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なんの加護もなく、いきなり異世界転移!  作者: 蘇我栄一郎
街へ。そして冒険者としての準備
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武器屋 その2

 ディーン達が武器屋の従業員に武器や防具を預けている最中、俺はどんな武器を買うべきか真剣に吟味していた。


 全て金属で出来た槍は、持てることは持てるが俺には少し重く感じる。

 なので持ち手の部分は木製で、穂先だけ鉄製の物が好ましいだろうと判断して棚を眺める。

 そして、自分が目の前に広がる無数の武器を手に戦う姿をイメージし、そこで衝撃的な事実に気付いた。

 その事実とは、俺には全ての槍が長過ぎることだ。


 なんでやねん! 子供用とかないの?!


 そんな風に内心でツッコミを入れるが、どう見ても子供用の武器など置いてはいない。

 俺はガックリと項垂れるが、ここは武器屋なのだから当然その武器は沢山あるし、槍だけではなく他の武器も多数置いてあるので、きっと俺に合う武器もある筈だと思い直して槍とは別の武器が置いてある棚に移動した。

 しかし剣や斧を見て回ったが、やはり俺には大き過ぎて扱えないことが判明する。


 ……ワロエナイ。マジでワロエナイ……。


 普通に考えれば子供用の武器とか存在する訳ないじゃん………そりゃそうですよ、子供に武器を持たせる大人が居る訳がないと思います。

 でも、それなら何故俺みたいな子供が冒険者登録することが出来たのでしょうか?

 そんな疑問も浮かぶが、目下の問題は武器だ。取り敢えず、この問題に注視するべきだと思います。


 しかし、俺にはどうすることも出来ないし………と思い悩みながら武器を眺めていると、投擲武器のコーナーに槍が置いてあるのが目に入った。

 その槍は短く、俺にも取り扱い易い形状をしている。


 うむうむ、素晴らしい! これなら、自分で制作した槍と同じくらいの長さだ!


 木製の柄に鉄製の穂先、俺の求める物で間違いないですよ。

 しかも、投擲コーナーには他にも興味を引かれる物が複数存在する。


 満足のいく物を見付けられて満面の笑顔を浮かべる俺は、その投擲専門の武器が並んでいる棚を眺めた。

 鉄製でコンパクトな投げナイフ、同じく投擲を前提とした鎚や斧、そして今俺が所持している刃渡り三十センチほどのナイフと同様の物、他にも様々な投擲専用武器が並んでいるが、俺の興味を一番引いたのは手裏剣だ。


 スゲェー!! ニンジャ、ハラキリー、スキヤキー!! で、ある。


 まぁ、手裏剣と言っても棒手裏剣ではあったが、それでも手裏剣には違いない。

 その棒手裏剣の値段は、一本で銅貨五枚……つまり、五百ジェニーである。

 少し高い気もするが、これは買っておいて損は無いだろう。

 なので、俺は一万ジェニー分を購入することを決めた。投擲術のスキルを持っているので無駄にはなるまい。


 そして次に目を付けたのは、投擲コーナーの横に申し訳程度に設置されている棚の商品だ。

 その棚には、レイピアが数本だけ置いてあった。

 おそらく、刺突剣は人気の無い武器なのだろう。だからこそ、こんなに少ない数しか置いてないのだろうし、値段も投げ売りに近い設定金額なのだと思われる。

 だが俺からしたら重さも丁度良いし、刺突剣なのだから振り回すことも無いので取り回しが良い。


 うむ、持ってみた感じも素晴らしい!


 しかしこの剣を使っていて、剣術スキルが取得出来るかは疑問だ。

 もしかしたら、剣術スキルとは別物のスキルを取得することになるかも知れない。

 ……悩ましい問題が浮上するが、もし別物のスキルだったとしても、俺が持っていないスキルには違いないし……。


 ここは男気一発! ってことで、これも購入しよう!


 少々考え無しな気もするが、まぁ、買っておいても良いと思うので気にしないことにする。

 で、こんな感じで選んでいった結果………


「投擲用の短槍が一点と棒手裏剣が二十点、そして同じく投擲用の鎚と斧が一点ずつ、それからレイピアが一点。

 合計で二十四点、金額は金貨十枚に黒貨五枚、十万五十ジェニーになります」


 従業員である獣人のお姉さんが笑顔を浮かべて値段を告げて来た。

 それを聞いて俺は思った。


 ちょ、ちょっと調子に乗ったかも……。


 い、いや、これは必要経費なんだから仕方ないのです。

 そう、これは冒険者として生きていく為には必要なのだ。


 うむ、そう思えばこの出費も痛くはない!


 と言う訳で、従業員のお姉さんに金貨十枚と黒貨

は持って無かったので銅貨一枚を支払って、お釣りの黒貨五枚を受け取った。

 これで俺に残された残金は、七万九千九百九十五ジェニーである。

 少々懐具合が寂しくなってきたな……。


「キリュウ、大分買ったみたいだね」


「買いすぎなんじゃない?」


「そうそう、俺ら双子が最初に買ったのは安い中古の剣一本だったぜ」


「そう言えばそうだったな。懐かしいなぁ」


 クロウとヴェルの双子とレナとミーナの四人が、揃って買いすぎだと忠告してきたが、今は必要経費だと割り切ったばかりなので言わないで欲しい。

 自分でも調子に乗っていたということは薄々感ずいてますので……勘弁して下さい。


 そんな四人とは裏腹に、ディーンは俺が購入したも物を見て怪訝な様子を見せる。


「投擲用の武器を買ってどうするんだ? 投擲術のスキルがないと無意味だぞ。

 これから取得するつもりか?」


「投擲術なら持ってるよ。

 俺は体が小さいから、中距離か遠距離じゃないと直ぐに殺されるからね」


「ふむ、確かにそうだな。

 だが、投擲用の武器は回収が困難な場合は諦めるしかない………そうなると、かなり費用が嵩む戦術になるぞ。

 実際、投擲術のスキルは費用が掛かる為、そのスキルを取得している者は非常に少ない」


 流石はディーンだ。

 冷静に俺の戦闘方法の問題点を指摘して、尚且つスキルについての説明までしてくれる始末だ。


 どこまで完璧超人なんだ! 凄すぎるぞ、ディーン!


 そんなディーンに比べて双子は昔を思い返し、しまりの悪い笑みを浮かべている。

 何やら"ミステリアスなミミちゃんが可愛いかったなぁ“とか、"セフィちゃんの方が良かった“とか言って女組のレナとミーナに白い目を向けられていた。

 同じ男でもここまで差が出るのか……。


 少々双子を見ていて悲しい気持ちになったが、ふと武器について疑問が浮かんだので、ディーンに視線を移した。


「ここには弓と矢が無いんだけど……何でなの?

 出来れば職人が作った物が欲しいんだよね。俺のは自分で作ったやつだから」


「あぁ、弓と矢ならこの武器屋には置いて無いぞ。

 ここの主人が弓矢が嫌いらしく、作っていないらしい」


 渋面でそう告げたディーンは、従業員のお姉さんに視線を向けて少し苦笑した。


 何だそれ!? マジで言ってんの?! 俺としては死活問題なんですけど!


 現在、俺の取得しているスキルで一番活躍しているのが弓術である。

 それも当然で、体の小さい俺は大きなモンスターとは白兵戦など出来ないからで、そうなると必然的に弓術や投擲術に頼らざるを得ないからだ。

 それなのに、俺にとって一番重要な武器が無いとは………非常に困るんですけど……。

 しかも、この店の主人の好みに合わないという理由で売ってないのが非常に腹が立つ。


 そう、腹が立つのだ! 一言文句でも言ってやろうかな?


 とも思ったが、なら別の店に行ってくれ、と 言われれば俺には反論する余地も無いので黙っておこう。

 別にビビった訳じゃないぞ。鍛冶師とか怖そうなイメージしかないからビビったとかじゃないやい!


 ま、まぁ、それは兎も角、無いのは仕方ないってことで、その後はディーン達の装備の点検や補修が終わるのを黙って待ち、それが返却されると武器屋を後にした。


 そうして生活必需品や冒険者として必要な物品を購入した俺達は、ヴェルのお薦めの店員が働くお店に移動して食事を摂った。

 そう、食事がお薦めではなく、店員がお薦めな店で、だ。

 ちなみに、食事を摂っている最中は、レナとミーナに白い目を向けられていたのは言うまでもないだろう。

 俺は我関せずを貫き、ディーンと常識についてを尋ねて勉強していた。


 結構長い時間を掛けて常識を学び、一人で行動しても問題無いと思えるくらいにはなったつもりだ。

 なので、今日はこのままここで解散となり、俺はディーン達と別れた。


 俺は店を出て、理由もなく取り敢えず冒険者ギルドへと歩みを進める。

 もうすぐ夕方になるので依頼とかを請けるつもりは無いが、どんな依頼が有るのかをリサーチしとこうと思ったのだ。


 ……本当は暇なだけなんだけど、まぁ、明日から依頼を請けてお金を稼ぐつもりだったし、これも一つの勉強であると言える。

 なので無意味では無い筈だ。


 ともあれ、そんなこんなで冒険者ギルドへと入る。

 すると、やはり夕方近くになるからか昨日と同様に冒険者ギルド兼酒場には、非常に多くの冒険者で賑わっていた。


 俺はそんな人達を横目に、依頼用紙が貼ってある掲示板へと移動して、一つ一つを確認していく。


 うむ、平仮名が多くて読み辛い!!


 漢字は偉い学者さんとか貴族さんとかが使う文字で、庶民は平仮名を多様するのが普通だとディーンが言っていた。

 だから俺が見付けた冒険者の遺品の本には、平仮名が多様してあったのだろう。


 まぁ、それはさておき、貼り出されている依頼は、どれもこれもランクが付いている物ばかりである。

 俺は一応冒険者ではあるが、登録が完了してあるだけの冒険者に過ぎず、ランクはまだ付いていない。

 これは十二才以上でなければランク外扱いの為ある意味仕方ないのだが、ランク付きの依頼はそのランク以上の者しか請けられないので、俺にとっては死活問題となる。

 しかし、こればかりは年齢制限の為どうしようもない。


 自分でも請けられる依頼となると、この街の領主が出している依頼で、街の清掃くらいしかない。

 そんな類いの依頼は数件あるが、全部報酬が低く、はっきり言って微々たる金額である。


 これでは生活出来んよ! 無理無理、絶対無理!


 まるで子供の小遣いではありませんか。


「はぁぁぁ………仕方ないか。

 ディーンの言っていた通りに明日から頑張ろう」


 昼食の時にディーンに言われたのだが、十二才未満の者は依頼では食っていけないので、街の外でモンスターを狩って解体し、有益な素材を冒険者ギルドで買って貰うのが一番良いらしい。

 事実、ディーンは子供の時にそうしていたそうだ。


 しょうがないよね。俺もディーンにならってそうしましょう。


 リサーチと言うか、予め分かっていたが一応自分の目で見て諦めもついたので、俺は賑やかな冒険者ギルドをあとにして、宿屋で晩飯を食べると少し固めのベッドで眠りについた。


 明日から冒険者として頑張ろうと思います!

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