よぎる不安
みじかいよ
「どうしても?」
「どうしても!」
甘えるように上目遣いで見てくる佐々良氏を振り切って、玄関へ向かう。
靴を履いている間もずっとどこかしらを触ってくる。さっきからずっとこうなのだ。私の唇をあっさり奪ったかと思ったら、再び私を腕の中に入れて、ずっと私の全身を弄っている。
最初は抵抗していたものの、力が抜けきった私の抵抗など微々たるもので。諦めの境地に入りました。はい。
それに、何と言うか……いやらしい感じ?もなかった、と言うか。
接吻以外は、大型の動物に接しているような感じだったんですよね。うん、私大型動物。
しかし、日も暮れてきてそろそろ帰りたいと思い始めたときでした。佐々良氏はとんでもないことを言い始めたのです。
「今日、泊っていくよね?」
どうして既に決まっていることを確認する感じなのかな?
それまでのペットへ向けたような眼差しが隠れ、少し怪しい色が見え始めた。さらに手つきも怪しい動きをし始めた。流石の私でも、まだ完全に佐々良氏の言う私への好意を信用しきっていない私でも、これには危機を察知した。
と、いうことで、キャラが完全に崩壊した佐々良氏を振り切っていざ日常へ!
「って何で居るのですか佐々良さん!」
さようなら非日常、ただいま日常!ってな感じで佐々良氏の自宅から意気揚揚と出てきたのに。
何故非日常の主な原因である佐々良氏がすぐ横に居るんだ!
「何でって、神崎さんが心配だからだよ。」
「心配なさらなくても大丈夫です」
「ちゃんと自宅まで送り届けるから安心して」
……なんか不安になってきた。