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42話 地震

 強化魔法を使い全力で駆け抜け前回の半分程の時間で街に到着する。入る門も前回と同じだだがある光景だけが前回と全く異なっていた。


 門をくぐった傍にある平地部分には多くの者達がテントを張り避難していたのだ。街に何か問題が起こったのは間違いない。今は検問も何も機能していない状態なので門を通り抜け一番近くに座っている家族に声をかけた。


「街で何かあったのですか?」


「あぁ、先日起こった大地の大揺れで街がボロボロになってしまった。これからどうすればいいのか?」


 子供を抱きかかえた男性がそう答えた。確かに地震の事は俺も知っているが街を壊滅させる程の揺れには到底思えない。疑問を拭い切れないまま俺は街に向かって走っていく。


-------------------------------


「おいおい、マジかよ」


 街に着くと俺は絶句する事となった。レンガ造りの建物が多い街であったが、地震の所為で2階建て以上の家屋が軒並み崩れていた。

 まさかこれ程、脆弱な建築物とは思っていなかった。シジルクさんの店も何階にも積み上げられていた筈だ。俺はすぐにシジルクさんの本店へと向かう。


 少し走ると店が在った場所に到着する。想像通り2階より上の階層の一部が崩れておりシジルクさんと職員達は瓦礫の撤去に追われていた。


「シジルクさん!!」


 俺の言葉にシジルクさんが反応し振り返る。


「アキノリさま! 申し訳ありませんでした…… 天災に巻き込まれてしまい……」


「えぇ、解っています。それより大丈夫ですか? ご家族の方は??」


「有難うございます。幸い私も家族も無事でございます。けれど店の方は見ての通り…… けれど他の店に比べればまだマシです。私の店舗で崩れたのは本店のみ、支店の方は階層が低かったので何とか崩れずに持ちこたえています」


「それは何よりです。だけどあの程度の地震でこれ程まで被害が発生するとは……」


「アキノリ様はあの程度とおっしゃいましたが、我々は生まれてから大地があれ程揺れる経験をした事がございませんでした」


 そう言う事なのだろう。地震を長く経験していなかった貯めに構造的に無理な建築物が発展していた訳だ。入場門の近くで避難している人達も高層に住む人々や崩れた瓦礫に巻き込まれた人々なのかもしれない。軽く見積もっても1000人は超えていた。街も被害があるのは高層のみで低層は被害が少ない。

 甚大な被害では無いが、大打撃には違いないだろう。


「取り合えず俺も手伝います」


「大丈夫です。我々でやりますから」


 そんな問答を広げている時に俺はある事を気付く。周囲全てで瓦礫を撤去している人達全員が人力で撤去している事だ。


「シジルクさん、魔法は使わないんですか?」


「魔法ですか? エルフと違って我々は魔法が使える者が少ないんです」


「種族の違いって事ですか…… それなら提案があるんですが、一度村に帰って仲間を連れてきます。魔法を使えばかなり速く瓦礫の撤去が出来る筈ですから」


「エルフの皆さんをですか…… だけどご無理をさせるのも」


「困った時はお互い様です」


 俺はそう告げると、再び全力で仲間の元へと戻って行く。


------------------------


 俺がシャトラ達の元に戻り事情を説明すると全員が手伝うと言ってくれた。俺達の村はコンクリート製の強い土台の上に重量の軽い木造家屋で作られているので被害は全くない。

 だが街の方は重いレンガを石灰が混じった土で固めて作られているたので振動に弱いと言う事だろう。


 俺達が準備を始めていると何事かと周囲の者達も集まってくる。俺が事情を説明すると数名の者達も応援してくれると言ってきた。その人物は俺に突っかかっていたガロン達だったのには驚いた。


「ふん、俺は人種が嫌いな訳じゃない。森を荒らす奴等が嫌いなだけだ。あいつ等の資源は良い物が多いからな。今後手に入らないとなると少々不便だ」


 そんな事を言っているが、ツンデレって言うのだろう。

 準備を整えた俺達は総勢10名だが、全員が魔法を使える者達でその能力は俺の換算で100人を優に超える。

 フェンスさんい急ごしらえで大きな引き車を作って貰い。その台車の上に今までの取引で作ったシーツや村で取れる食料、水を積み込んだ。それを遊歩道から引っ張っていく。

 最初転がしていたが、前後を俺達が持ち上げて走った方が速い事が途中で解りずっと持ちあげたまま走り続けた。


 翌朝俺達が街にたどり着くと、入場門の周辺の人達は増えている感じであった。全員には廻らないかもしれないが、衛兵の人に声をかけ老人や子供、体の弱っている者達から順番に物資を配れる様手配してもらう。

 この場所には回復魔法が使えるテナと手伝いにルークを残し、俺達は瓦礫の撤去へと向かった。


--------------------------------


「何か崩れている家屋が増えてないか? 余震でもあったのか?」


 俺が街を見て最初に思った事だ。良く見ると家屋のいたるところにひび割れが発生している。これはまだまだ家屋が崩れる可能性があると思えた。


「最初はシジルクさんの所だ」


 俺が皆を引き連れてシジルクさんの店へと向かう。シジルクさんは汗まみれになりながらも未だ瓦礫の撤去に追われていた。


「応援に来ました。後は任せて下さい」


「本当に来てくれるとは、感謝します」


 既に体力が限界なのだろう。遠慮なくそう呟くと大きなため息を溢す。


「ライラックはガロン達を率いて瓦礫に巻き込まれた人がいないか捜索してくれ。まずはこの周辺からでいい。もし生きている人がいれば強化魔法を使って瓦礫を撤去し救い出す。俺とシャトラはユンボを使う。

 あとシジルクさんにこの街の地図を用意してもらうから全員持って置く様に」


 その後シジルクさんから手渡された地図を全員に配り、俺達は作業へと取りかかった。


「シャトラ頼むぞ。今回はいつもより大きい奴を頼む」


「仕方ないですね…… 頑張ります」


 シャトラも村の工事でユンボを作り慣れた事もあり要領よくパーツを土魔法で作り上げる。その様子をシジルクさん達は呆気に取られながら眺めていた。


 30分もしない間に組み上がったユンボの大きさは街の大型工事で見るタイプだ。その巨大な土の機械を見上げ周辺の物たちはザワザワと指さしていた。


 俺はまずは瓦礫の山へ水魔法を使い水を浸透させる。瓦礫の隙間には俺のが作った水がすり抜けて行った。

「よしこの瓦礫には人は居ない。これなら気にせずに撤去できるな」


 人の有無を確認した後俺はユンボに乗り込み大きなバケツで一気に瓦礫を撤去していく。

 作業の余りの速さにシジルクさん達は固まり続けた。最初の場所を終えた俺はライラックがチェックし終わった場所を片っ端から片付ける。ライラックも風魔法が使えるので俺と同じ方法で瓦礫に空気を送り込み人がいるか確認している。


 大きな重機は街中を歩きまわり一騎当千の活躍を見せた。


 俺達の噂は瞬時に街中に響き渡り、知らない内に救助や撤去が必要な情報が入る様になる。それらの情報を元に優先度の高そうな場所から順番に片付けた。


 それから5日後俺達は街中の人に感謝されながら村へと帰る事となった。

 ユンボで集めた瓦礫の山は街中に点在しているが後は彼等が自分たちで処理するとの事だ。俺達の活動で助かった人も多くいた。街の人々は魔法の力を知るいい機会になったのかもしれない。これでエルフに手を出す輩が減れば言う事はない。

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