表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第5話

 さっき遠吠えした狼に違いない、すぐに三匹の狼が目の前に現れた。

「ガエルドじゃないか。イノシシが沢山こっちの尾根にいるって聞いてきたんだが、見なかったか?」

真ん中の灰色の毛色の狼がガエルドに言った。

「お前達か、狼のくせにいつも群れて狩をしているなんて情けない奴らだな。」

ガエルドは真正面から三匹の狼達をにらんで言った。隙があれば自分からミーシアを横取りしようとしているのが判ったからだった。ミーシアは四匹もの狼に囲まれている事になる。

もう生きてお父さんやお母さんの顔を見ることは出来ないだろうと思った。

ここで、狼達の獲物として一生を終わるのだ。

一瞬でも気を緩めたらこうなると肝に銘じておかなくてはならなかったのだ。

そのとき、ガエルドがミーシアを押さえた腕を少し緩めた。

目の前の三匹もいる狼達に気を取られているのは明らかだ。

狼達はガエルドから獲物を横取りする気だが、ミーシアの目の前に生きるための道が開けた。

いまならガエルドから逃げる事ができるかもしれない。ミーシアは力いっぱいガエルドの足を払いのけた。

ガエルドが少しよろめいた隙にミーシアは走り出した。

だが、直ぐに先ほどの灰色の狼がミ-シアの前に回りこんだ。

なんて素早い動き。ガエルドよりもさらに足の速い狼だった。追いつめられたミーシアは灰色の狼にも同じように押さえつけられた。ガエルドほどではないが、頑丈な前足だった。

「ガエルド、悪いが俺達がこの狐を貰うぞ」

またもやミーシアは身動きが取れなくなった。容赦なく力いっぱい押さえられてもう決して抜け出せそうにはなかった。

「俺の獲物を横取りするのはやめてもらおう」

ガエルドが言った。「お前達が子供の頃に俺が狩りを一から教えてやったのを忘れたのか?恩知らずな奴らだな」

ガエルドがつめ寄った。ミーシアを押さえつけた狼とは別の二匹が、ガエルドの行く手を塞いだ。

「そもそも、この山で一番強い狼はこのガエルドだ。俺に勝てると思っているのか。」

狼達が言う。 「ガエルドが強かったのは昔の話しだ。怪我をして狩も満足に出来ない狼なんか怖くないぞ」

その言葉が終わるのも待たずにガエルドは二匹の狼に飛び掛った。

狼同士の戦いだった。

二匹の狼のは動きは速かったが、ガエルドの飛び掛るタイミングに隙を付かれて逃げ遅れた。

まず一匹が腹をかみつかれた、悲鳴を上げたのは耳の毛が赤い狼。

今度は、もう一匹がガエルドに襲い掛かる。ガエルドは牙を離すと後ろ足で蹴り飛ばした。

もう一匹は背中に青い毛が生えた青毛の狼だった。

ガエルドは躊躇することなく体を捻って向き直ると、青毛の狼に飛び掛り力いっぱい爪で引っかいた。

ギャッと青毛が転げまわった。ミーシアを押さえている灰色の毛の狼もこれを見てぐぅと唸らずにいられなかった。

今度は、赤毛の狼がガエルドの左後ろから噛み付いた。

ガエルドは特に左側が見えないのを知っているかのようだった。そして、青毛もガエルドに噛み付いた。

二匹の狼に食いつかれてガエルドは腹と首から血を流しながら、その二匹を振り払おうと暴れた。

嵐に打たれて地面に押さえつけられ横倒しになる木々のように、狼たちはあまりの力と迫力に吹き飛ばされて行った。

ガエルドは血だらけだが、二匹の狼を睨み付けながらゆっくりと灰色毛の狼と捕まっているミーシアの方に歩いてきた。

灰色毛は、それをみて尻尾を下げた。そしてミーシアを押さえつけていた足を離して仲間の二匹に言った。

「向こうに猪が沢山いるらしい、そっちを追いかけるぞ」

赤毛も青毛もその場からまるで兎のように飛び出してミーシアとガエルドの前からいなくなった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ