空耳ですか?いいえ現実。
やまびこMAX店内。
「今日の晩御飯のメニューは?」
「(いろいろ疲れたのでお手軽な)カレーです」
「俺ポークカレー好き。あ、今日豚安いみたいだよ」
「そうみたいですね」
「……ふふっ、何かこうしていると夫婦みたいだね」
背中がゾッとした。
今日の佐々良氏の言動を省みての寒気にプラスされて、周りの方々(あれ?女性に交じって男性もいる気がする)からの視線が痛すぎる。
すごい理解はできますよ。他の人とは明らかに違うオーラを放っている美形が頬を若干赤らめて見つめている相手ってのが、醜いおでぶちゃんなんですもの。そりゃあなんでてめぇが、ってなりますよね。わかります。あなた方の気持ちはすごくわかるのですが、佐々良氏の気持ちがさっぱりなもんで。どうしようもないんですよ。ヘルプミー。
「美保菜ちゃん、ポイントカード持ってる?」
「へっ!?あ、はい」
財布からオレンジ色のやまびこMAXのカードを取り出す。すると佐々良氏はそれを私の手から抜き去り、レジのおばちゃんに差し出した。
って、レジ!?
籠の中にはちゃんとカレーの材料が入っている。
いつの間に入れて、しかもレジに並んでいたんだ。
どれだけの間視線から逃れるべく現実逃避していたのだ自分。
「はい、ありがとう」
「わっ、あの、いくらでしたか。ちゃんと払います」
「いいよ。どうせ俺も食べるんだし」
「……」
え?今なんて?
さりげなく名前呼び。