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14話 2次災害

 土魔法で土砂をブロック状に固めて強化魔法で移動させる者や土砂を操りそのまま撤去して行く者など、人によって作業方法は様々だ。俺達が加わって総勢10名の土魔法の使い手が土砂の撤去作業を行っているが、10才には順調とは言えない状況であった。

 土魔法で土を動かす事は出来るのだが一度で動かせる量は人によって違いがあるみたいだ。魔力の量などの関係だろうか? そんな事よりも重大な事は土魔法で動かせる量は意外と少ない。

 

 俺が水魔法で動かせる最大量は今の段階で125t位だろう。体積で言えば縦5m横5m高さ5mの立方体だ。一度どれ位の水を操作できるか試した結果がそれであった。だがその大きさは自分のすぐ側での話で、自分の位置から離れていくに連れてその量も減少していく。


 今回、土魔法で動かしている土砂の量はその1/5程度位で、重さに換算すれば2t程度。属性が違うと言う事もあるだろうが、今の作業速度では土砂の撤去に数日間必要だろう。もしまだ生きている者がいればそれまで頑張れるか不安になって来る。


(急いだ方が良いに決っている…… 何かいい方法は無いのか?)


 眉に手を当て考えたが、俺はまだ水魔法しか使えない。そんな俺が口を出してもみんな気を悪くしてしまうだろう、そうなった場合に効率が悪くなるかもしれない。

 そう結論付けると、周囲を見渡し現状で自分が出来る事をしようと決めた。


(一度、崩れた場所を見ておくか? 大丈夫だとは思うけど再度崩れたりすれば、2次災害が起こってしまう)


 そう決めた俺はリーダーの元へと駆け出して行った。


「すみません」


「何だ? 今は忙しいんだぞ」


 振り続ける雨に打たれながらリーダーは必死で土魔法を使い作業をしている。


「一度崩れた崖に行って様子を確認した方がいいと思うんですが…… また土砂崩れが起こればここに居る者全てが巻き込まれるかもしれない」


「何だと!? また崩れるのか?」


「それは…… 解りませんが、その確認の為にも」


 リーダーは一度作業をやめて崖の方に視線を向けていた。雨の勢いは衰える事も無く降り続けている。


「そうだな…… その方がいいかもしれない。 何か在った場合すぐに連絡が取れる様に風属性の使い手も居る方がいいだろう。生憎俺達には風魔法使いは居ないからこの村の村長に聞いてみてくれ。俺からそう指示を受けたと言えば協力してくれるだろう」


「解りました」


 この村の村長は俺達が村に到着した際にお礼を言いに来てくれていた。今は救助された村人が休む家屋にいる俺はその場所へと急いだ。


 家屋の扉を開くと室内には多くのけが人が治療をうけていた。

 回復魔法が使えるテナ達はここで活動をしている。俺はテナを見つけ村長が何処にいるのかを尋ねた。


「村長さんなら奥の部屋にいますよ」


「ありがとう、テナも頑張って!」


 テナに教えて貰った部屋の前で立ち止まり、ドアをノックをすると部屋の中からどうぞと言う声が聞こえた。

 

「失礼します。カルラ村の者ですが、ご相談がありまして」


「今回のご助力感謝いたします。それで何か問題でも発生致しましたか?」


 村長は白髪の老人であったが、背筋はピンと伸び活力が見て取れた。村長と側に2名の若者が俺に視線を向けている。


「一度崩れた崖を調査した方がいいと言う事になりまして、もし良ければ風魔法が使える人に同行をお願いしたいのですが」


「崖を調査…… 我々も崩れた際に混乱したまま、一度も崖を見に行っていない。再度崩れた場合はあなた方達も被害に遭うかもしれん…… 解りました。 丁度そばにいるノエルは風魔法が使えます。遠声の魔法も使えますので連れて行って下さい」


「助かります」


 二人の若者の内左の青年が俺に頭を下げてくる。青い髪でメガネを掛けている彼がノエルだろう。


「親父、ノエルだけってのはズルいんじゃねーのか? 俺だって村の為に手伝いたいって言う気持ちは同じだぜ。土魔法を使えないから救助活動では足手まといだが。調査に出るなら俺も同行させてくれ」


「それは認められない…… ケイブ、お前は火属性だろ? こんな雨の中で彼に付いて行ったって迷惑になるだけだ」


「そんな事ねーよ。あの森は俺の庭で近道や歩き易い道をしっているし、野獣が出た時とかは剣と弓で守ることだって出来る。 アンタもそう思うだろ?」


 ケイブと呼ばれる青年は俺を見てそう言った。村長の事を親父と呼んでいる事から息子なんだろう。


「まぁ、2人より3人の方が不足の事態には有利かもしれないけど……」


「おっ! 話が分かるじゃねーか。親父聞いただろ? 俺は行くからな」


「まったく…… 一度言い出したら言う事を聞かん奴じゃ。ならばお前はこの方の指示に従う事を約束するんじゃ」


「あぁ、森の木に誓って約束するぜ」


 そう言いながら俺に向かって親指を立てる。筋肉に身を包まれた熱い男だ。

 その後俺達はポンチョを着こみ、ケイブに先導して貰いながら崩れた山を登りだす。雨でぬかるんだ傾斜の地面は滑って歩き辛く木や枝を手すり代わりに持ちながら進んでいく。

 ケイブやノエルは日頃からこの辺りで狩りをしてるらしく、迷うこと無く突き進んでいた。


「アキノリさん、もうすぐ着くぜ」


 山に入ってから3時間、晴れた日ならもっと短い時間でこれるだろう。ケイブが声を掛けた所から斜面が平地に変わっていた。彼の言う通り、この辺りが頂上なのだろう。

 緩やかな傾斜の頂上を20分程度進むと地面に亀裂を見つけた。亀裂を堺に15cm程度の段差があるようだ。俺はしゃがんでその亀裂を見つめる。


(これは危険かもしれない。確か土砂崩れって2種類あった筈。確か山の表面が水に流されて土石流となって起こる物と地層の深い所で水が貯まり上の土を崩してしまう深層型…… この亀裂って深層型の前兆じゃないのか?)


 地面を見ていた視線を前方に戻すと数十m先で土が抉れているのが見えた。どうやら一度目はあの場所辺りから崩れたのだろう。すると今度は俺が今いる場所から崩れる。


「ヤバイぞ! この亀裂からもう一度土砂崩れが起こる可能性が高い。すぐに下に居る人達に連絡を取らないと!!」


 俺はケイブとノエルにそう叫んでいた。 

ノエルは直ぐに風魔法を使い声を下に届けようと動きだしケイブは俺の側に近づく。


「ケイブは直ぐに村へと戻り、皆を避難させてくれ。前回よりも大量の土砂が崩れるぞ」


「あぁ、解った。でもアンタはどうするんだ?」


「少しでも崩れるのを防いでみるつもりだ」


そう告げるとケイブを真似して親指を立てて見せた。

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