公衆の面前で
だいぶ更新が遅れてしまいましたすみません
そしてこの短さ…重ねてすみません
朝の満員電車。通勤するサラリーマン・ウーマンがぎゅうぎゅうと詰め込まれた電車は、おデブちゃんにとってはとても心苦しいものでもある。
既にキツキツな電車内に入ろうとすると、お前みたいなのは乗る資格など無い!と言わんばかりの痛い視線は、何度浴びせられても慣れぬものである。
混雑が和らぐ時間帯を狙おうとしても、朝が弱い私には長続きすることが出来ない。今流行りの自転車通勤をしようにも、会社に着く頃には体力は皆無に等しい状態になっていて仕事にならない。
まあそんなわけで、朝はとても憂鬱なのですが……。
「……」
「ん?どうしたの、美保菜。俺の顔に何か付いている?」
なんやかんやで結局日曜日も私の部屋に居座って、共に出勤することになった佐々良氏。
その佐々良氏は、この満員電車の中でドアに背中を預けている私を囲うように、私の顔の両脇にその両手を付いている。そう、少女漫画とかで見たことがある人もいるであろう、アレだ。
か弱くて、今にも折れてしまいそうな華奢な身体を、押しつぶされそうなヒロインの身体を守るために、学校の王子さまであるヒーローが身体を張って行うアレだ。
それを何故か私がしてもらっているという不思議。普通逆だろう。肉弾壁として活躍するであろう私が守られる対象に居ることはちゃんちゃら可笑しい。
私の考えは決して間違っていないはずだ。何故なら周りの人もとても不思議そうな顔をして私たちをチラチラと見ているのだ。
うう、普段とは違う視線だが、やはり嫌だ。私は視線から逃げる為に顔を俯かせた。
残念ながら、私はこの状態がとても隙だらけであるということに、気付いていなかった。
俯いて、出来る限り身体を縮めて(私の出来る限りなので他者から見た場合完全に大きいとは思いますがどうぞ寛大な心でもって見てください)いる私を、悪魔(変態)は見逃さずに捉える。
ぱくっ
「ひっ」
何と変態佐々良氏は、私の耳をその唇で食むという変態行為をこの満員電車でやってのけたのだ!
固まる私と、周りに居てチラチラと私たちを見ていた一部の人々。
それにも構わずに佐々良氏は私の耳を食むのを止めて、しかしその距離はとても近いままで囁く。
「美保菜のこと食べたい……今日は僕の家にしようか」
不吉な言葉を聞いて固まる私は、丁度降りる駅だったようで佐々良氏に引きずられるように降りた。入口を見ると、私同様固まった数人とそれを迷惑そうに且つ不思議そうに見る人たちが。
ああ、ごめんなさい。無駄に太ましいこと以外に私に非はないと思いますが、この変態に代わって謝らせていただきます。
大変申し訳ございませんでした。
本当は佐々良氏視点を入れたかったんですが全く筆が進まずに挫折しました……無念。