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23話 ハイエルフ

 下水道管を設置した俺達は村の造成工事に取り掛かる。今回は正方形の敷地を4等分に区分る。中央に十字の大通りを作り、その大通りから小さな脇道を増やしていく。テナの村の人口で言えば1区画在れば十分なのだが、どうせ工事を行うなら一度にやった方が楽である。今後人口も増える事を考えて大きめに設計していた。

 4区画の中央に一つづつ井戸も作り水源確保も行う。今回は2区画を居住スペースとして家を建てるが残りの2区画は畑にしようと思っている。当初在った木も根こそぎ撤去しているから畑を作るには最適である。


 図面に従い、マーキングを地面に書いた後にユンボで整地を行う。高低差が在る所は法面を作り平坦な区画を幾つも作り上げた。各敷地の境界にはコンクリートを設置し、何処までが自分の土地なのか解るようにしている。区画は大きめに取っているから小さな菜園程度なら作る事が出来るだろう。


「なるほど、この区割りの中では住む人の自由が約束されているって事ですね」


 勉強家のシャトラはメモをとりながら、利点と欠点などを聞いてくる。少し鬱陶しくもあるが、今後の為に俺が思い付く答えを出していった。


 休憩時間をそんな感じで過ごしていると、突然現れたエルフの集団に取り囲まれる。人数は5名程度だがその誰もが烈火の如く怒りを露わにしている。


「お前達一体何のつもりだ!森の木々をこんなに切ってしまうとは!」


 彼等ばかりテナ達と同じ特徴を持つエルフの様だが、今まで一度も見たことないので、違う村の者だろうか?


「俺達はこの場所に新しい村を作っている。ちゃんと村長の依頼を受けてやっているんだがな」


「そんな話は聞いていない。我々に断りもなく森を荒らすな」


「それに無闇に伐採していないぞ、村を作るんだこの程度の広さは必要だ」


「兎に角、これ以上森に手を出すな!止めないなら実力で止める事になるぞ」


5人のエルフは手を突き出し、魔法を放つ態勢をとる。


「アキノリさん、今は彼等の言う事を聞いて下さい。あの者達はハイエルフです」


 威嚇に対応するために体を動かそうとした瞬間、シャトラに肩を掴まれ制止されてしまう。


「ハイエルフがなんだと言うんだ?」


 「とにかくここは私の指示に従って下さい」


 必死で俺を止めるとシャトラは俺を庇う様に移動する。


「私はカマロ村のシャトラ! あなた方の指示通り作業はやめよう。今後村長と共に今回の事を説明をするためにあなた方の村に訪問したい」


「カマロ村のシャトラだな、お前と村長が村に来ることは認めよう。だが他の者は認めない。だが森を傷つけたお前達の罪は大きいぞ、それに反抗的な態度を取った人種の男。お前は村長達が来るまで我々の村に来て貰う」


 ハイエルフ達は俺の周囲を囲み込んだ。


「行く訳が無いだろ。何故俺がお前達に付いていかないと行けないんだ?」


「まだ生意気な口を聞くのか? これだから人種の者達は嫌いなんだ」


 俺が抵抗しようと身動きを取ると、取り囲んだハイエルフ達が呪文を唱えだした。その呪文が耳に入るに連れて、俺の意識は遠のいでいく、そしてそのまま深い眠りに落ちる。

 倒れこむ俺を助けようとライラックやシャトラが手を伸ばしたがハイエルフ達に妨害されていた。

 


-----------------------------


「……うーん、此処は?」


 目を覚ました俺はクラクラする頭を抑えながら周囲を見渡した。何処かの洞穴なのだろうか?天井から壁まで硬い岩で覆われている。鉄で造られた鉄格子が正面にあり、自然の地形を利用して造られた牢屋だろうと推測する。


「やっと起きたか、お前は村長達が来るまで此処で大人しくしてもらう。もし村長達が来なければ野獣の餌になると思っておけ」


 そう告げたのは俺を捕まえた男の一人である。俺は黙って鉄格子に手を掛けてみる。シッカリと地面に打ち付けられていて、かなり頑丈な檻だ。


「土魔法を使っても無駄だぞ。この洞窟は硬い岩で出来ている。だから魔法で加工する事は不可能だ。火や風魔法で鉄格子を切断するのも無理だ。今まで何人もの者達が逃げようと魔法を使ったが逃げれた物は一人もいない。それに俺を魔法で攻撃しようとしても逃げれないお前が後で痛い目を見るので止めた方が利口だ」


「俺はどの位眠っていたんだ?」


「そうだな、丸一日って所だ。仲間の連中が村長を連れてこの村に来るにはもう少し時間が掛かるだろう。それまで大人しくしておく事だ」


 そう告げると、数個の野菜を檻の中へ放り込み洞窟の外へと出て行った。

 俺は投げ込まれた野菜を服で汚れを拭き取り、かぶり付きながら思考を巡らせる。


(さて、どうするか? 彼奴等の言う通り、大人しく待っているのも一つの手だろう。だがそれだと、やられ放しと言う事だろ? それも負けた様で納得出来ない。俺達は何も悪く無い……

 それならどうする? 取り敢えず暗くなったらこの牢屋から一度でるか)


 そう決めた俺は牢屋の仕組みを調べ出す。すると鉄格子の一部に扉が付いており、鍵を使うとその扉が開くとすぐに解る。鍵穴は細長い形状で此処に鍵を挿して回せばいいのだろう。


「これなら何とかなるか? 旧式の錠前って感じか…… 本当に今まで誰も逃げ出すことが出来なかったのか?」


 鍵が在れば誰でも逃げれる。そんな簡単な事も出来ないのか? 簡単すぎて別のトラップでもあるのかと逆に不安になってしまう。

 それから数時間後、日は落ちて周囲は暗闇に包まれる。俺は近くに誰も居ない事を確認すると鉄格子の扉に手を当て水魔法を発動させた。

 今回は水の魔力に土の魔力を混ぜている。そうすると発動させた水を固形化する事が可能だ。

 鍵穴から水魔法で固めた水を引き抜くと鍵の形状が現れた。

 江戸時代に使われていた鍵に近い形状をしてる。やはりこの世界の文明はかなり遅れている。俺は再び鍵穴に鍵を差し込み、時計回りに鍵を回す。


 ガチャン!


 鍵が開く音が響き、扉は手で押すだけでスッと開いた。一応別のトラップが無いか慎重に牢屋から出てみたが特に何もない。


「おいおい、今まで逃げた者が居ないって絶対に嘘だろ?」


 俺はボヤきつつも、誰にも見つからないよう慎重に洞窟から外に出て行く。

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