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短編集  作者: 蓮渓 蒼
2/8

 無事空港についてゲートをくぐってロビーへと出た。

到着ロビーは迎えの人、帰国した人などでごった返している。

飛行機を降りてすぐに携帯の電源を入れたけれど、僕の携帯は一度も鳴らない。

 それは、仕方ない事なのだ。

「何を期待していたのだ、僕は」

 本心では辺りを探し回りたいのをぐっと堪えて出口へと向かう。

「っあ!」

 早く帰ろうと脇目も振らず早足で出口を目指す僕の腕を、横から強い力で引かれた。

 バランスを崩した僕は、踏鞴(たたら)を踏んで、一瞬後には懐かしい匂いに包まれた。

「間に合った……っ」

 エスカレーターの下にできた僅かな隙間に身を寄せて、彼が僕をきつく抱き締めている。

和紗(かずさ)さん、帰る日は書いていたけど、時間までは書いていなかったから焦ったよ」


 かなり走ったのだろうか、息を切らせて話す(まこと)の胸は早鐘を打つように響いていた。

「……夢を見ているのか」

 あまりの事に現実味がわかない。

 ついさっきまで、もう駄目なのだと思っていたのに。この展開は何だ。

「和紗さん、上向いて」

「何……っ、ん」

 僕よりも一回りも大きな慎が覆い被さるように僕に口付ける。

 軽く触れた後で確かめるように唇を噛まれて、背中に電流に似た何かが駆け上がった。

「夢じゃないでしょ」

 少し顔を離して笑う慎の顔は、何度も夢に見たのと同じで……。

 不覚にも堪えていた涙が流れた。

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