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13話 救助へ

 村長は村中の土魔法使いに招集をかける為に家を飛び出した。小さな村だけに土属性の魔法を扱える者の数も少なく、救助に向う事が出来る体力のある大人だけを選別するとの事だ。

 その結果土魔法が使える者6名のと回復魔法が使える者3名そして最後に俺が加わり、合計10名者達が今回の救出メンバーと決定した。

 

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 雨よけのポンチョを着用し、急ぎ足で俺達は目的地へと向う。先頭にはこの村に掛け込んできたエルフが先導してくれている。まだ傷も癒えていない為に、時代劇とかでよく見た人を運ぶ籠に載せてもらい運搬されている状態でその籠の横にはテナが付き添っていた。

 

 急ぎたいが雨の勢いは強く進む速度も遅く体に掛かる負担も倍増する。だが誰一人として愚痴を言う者などいない。誰もが必死で足を動かし続けていた。


「シャトラ、土砂崩れとかはよく発生するのか?」


「偶にそう言う話も耳に入りますが普通はそう言う危険な場所に村を作る事はないので……」


「何か理由でも在るのかもしれないな。取り敢えず救助は時間との戦いになると思う。急ごう」


 シャトラも土魔法を使えるので今回のメンバーに入っている。俺は他のエルフ達とは余り話した事も無い為、俺は気心しれたシャトラの隣を並走する。

その後3時間程度移動した場所で一度休憩に入る事となった。相変わらず雨は振り続いているが、ここに居る者達は半分以上が土魔法の使い手なので即座に雨を凌げる土の小屋を魔法で作り上げる。


「今日はここ迄だな。辺りも暗くなってきているし、雨の中これ以上進むのは危険だろう」


 救助メンバーの中で一番年長となる男がそう声を上げる。今回は彼がリーダーに選ばれていた。彼が先程提案した事に俺も異論はない。夜になると街灯などの照明が存在しないこの世界は暗闇に包まれる。月夜や夜星が輝く時ならば少しは見えるが、今日の様な空が雲に覆われた時には漆黒の闇へと姿を変えてしまう。


 彼の言葉を受けて反論する者は現れずにその日はそのまま魔法で作った小屋で一夜を過ごす事となった。

ポンチョを着ていても大量の雨に打たれると雨が染み込み体がずぶ濡れになってしまう。一応布なども持ってきていたが、出来る事なら現地で救助した人達に使いたい。その気持は皆同じようで誰も使おうとはしなかった。


(ヤバイな、このままじゃ皆風邪をひいてしまうぞ。救助する頃にはこちらの方にも要救助者が発生するかもしれない…… それならアレを一度試してみるか)

 

 俺は立ち上がるとシャトラの背中へと回る。シャトラは何事かと振り返って俺を見ていたが気にせずにシャトラの背中に手を当てた。


「アキノリさん、一体何をする……」


「まぁ、見ていてくれ。悪い様にはしないから」


 そして手を通して魔力をシャトラへと流し込む、だが体内に魔力を流すのではなく表面を走らせ水分を集める。最後は足先から集めた水分を地面に流したら終わりであった。


「凄い、体が乾いている……」


「表面の水分を集めたんだ。これなら布を使わずに体を乾かす事ができるだろ?」


 俺達のやり取りを見ていた者達も順次声を上げていく。彼達の要望を受けて俺は順番に彼等を乾かしていった。


「アキノリさん私もお願いします……」


 そう告げてきたのはテナだ。俺は了解し彼女の背後に回ると背中に手を当てる、手のひらから伝わる柔らかい感触と温かい温もりを感じてドキドキしてしまう。


(イカンイカン。煩悩滅却!!)


 そう心で何度も呟きながらテナの体を乾かしていった。


「有難うございます」


「いえこちらこそ有り難うございました」


「えっ? アキノリさん何のお礼ですか?」


 つい本音が零れてしまった。何とか誤魔化せたがかなり焦ってしまった。まぁこれで全員風邪を引く事も無いだろう。その後皆、眠りに付いたが俺は興奮が醒めず一向に眠れなかった。



---------------------------------


 早朝から出発して丁度昼を回った位に先頭の男が大きな声をだした。どうやら目的地の直ぐ側まで来ているのだろう。雨は今日も降っており彼の村へ近づくに連れて勢いをましている。この地は雨が振りやすい地形なのかもしれない。


「この林を抜けた先が村だ皆急いでくれ」


 嘆きの声を上げながらそう訴えてくる。その表情を見るだけで心が痛む、誰もが速度を上げてながら林を抜けてゆく。

 それから数十分後林の先で怒号の声が飛び交っていた。どうやら土砂崩れに巻き込まれなかった者達が既に救助活動をしている様で様々な場所から応援を呼ぶ声が響き続けていた。


「これは酷い…… 予想を絶する状況じゃないか……」


 林を一番に抜けたリーダーのエルフがそう呟く。後方の俺達も彼に遅れながらも林を抜けた瞬間に言葉を失う。


 目の前に広がる光景は、凄まじく村の半分まで土砂が押し寄せて家屋をなぎ倒していた。

 この村は周囲を山に囲まれており、崩れた山は急傾斜地になっている。今回の雨でどうやらその一部が崩れてしまった様だが、崩れた先を見るにそれは急傾斜地のほんの一部が崩れただけであった。

 急傾斜の頂上は村からゆうに30m以上も高い頂上付近が崩れただけでかなりの勢いで土砂が襲ってくる筈だ。

 それに必死に土を掘り起こし仲間を探すエルフ達の表情も生気がなく疲れが見えている。何日も休まず作業を続けていたのだろう。これは早急に手助けする必要があると思えた。


「今から俺達も作業に掛かるぞ、土魔法で土砂を移動させろ。村人を救助したら直ぐに回復魔法が使える者の元へ連れて行くんだ」


 リーダーの指示を受けて俺達は土砂の側で懸命に救助活動を行う村人の元へと駆け出していった。

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