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15話 地崩れ

 土砂崩れを遅らせる方法として、まずは何故土砂崩れが起こるかを思い返す。今回の場合は今も降り続いている雨が原因で間違いないだろう。大量の雨が地中深く浸透し、雨水が地中で水流を作り土同士の結合が弱くなり土砂崩れが起こっている。


(ならば、地中の排水作業を行えば多少は進行を遅らせる事が出来るかもしれない)


 試しに俺は両手を地面の亀裂部分に当て魔力を流し込む。魔力を地中深く流し込むと10m程度下がった所で水が流れている予想通りの結果であった。俺はそのまま水を亀裂まで引き上げ俺達が登ってきた斜面へと流していく。


 ポンプで水を汲み取るイメージだ。俺の作業を見てケイブは何をやっているのか理解できておらず。俺を見つめながら呆気にとられている。


「ケイブは早く村人の誘導へ向かうんだ。この地盤はいつ崩れるか俺にも分からない」


「まぁ、待ってくれその役目はノエルに任せている。アイツは風魔法が使えるから俺よりも速く動けるんだ。最初は遠声の魔法で下に呼びかけていたが、誰も気づかないみたいで直接伝えると言いながら少し前に村へと向かってる。俺はあんたを無事に連れ戻す為に残っているんだが、それでアンタ何やってるんだ?」


「今回の土砂崩れは今も降り続いている大雨が原因なのは分かるか? だから地中の雨水を取り除いているんだよ」


「雨が原因で崩れたのか?」


(予想していたけどケイブ達は解って居なかったか……)


 今後の事もあるので俺は簡単に説明を始めた。だが俺の説明を聞いてもケイブは理解してくれず。俺は途中で説明をやめてしまう。


「とにかくだ。俺が水を出す事で土砂崩れが発生する間での時間を稼いでいるんだよ」


「土砂崩れは絶対に発生するのか?」


「多分な…… 俺も危なくなったら避難するからお前もこの場所から離れていてくれ」


「アンタが此処にいるのに俺だけ安全な場所には行けないな。俺には何も出来ないかもしれないが、土砂崩れが起きた時にアンタの腕を掴みコッチ側へ放り投げる事は出来る。だから俺は此処にいるよ」


 俺が先程真似したポーズを取り、ケイブはニコリを笑みを見せた。


「それじゃ、その時はケイブに助けて貰うよ」


 それだけ言うと俺は再び作業に意識を向ける。今の俺の額には大量の汗がにじみ出ていた。

 亀裂全体に魔力を土中に流し土中で溜まっている水を汲み上げているのだが、低い所から高い所へと重力に逆らいながら、更にずっと止めることなく続けていると今まで体験した事も無いほど急激に魔力が無くなっていく。


(このままじゃ、長い時間は持たない…… 何か手を考えないと駄目だ。何かいい考えは…… 今の状況は…… 一度やってみるか)


 俺は排水作業を続けたまま、魔力の操作を始めた。現在亀裂部分から排水される雨水は亀裂部分から斜面に向けて飛び出す様に排出しているがそれが少しづつ規則正しく流れだす。


「おっ。さっきと水の流れ方が変わった…… アンタ何かやったのか?」


 俺のが細工した事に気づいたケイブはそう呟いた。


「気づいたか? 今は水を自動で排水する仕掛けを作ってみたんだ。全部自分ひとりでやると流石に辛くてな。今は地中の一箇所に浸透した水を集めるだけだからかなり楽になっている」


「自動で排水させているって? 魔法も使わずにか?」


「流石に全く魔法を使っていない訳じゃ無いが、今はかなり魔力消費を抑えいる事が出来てるよ」


「これだけの水量を操作しているのに魔力を抑える事が出来るのか? アンタ一体何者なんだよ」


 亀裂からは太長く丸いロープの形状の物が何本も亀裂から出ており、それが斜面の下の方まで伸びているそのロープ状の物自体が雨水で出来ている事は見て分かるだろう。


 俺は今回サイフォンと言う原理を利用して排水する事を思いついた。サイフォンとは灯油やガソリン缶、又は醤油の一升瓶などの大きな容器から小さい容器へ中の液体を移す時によく使われているシュポシュポの原理である。

 あれは一度シュポシュポの中を液体で一杯にし、元の容器を高く、移したい容器を低い場所に接地する事で液体が高い場所から低い場所へ流れる時の力を利用して液体を吸い出のだが、今回はホースの代わりに雨水でホースを作った。最初だけ魔力で雨水を吸い出してやれば後はホースを維持するだけで雨水を吸い出してくれる。

 途中で空気が噛まない様に周囲の雨水を魔力で一箇所に集めて置けばいい。

 この方が魔力消費が少なく長時間排水作業が出来る筈である。


「一応排水は続けるが、後はどの程度この山が持ってくれるかは本当に解らない。ケイブ崩れだしたら頼む」


「あぁ、その件は俺に任せてくれ」


 その後数時間に渡り排水作業を続けていると、突然地面が小さく振動を始めた。もうすぐ崩れるのかもしれない。下にいた者達は避難しているだろうか?


 そんな事を考えている間に振動は大きくなって行き、気づいた時にはケイブが俺の腕をガッシリとつかみ肩に担ぐと大きくジャンプを行う。その力は強く俺を担いだまま大きく飛んでいる。そして亀裂から数m先で着地を行い大きな木をしっかりと握り体を固定した。


ゴゴゴゴーー


 大きな音と共に亀裂から先が木や岩ごと村の方へと崩れていく。今回は前回よりかなり大きく自然災害の怖さを実感する。


「アンタの言う通りだ。本当に崩れた。だけどアンタのお陰で下の者達は避難しているだろう。心から感謝する」


「お礼を聞くのは村に戻って皆の安全を確認してからにしよう。急いで戻ろう」


「あぁ、そうだな村へ戻ろう。それとこの礼は必ず返す絶対にだ!」


 それから俺達は登ってきた道を急いで戻っていった。

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