18話 新しいメンバー
コン、コン、コン
金槌で型枠を叩き解体してみると、正方形の個体が姿をみせる。それは白に近い灰色で表面はセメントの凝固作用で艶があり光を受けて光っていた。
「シャトラ、ライラック。コンクリートを触ってみてくれ」
今、俺達は以前打設したコンクリートの様子を確認している。養生期間もしっかりと取っている為、強度のあるコンクリートに仕上がっている筈だ。
二人はコンクリートを手でさわり、拳骨でコンコンと叩いていた。
「岩のように硬い…… いやこれは岩より硬いかもしれませんね」
「それにだけじゃないぞ。このコンクリートは岩よりも確実に重い。さっきから持ち上げようとしているが、全然動かない」
二人は互いに意見を出し合い、コンクリートを確かめていた。
「このコンクリートってやつは、強度と重量があるんだ。それに好きな形状を作り上げる事ができるから使用出来る用途は多いんだ。たとえば道に敷く事で平坦になり、家屋に使用すれば土台のしっかりとした家が出来上がる。他にも色々あるけど利用方法は数えきれない程あると思う」
俺達がコンクリートについて語っている時にテナが遠くから走ってきていた。
「アキノリさん。ちょっと来て下さい」
どうやらオレの事を呼んでいる様で、テナの元へと駆け寄って行く。
「どうしたんですか?」
「私と一緒に村長さんの所へ来てもらえませんか?」
「俺が村長の所へ? 何か問題でも発生したの?」
「えっと…… 問題では無いんですけど、取り敢えず来て下さい!」
テナは俺の腕をがっしりと掴み逃げれない様にしている。何の用件か解らないが俺はテナに連行される形で村長の家へと向かう。
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村長は椅子に座り何も言葉を発する事無くジッと俺を見ていた。俺の隣にはテナが立ち俺が逃げられない様に今だ腕を掴んでいる。
「一体どうしたんですか? 用件が在るなら言って下さい」
俺の言葉を受け大きくため息をつくと村長はゆっくりと語り出す。
「そろそろ、本当の事を聞かせて貰えんか? お主は記憶が無いと言っておったが全部ウソであろう。シャトラ達と作っているコンクリートと言う物体。そしてキロ村での救助活動時にお主が作らせたユンボと言う巨大な道具。記憶が無い者がやる事ではない」
(やり過ぎた!! 好き勝手やっていたら、いつかそうなるとは思っていたけど…… さて、どう答えるべきか……)
「アキノリさん、本当の事を教えて下さい。私はアキノリさんが悪い人とは思っていません。だけどウソをつかれたままは嫌です」
掴んでいる手に力が入ってくる。テナは俺を助けてくれた人、彼女にウソを付くのは流石に胸が痛む。
そう考えた俺は信じて貰えなくても正直に話す決心つけた。
「じゃあ正直に話しますがきっと信じて貰えないと思う。俺はもっと文明が発達した世界からやって来た…… いや飛ばされたのかな? どうやって来たのかは解らないけど、気づいた時にはこの世界に来ていたんだ。テナに助けて貰わなければきっと死んでいたかもしれない。これは本当の事です」
「文明の発達した世界? 人種の街の事をいっておるのか?」
「人種の街がどれだけ発達しているかは解らないが、きっと村長達が想像も出来ない程に進んだ世界……」
(こんな話、信じて貰えないな)
俺がボヤいていると、テナが掴んでいた手を離し村長に告げた。
「アキノリさんはウソを言っていません。魔力で調べてみましたが、体温や心拍の上昇もありませんでした。アキノリさん、ごめんなさい。私ずっと魔力を使ってアキノリさんがウソを言っているか調べていたの…… 本当はこんな事したくなかったんだけど……」
「そうか…… 今の話は本当なのじゃな! テナはワシが指示を出して調べさせたんじゃ。テナを悪く思わないで欲しい。ワシは村長としてこの村を守らねばならない。アキノリがどのような理由でこの村へ来たのか知らねばならんかったのじゃ」
「村長が俺も疑うのも理解出来るし当然の事です。だけど俺はテナやこの村に感謝こそすれど、迷惑を掛けるつもりは全くありません。元の世界に戻れる方法も解らない今となっては、早く新しい村を作りたくてウズウズしてる位です」
アゴを指でなぞりながら考えていた村長は決心した様に俺に告げる。
「うむ、お主が嘘を言っていないのは理解した。そうじゃな村の件は引き続きお主に任せるとしよう…… お主が言っておる文明の進んだ村ってやつをワシ達にも見せてくれ。それとこの事はこの場にいる者達だけの秘密としておこう…… その方がいいかもしれん」
「ご配慮感謝します」
これで胸のつかえも無くなり、俺は村長の家を後にする。
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「怒ってますか? 怒ってますよね? 本当にごめんなさい……」
「怒ってないって。逆に助けて貰って感謝してるから」
帰り道、何度も謝ってくるテナを宥めているがテナの表情は暗い。
村長の命令とはいえテナに取って疑うと言う行為は相当応えているのだろう。
(本当に素直な人だな。でもこれは参ったなどう言えば気持ちを切り替えてくれるのだろうか?)
考えながら歩いていると、ある妙案を思いつく。
「テナの気が収まらないなら、村を作る手伝いをしてくれ。結構疲れる事もあるかもしれないけどそれで許すよ。どう?」
「私、やります。何でも言って下さい」
両手をギュっと握り胸の前でガッツポーズの様な構えを取り、やる気を見せている。こんな事で気が紛れれば儲けものである。
「だけど辛くて途中で弱音を吐くかもな」
「私、結構力あるんですよ。見てくださいこの腕を」
そう言いながら力こぶを作るポーズで力んでいるが、全然力こぶなど見つからない。でもそんな状況が可笑しくてつい吹き出してしまった。
「何故笑っているのですか!! ちゃんと見て下さい」
憤慨するテナは先程までの落ち込みようなど見る影もない。どうやら作戦は成功の様だ。
新たなメンバーを増やした俺は、待ってくれているシャトラとライラックの元へと向う。




