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そのうち、しつこい俺に根負けしたのか絆されたのか、秀治さんは優しい笑みを浮かべて俺に手を差し伸べた。
「仕方ない。こんな爺さんでもいいのなら、邦くんに僕をあげる」
初めての夜の事は、今でも鮮明に覚えている。
少しかさついた唇の感触。
折れそうに細くて、しなやかさはないけれど、どこか肌に馴染む身体。
受け入れられた中の焼けるような熱さ……。
今思えば、彼に無理をさせたのかもしれない。俺とこんな風にならなければ、彼の命はもっと先まであったのかも知れないと思っても、その時の俺には自分の想いを止められなかった。
一緒に居たのは八年。
そのうちの二年、秀治さんは病床の人だった。