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0005 はっちゃける天才たち

門番先生、固まっております。

「ルッツ、どうする?」

「僕もなるよ。冒険者。どうせヤツ…お兄ちゃんならいい研究場所を作ってくれるんでしょう?なら良いよ。」

「よし、そうと決まればすぐに登録しに行こう。」

そう言って俺が席を立つとルッツに座らされた。

「門番さん、僕たちは信用に足る人間でしたか?」

「あ、ああ、もちろん。そりゃもうべらぼうに信用できるよ。ちょっと待っててくれ。」

そういうと門番先生は近くにあった棚からカードを取り出した。金属でできてるようだ。

「これが身分証明書だ……ってか名前とか聞いてないな。ステータスとかは書き込まなくて良いから、名前とか最低限の情報を頼む。念じれば書き込まれるから。」

俺は書き込まれろー、書き込まれろーとやってるうちにルッツはさっさと終わっていた。

「ははっ、面目ないねぇあんちゃん。いや、ヤツナギさん?」

あっ……。

「あ、やっぱり兄弟じゃなかったか。」

「え?バレてたの?」

「お兄ちゃん、あ、もう良いのか。ヤツナギさん、彼は嘘を見抜く力がありますよ。」

えっ嘘……。

――――――――――――――――――――

レイト 28歳 男性

HP 235

MP 298

STR 410

DEX 204

INT 299

CON 216

特殊能力

•監査…相手が騙そうとしているか否かが分かる

能力

•槍術Lv1…槍を扱うと肉体的能力が極小上昇。

•話術Lv1…対話時にのみ知力が極小上昇。

――――――――――――――――――――

うわ、ほんとだ。てかこう見ると彼は筋力が高いのだな。

「せっかく筋力が高いのによ、このスキルじゃ全然活かせないと思ったんだが、門番職を見つけた時に天職だと思ったね。我ながら完璧な選択だよ。」

「ははは、違いない。僕は知力が高かったので何かそれに関係する仕事になりたいですね。」

「僕も知力が一番だったよ!」

「そうか、お兄ちゃんと一緒だな。」

「あ?誰がお兄ちゃんだよ眼球引っこ抜くぞ。」

「ごめんなさい。」

「仲良き事は良いことだろう。なぜ兄弟じゃないのかまでは聞かない。せいぜい頑張って生きてくれ。あ、冒険者ギルドは大通りを道なりに行けば見つかる。屋根の色が他と違うからな。」

「今日はありがとうな。」

「また来るよ門番さん!」

「おーおー、また来いよー。」

そんなこんなで俺らは詰め所を後にした。

「マジ黒歴史……。二度とやりたくない!思い出しただけで吐き気がする!何だよ『お兄ちゃん♪』とか言ってたの。ああ鳥肌が……。」

「ルッツが最初にやったんだろ……。」

大通りに出ると、そこは賑わっていた。あちらこちらから聞こえる声に、馬車の駆ける音。客引きに怒鳴り声、それを煽る声など……。正直耳が痛い。高い聴力が仇となった形だ。そういえばルッツのステータスはどんな感じだろう?

――――――――――――――――――――

ルッツ 15歳 男性

HP 72

MP 2245

STR 102

DEX 96

INT 2167

CON 51

特殊能力

•探求…知覚した事物、事象を模倣する

•顕現…一度見た物質、魔力的流動を模倣する

•不死身…治癒能力が極大に増加

•賢者…脳の演算能力の限界を突破する

能力

•水魔法Lv3…水の魔法使用時、効果が小上がる。

•炎魔法Lv2…炎の魔法使用時、効果が微少上がる。

•風魔法Lv2…風の魔法使用時、効果が微少上がる

•土魔法Lv1…土の魔法使用時、効果が極小上がる。

――――――――――――――――――――

何だ、ただの化け物か。

「「は?いやいや、強すぎるでしょ。」」

「いや、待とう。とりあえず今日は、冒険者に、登録して、寝よう。オーケー?」

「オーケー。疲れが溜まりすぎて前方へダイナミック就寝しそうだ。」

そこから俺たちは無言で歩いた。そこからすぐ、屋根が目立つ建物を見つけた。あれが冒険者ギルドだろう。なんたって赤色だからな。建築士のセンスに脱帽だ。

中に入ると、先客が一斉に俺らに目線を向けてきた。ああ、これがテンプレ!俺の胸は高揚感でいっぱいになった。興奮した俺の顔を見てルッツが引いてるが無視だ。無視して正面のカウンターへと進んでいく。

カウンターには受付の人であろう女性がいた。その女性は美人の部類に入るであろう用紙をしていた。少し勝気な印象を与えるような顔だ。スタイルこそは慎ましいが。

「こんにちは。今日はどういった要件でしょう?」

「冒険者になろうと思って……」

「あんた人と話すの下手すぎない?すみません、僕はルッツ。彼はヤツナギです。僕たちは冒険者になることはできますか?」

「え、ええ。もちろん。過去には不干渉が冒険者のルールだからね。さて、身分証明書は持ってるか?」

「はい。ほら、ヤツナギさんも提出して!」

「せっかくの美人と話すチャンスがー。ほれ。」

完全に主導権を握られてしまった。俺は恋愛経験ないからな!

「……確認しました。じゃあもう冒険者で良いですよ。ちょっと待っててくださいね。」

そういうと受付の女性は奥へと引っ込んだ。暇だから周りを見渡す。

あの端のスペースは酒場。向こうはクエスト貼り場。あれはガラの悪い冒険者たち。すごい。ここはテンプレの宝庫だ!

興奮した俺の顔を見て、ガラの悪い冒険者とルッツが嫌な顔をした。向こうはともかくルッツは止めてよ。

「お待たせしました。これはギルドカードです。EからSまであるので、頑張ってくださいね。」

「依頼はどこで?」

「あそこの板が掲示板になってるのでそこに貼られてるだろう依頼表を持ってきて、それを受注する。で、レベルが高いクエストだと受注金が発生する。あと、クエストがクリアできなかったら違約金が発生します。以上です。」

「おー、把握しましたよ。分かんないことあったらまた聞きますね。」

「えっ、僕まだ知りたい事たくさんあるんだけど……。」

「うるさい。寝たいんだ。邪魔は許さぬ。」

「わがままな人ですね。」

「どうとでも言え。あ、受付さん、丁寧にありがとうございました。」

「いえいえ、頑張ってくださいね。」

「では、失礼します。」

一通りの会話が終わったら踵を返して出口へと向かう。

すると、前に入る人が居た。さっきのガラの悪い冒険者たちだ。これは……!

「やあやあ、随分とヒョロイね君たち。そんなんで冒険者出来るのかな?」

「授業料払ってくれたら鍛えてあげるよ。」

「全財産でなぁ?ヘハハハ!」

右から一般的な体型、チビ、デブって感じ。さすがファンタジー世界。

ルッツが話しかけてくる。

「スキル試して良い?」

「俺が2体だ。それなら良い。」

「了解。」

打ち合わせを終わらせる。

「おいおい、君たち僕たちと叩くつもりか?冗談はやめてくれよ。」

「これは痛い目に合わせてやらないとなぁ?」

「やめろよ、教育だろ?ヘハハハ!」

俺は素早く一般的な体型の男へ触れる。すると男の感情が書き換わっていく。嘲り、驕り、そんな感情が塗りつぶされていく。

それは恐怖。絶対的な恐怖。人間の根源に存在する最も恐ろしい感情だ。その感情で頭が一杯になった男は…。

「ひっ!あっ、ああああああああ!!!!」

叫んで後ろへ走り出し、俺の足払いにかかって転けた。顔を見ると泡を吹いてる。てか臭い。漏らしやがったこいつ。

「おっ、おい……。お前何をした…?」

「俺の強さに気づいちゃった。的な?」

「ふざけた事言ってんじゃねぇ!おい!2人でこいつを殺すぞ!」

「僕忘れられちゃった?困るなぁ…。」

そういうとルッツは、男へと襲いかかった。

「邪魔だ!」

しかしルッツの肉体的ステータスはめちゃしょぼい。あえなく吹き飛ぶ。

吹き飛んだ先でルッツが大声を出す。

「受付さん!これって正当防衛だよね!」

「黙れガキ!」

「……正当防衛です。死亡させない限りは認めます。」

「はっ!やってみろよガキが!」

どうやら了承は得たようだな。ルッツはブツブツと何かを言い始めた。というかデブは無傷の状態のルッツに疑問を覚えろよ。

「お?命乞いかぁ?」

デブはニヤニヤしながらわざとゆっくりとルッツへと近づく。あ、ちなみにチビは今チビってる。怖くて。チビだけに、ね。

「“水よ、鋭きものよ。かの者は罰を与えるに値するもの。汝の力をもっとして、かの者に後悔と絶望を与えよ。〈水の刃〉”」

するとルッツの指先から水が勢いよく出てきた。それは男の股間へと寸分狂わず直撃し……。いや、言わずとも分かるまい。

「ルッツ、この汚くなった空間どうしよう。」

「そのチンピラたち使って掃除させれば良いでしょ。」

「そうするか……これ触れないと使えないっぽいんだよね……。」

いやいやガラの悪い冒険者に触れる。冒険者の恐怖心に『逃れる方法はこの空間を綺麗にするしかない』という強迫観念を植え付けた。ちなみに気絶してた男(一般的)は軽く蹴って起こした。これ加減が難しいな……。

ガラの悪い冒険者たちは服を脱ぎ、必死に床とか壁を拭きだした。逆に汚くなりそうだがおれはもう対処した。

「帰ろっか。ルッツ。」

「ああ、帰ろう。」

俺らは冒険者ギルドを去っていく……。

ちなみに大通りまで出たところで、金銭が1円もないことに気づいた。無念。

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