姉の存在
暗殺計画─planⅠ─
[刺殺]
姉というのは、邪魔な生き物である。
姉妹だからと同じ所を探られ、他人に比較される。
俺の評価が悪ければ、それは『妹』だからと、そんな言葉で片付けられる。
世の中理不尽で、不条理で、だから俺は姉の《暗殺》を企てる事にした。
勉強も運動も人気も上な姉に勝てるのは、もうこれしか──ない。
俺は手頃なナイフを持って、姉の居る教室へと向かう。
周りに見付からないように、細心の注意を払っては姉が出て来るのを待つ。
姉はクラスの友達と楽しそうに話していて、憎らしく思う。
俺には仲良くしてくれる友達なんて……いや、そもそも話し掛けてくる奴すら居ない。
包帯の巻かれた左半分の顔を隠しているから──。
姉が席を立ち、開かれた扉と廊下の境界線から足を踏み込んで出て来るまで、息を潜める。
精神を集中させ、ナイフを片手にジッとして獲物を待つ。
そう、それは……弱者を全力で狩る虎の如く──!
「(今だ──!)」
足に力を入れて憎き姉に襲いかかった。
「あ、何か落ちてるわ」
「え」
そんなこと言って姉のクロは、落ちてる物を拾う為にしゃがみ込んだ。
俺は勢いが良くて急に止まる事なんて出来なくて、そのまましゃがんだ姉の背中に足を躓かせ、顔から地面へとダイブした。
「あら、小銭かと思ったけれど、ただのゴミだわ。ゴミはゴミ箱へ」
背中とは言え、全力で駆けた俺の足にぶつかってリアクションのない姉、クロ。
ゴミをやたらに強調するその様は、確信犯である事は間違いなく、絶対に俺の存在を知っていての事だ。
その腹黒さは、名前の通りに──黒い。
「絶対に殺してやる……っ」
顔面キスをしながら倒れる俺は、そう頑なに誓うのだった。