もう一つの可能性
僕らは四階への階段を上っていた。
「ねえ、樹君?」
「どうした?」
星野が突然声をかけてくる。
相変わらず緊張感のない声だ。
「さっき死神から逃げたとき、こっちの校舎には死神は来なかったよね?」
「そうだな、それが?」
「いや、だったらこの北校舎には今死神はいないんじゃないかなって思ってさ」
確かにそうだ。
さっき北校舎へ逃げ込んですぐに後ろを確認したが、その時にはもう追って来てはいなかった。
「だとすれば今はこの校舎を調べるチャンスってことだな」
「じゃあ今は周りを警戒する必要は無いのね?」
咲宮がほっとした様子で星野に尋ねる。
「それはどうかな、実はもう一つ可能性があってね…」
そこまで話した時、四階の廊下へたどり着いた。
そして廊下に目をやった時。
「…えーと、つまり俺が言いたかったもう一つの可能性って言うのはね…」
「…もしかしたらあれ以外にも…死神がいるかもってこと?」
「もしかしなくても正解みたいだな…」
僕らの視線の先にいたのは、巨大な黒い何か。
二本足で立ち、目は顔中にある。
口にはやはり歯が並んでおり、腕には鋭い爪がついている。
あの死神とは形が違うが見た瞬間に理解した。
間違いなくこれも『死神』であると。
「アァ…肉…に…く…!」
「逃げるぞ!」
「何なんなのよもう!」
「俺、何かフラグでも踏んだかなあ!?」
僕らは上ってきた階段をダッシュで駆け下りた。




