッグの目玉に突き刺さった。

 それと同時に、二十匹ほどいたレッドテイルフロッグは、その大半が水中へと姿を消す。

 そして、残ったのは矢が刺さった個体と好戦的な性格らしい個体の合計四匹だけだった。


 まぁ、俺としては一度に大量のモンスターと戦うのは嫌なので、この状況は望むところである。

 なので、残った個体の内、いまだに無傷な個体に目掛けて再び矢を放つ。

 矢は見事命中。しかし残った個体の四匹は、一斉に陸上へと上がり、此方に襲い掛からんばかりに高く跳びはねて来た。


 とは言え、その動きはさっき見たイェーガースパイダーと比べると圧倒的に遅く、しかも一直線の動きの為、容易に避けることが出来た。

 そして、俺は避けた後にウエストポーチから槍を取り出して左手に弓、右手に槍の状態で迎えうつ。


 再び、レッドテイルフロッグの一匹が跳びはねて来たので、空中に居る間に槍で仕留める。

 そうして、突き刺したレッドテイルフロッグを地面の上で威嚇している個体に目掛けて投げた。


 次は目玉が片方潰れた個体に、槍を突き入れ、直ぐに槍を引き抜くと先程レッドテイルフロッグを投げられ怯んでいる個体に目掛けて槍を投げた。

 最後は無傷の個体で、そいつにはウエストポーチから取り出した棒手裏剣を投げつける。


 うむ、流れるような立ち回りだったな!


 俺に襲い掛からんとしたレッドテイルフロッグは、四匹とも死んでいる。

 俺はそれを眺めながら自画自賛しつつ、死体となったレッドテイルフロッグの尻尾を切り取る作業を始めた。


 何でも、このモンスターの尻尾は意外に美味いらしく、そこそこの値段で買い取ってくれるそうだ。

 ランクFに指定されているクセに、人に好んで食べられるとはなかなか見上げた奴である。

 ちなみに、ランクの高いモンスターの肉は、高ければ高いほど美味いのだそうで、中には馬鹿みたいに高い値段が付くモンスターの肉も有るらしい。


 まぁ、そんなモンスターの肉を手に入れるには、ランクBくらいのモンスターからになるので、今の俺には遠い夢だと言わざるを得ない。

 しかし、俺も何れはそんなモンスターを倒せるようになりたいものですな!


 俺は密かに夢を抱きつつ、レッドテイルフロッグの尻尾を手早く切り取ると、次の獲物を探す為に湖面を眺める。


「……此処のは全部逃げちゃったし、少し移動するか」


 視線を右側に移せば、まだまだ獲物は沢山居るのだ。

 おそらく、この湖の浅瀬をグルッと回って見れば、ずっとレッドテイルフロッグがゲロゲロと鳴き声を上げている光景が目に付くのだろう。

 そう思えるほどに、俺の視線の先には奴らが多く存在していた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 夕方になる前に湖を離れた俺は、森を突き抜け街へと戻って来た。

 ちなみに、帰ってくる際にも駆逐モードに入ったが、それはあまり話たくないので割愛させて貰う。


 今は昆虫の昆の文字も感じさせない街の姿を見て、俺はホッと胸を撫で下ろしている。

 まぁ、あの忌々しい存在は一旦置いておいて、俺は冒険者ギルドへと入った。

 そして、何時もの馬鹿騒ぎをしている酒場を横目に、スキンヘッドの厳つい男であるハッサンの前に立つ。


「おう、キリュウ。今日もエビルアイラビットか?」


「それがねぇ……平原に何故かエビルアイラビットが居なかったんだよね。その代わりに、ゴブリンが三体だけ居たからそいつらを倒したよ。

 で、その後は森の中で駆逐モードになったりしつつ、レッドテイルフロッグを倒しまくってた」


「くちくモード? まぁ、良い。

 そんじゃあ、その成果を出してくれ」


 訝しげな表情も束の間、ハッサンは直ぐに豪快な笑みを浮かべながらそう述べた。


 なので、俺は言われた通り素直にカウンターの上にレッドテイルフロッグの尻尾を取り出していく。

 勿論、ゴブリンの犬歯も買い取って貰うので一緒に出すよ。


 一本、二本、三本、四本…………


「ちょ、ちょっと待て! 全部で何本有るんだ?!」


 尻尾を二十本ほど出したところで、ハッサンが焦ったように問い掛けてきた。


 しかし、それは俺にも分からない。

 何せ、三十本を超えた辺りから数えるのが面倒になったので、本当に知らないのだ。

 多分、感覚的に言えば四十本くらいだろうか?


 冷静に考えると取り過ぎだよね。

 でも安心でござるよ、レッドテイルフロッグは、まだまだ沢山居たから全滅にはほど遠い。


 まぁ、それはさて置き、俺はハッサンの疑問に答えるべく、少し考えながら口を開いた。


「……多分、四十くらい?」


「はぁ、また沢山狩ったもんだな」


「途中から、何か流れ作業してる感覚になって、気づけば夕方の少し前だったんだよね」


「集中するのは良いが、し過ぎるのも問題だぞ?

 周囲への警戒に三割、戦闘に七割ってのが一番良い意識の向けかただ」


 おお、何気に参考になりますね。

 俺は一人で狩りをしてるから、余計に助かる助言だ。


「成る程、流石はハッサン! やるな、お主!」


「ハッハッハッ! これでも元ランクBの冒険者だぞ。そりゃヒヨッ子の助言くらい出来らぁな!」


 高いな! 凄腕だったんだなぁ、ハッサンて。


「俺は今出されている分を奥の部屋に運んどくから、残りの尻尾も出しといてくれ」


「了解した!」


 ハッサンの背中を見送った後、俺は残りの尻尾を出していく。

 一本、二本、三本…………三十本………四十本………。


 あ、あれ? 多くね? 


 自分でも気がつかずに、アホみたいに狩りまくっていたらしい……。

 結局、ウエストポーチから取り出した尻尾の数は、ハッサンが持って行った数も入れると合計で八十本になっていた。


 は、ハハハ………ここはワロトケ、ワロトケ! 笑って誤魔化すしかない!


 滅茶苦茶大量殺戮してたらしいです。

 無心になるって怖いね………いや、駆逐モードが抜けきってなかったんじゃないか?


 そんな風に考えながら、カウンターの上に置いた無数の尻尾を眺めていると、ハッサンが何時の間にか戻って来ていた。

 しかし、そのハッサンの表情は硬い……そして、無言だ。

 しかも、気づけば酒場の方から聞こえていた馬鹿騒ぎも何時の間にか聞こえず、シーンとしている。

 まるでお通夜のようだ。


 俺は、こんな状況を一変させる魔法を使用する決意をした。

 その魔法とは………


「ハッハッハッ! いやぁ、大量ですなぁ! ハッハッハッ!」


 ワロトケ作戦である。

 何事も笑っておけば誤魔化せるという訳だ。

 これで上手くいくだろうと思われたが、何時までも状況は変わらず、直ぐに俺の笑い声も萎んだ。


 そして、真顔のハッサンが一言…………


「笑って誤魔化せる数じゃねぇよ」


 ごもっともです!

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