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「貴方が好きです」
「僕も邦くんは好きだよ?」
まるで子供に対するようにそう言って笑う修二さんの細い右手を取って指先に口付ける。
「恋愛対象として、好きなんです」
そう言えば、秀治さんの顔から笑みが消えた。
「僕は男だよ?」
「解ってます。でも、好きなんです」
「それにもうすく還暦だ」
「それも解っています。……それでも、俺は貴方が欲しい」
幾度となく繰り返された問答。
今なら、秀治さんの言葉の裏の意味を知っている。けれどその時の俺にはただ年齢の事だけを言い訳にしているようにしか取れなかった。