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無事空港についてゲートをくぐってロビーへと出た。
到着ロビーは迎えの人、帰国した人などでごった返している。
飛行機を降りてすぐに携帯の電源を入れたけれど、僕の携帯は一度も鳴らない。
それは、仕方ない事なのだ。
「何を期待していたのだ、僕は」
本心では辺りを探し回りたいのをぐっと堪えて出口へと向かう。
「っあ!」
早く帰ろうと脇目も振らず早足で出口を目指す僕の腕を、横から強い力で引かれた。
バランスを崩した僕は、踏鞴を踏んで、一瞬後には懐かしい匂いに包まれた。
「間に合った……っ」
エスカレーターの下にできた僅かな隙間に身を寄せて、彼が僕をきつく抱き締めている。
「和紗さん、帰る日は書いていたけど、時間までは書いていなかったから焦ったよ」
かなり走ったのだろうか、息を切らせて話す慎の胸は早鐘を打つように響いていた。
「……夢を見ているのか」
あまりの事に現実味がわかない。
ついさっきまで、もう駄目なのだと思っていたのに。この展開は何だ。
「和紗さん、上向いて」
「何……っ、ん」
僕よりも一回りも大きな慎が覆い被さるように僕に口付ける。
軽く触れた後で確かめるように唇を噛まれて、背中に電流に似た何かが駆け上がった。
「夢じゃないでしょ」
少し顔を離して笑う慎の顔は、何度も夢に見たのと同じで……。
不覚にも堪えていた涙が流れた。