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31話 侵入者

 村の工事は順調に進んでいた。各自が自分の仕事を理解し、俺が指示を出さなくても動き出す様になっている。この状態になると工事のスピードが驚くほど進む。

 そんな時に村の若者が俺達の現場へと足を踏み入れた。どうやらシャトラとライラックに用があるようだ。

 村の状況をみて驚く姿を目にし、密かにドヤ顔を繰り出しほくそ笑む。何故なら今回訪れた若者たちは以前から俺を毛嫌いしていた者達だからだ。俺を嫌っている為に一度も此処にも立ち寄らなかったので、この状況をみて驚きを隠せずにいた。


 その後、何とか正気を取り戻した若者たちはシャトラに近づき何やら話し合っていた。シャトラはライラックを呼び寄せ。今度はライラックも交えて話し合う。


 そして話を終えたシャトラは俺に仕事の中断する事を伝えにくる。

 

「アキノリさん、すみません。何やら森に怪しい一団がやって来ている様なので、彼等と共に警戒作業に付きたいのですが」


「怪しい団体?」


「どうやら人種の一団の様です。この森は人種の里からかなり離れているので、余り人が近づく事は無いのですが…… 何か悪さをする様なら止めなければなりません。仕事を中断し、ご迷惑を掛けます」


「あぁ、それについては構わない。だけど危なく無いのか? 戦闘にでもなれば命の危険もあるんだろ?」


「大丈夫ですよ。森の戦闘で我々が人種に遅れを取る事はありません」


 慎重派のシャトラが珍しく得意げに言ってる、それなら大丈夫だと思いホッと息を吐いた。そうなると今度は興味が湧いてくる。俺はウズウズした気持ちを抑えきれなくなりシャトラに提案を持ちかけた。


「俺も着いて行っていいか? 邪魔はしないから、いいだろ?」


「駄目ですよ、危険です。連れていけません」


「お前、大丈夫って言っただろ? 絶対に迷惑は掛けない」


 それから少しの間押し問答が続いたが、シャトラが折れ、邪魔をしないと言う約束で俺もついて行ける事になった。


----------------------------------


「彼奴等か?」


「ですね」


「これからどうするんだ?」


「今は何もしませんよ。人種達が何をやるのかを観察するんです。もし我々の害になる行動をとる様でしたら、警告から始めます」


 エルフは野蛮な種族では無くて俺でも納得できる様な筋を建てる種族の様だ。


「見直したよ。それは彼奴等も同じか?」


 俺は少し前で陣取りながら様子を伺う若者達に指を指した。


「同じです。我々は戦闘種族では在りません。無闇に戦闘など開始しませんよ」


「エルフって良い奴だな。俺感動したよ」


「何を訳の分からない事を言っているのですか、人種の一団が動き出しましたよ」


 シャトラがそう告げ、俺は再び視線を前に向けた。前方には10名程度の男達が何やら話し合っている。大きな袋を二人がかりで担ぎ何処かへ運んでいる様である。


 俺は一応持ってきた望遠鏡を使い男達の様子を伺った。


(ふむふむ、見た目は俺と同じアジア系だな。みんな黒い髪と俺と同じ肌の色をしている。これなら人種の村に行っても怪しまれる事も無いかもしれないぞ)


 そのまま様子を伺っていると、何やら喋っている様だ。だが距離があり何を言っているのか聞き取れない。興味を奪われた俺は何としても会話を聞きたくなり、シャトラにも内緒で水魔法を使う。


 今回はホース状に加工した水を地面にそって男達の側まで近づけ、先端を草木に紛れる場所でラッパの様に大きく開く。そして俺の方はイヤホンの様にもう一方の先端を耳に取り付けてみた。

 すると男達の話し声がホースを伝って聞こえてくる。


「この辺りでいいだろう。ここは人が入る事の無い樹海の中だ。お前の運命もここ迄だな。恨むなら我々に逆らった自分の強欲を恨め」


 すると袋の中からウーウーと、うめき声が聞こえてくる。どうやら二人がかりで担いでいる袋の中には人が入っているのかもしれない。


 男達はそのまま人が入っている袋を投げ捨てスタスタと人里の方へと帰っていった。こちら側から2名が男達の後を追い、俺達は投げ捨てられた袋の側へと近づいた。


「何だ? 袋が動いているぞ」


 若者のリーダーである。ガロンが指をさした。


「多分人が入っているぞ。どうやらこの森に捨てられたみたいだな。どうするんだ?」


 俺は会話を聞いていた事は伏せたまま、そう答えた。


「チッ、また厄介な物を捨てて行ったもんだ。袋を空けて確認するぞ」


 ガロン達はナイフを取り出し、固く縛られている紐を切り袋をあける。すると中から中年の男性が飛び出した。手足は縛られ口には布が巻かれており、声が出せない状況にされていた。男性は俺達を目にし、必死に何かを訴えようとしている。俺は口に巻かれた布を外す。


「助けて下さい。お願いします。助けてください。私は攫われたのです」


 男は涙目で必死に救助を懇願する。エルフ達はどうでもいい様な感じだが、俺は何故こんな状況になったかが気になっていた。


「どうして、森に捨てられたんだ? 訳を話してくれ」


 俺はしゃがみ込み男性の目線に合わせる。


「私は商店を営んでいるのですが、大きな商店に仲間になれと言われたのです。それを断ったとたんこんな目に……」


「何処にでもありあそうな話しだな。何で断ったんだ? 危険な目になるとは考えなかったのか?」


「メサロ商店はアコギな商売で一般の人達から金を巻き上げています。私が適正な価格で商品を売っているのが邪魔だったんだと思います。私が商人になったのは多くの人達を喜ばせたいから、決して巻き上げたいからでは在りません」


 その言葉は力強く真実味があり、俺は彼の言葉に胸を打たれる。


「おい、シャトラこの人を助けてやってくれないか? 街に帰してやって欲しい」


 俺はシャトラにそう懇願する。


「お願いされなくても、人里の近くまでは運ぶつもりです。私達も知らない者が森を彷徨う位なら街に帰って貰いたいですからね」


 その言葉を聞いて俺は不思議に思う。俺の場合は何故村を追い出されなかったのか?


「俺は何で村を追い出されなかったんだ? 俺も人種だろ?」


 その問に答えたのはガロンだ。少々苛ついている表情をしている、どうやら前から俺に何か言いたかったようだ。


「それは貴様が怪我をしていたからだ、我々も極悪ではない。怪我をした者を追い出す野蛮人と思っていたのか? 怪我が治る前にお前が村に溶け込んでしまったから仕方なく目を瞑っている…… それだけだ、普通ならとっくに村から追い出されているぞ、だから余り偉そうな顔をするな」


 そんな理由で嫌っていたのかと、ガロンの狭量さに失笑しそうになるが、それをグッと堪える。今の生活はかなり楽しい。わざわざ敵を作るのは得策では無い。


「そうか、理由は解った。それじゃ彼も怪我が治るまで村に置いてやってくれないか? もちろん俺の家で休ませるから」


 男性は体中に打撲の後が残っていた。相当痛めつけられたのだろう。そんな男をこのまま放っとく訳にも行かない。


「チッ、また厄介な。 ……仕方ない。村までは目隠しをして連れていくからな」


「あぁ、助かるよ。ガロン、お前って良いやつだな」


「なっ!! 貴様俺をバカにしているのか?」


「本心を言っただけだ。腹が立ったなら取り消すが?」


「もういい。行くぞ」


 ガロンはそう言うと、男性を袋から出した後、目隠しをして手を引きながら村に向かって歩き出した。


 俺は笑みを浮かべ後を追う。

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