プロローグ
完全見切り発車小説
続くのかもわからない
自己満足小説
今、私こと神崎 美保菜は会社の飲み会の席に居る。
私が所属する総務課と、営業課の合同飲み会である。何故この二つの部なのかと言うと、課長同士の仲が良いからである。それだけ。
営業課は言わずもがな花形部署であり、そしてそこの社員の方々も男女問わず魅力的な人が多い。
特に営業課の過半数を占める男性陣は、それはもうおモテになる。見た目が良い人も多く、また若手の独身者は将来有望でもある。
定期的に行われているこの飲み会がきっかけで結婚に至った総務課と営業課のカップルがいたという前例もあり、総務課の肉食系女子は気合い入れまくりでこの会に参加している。
今も営業課の若手を総務課の女性が取り囲むようになっていて、皆さん楽しそうに盛り上がっている。
営業部の中でも一番人気があるのは佐々良 暦、26歳だ。整った優しそうな顔立ちで、柔らかそうな茶髪。身長は高く、またスポーツをやっていたらしく体つきも良い。さらに性格は温厚で、皆に優しい。これでもかと言うほどに少女漫画的ヒーローの要素を盛り込んだ人を、私は彼以外知らない。現在何故か彼女がいないらしくて、今も彼の周りには女子が犇めいている。流石に彼も、疲れを隠せないようで(一時も止むことのないアプローチ攻撃故)若干その麗しいお顔が引き攣っているようだ。
ちなみに、私はその盛り上がっているグループには入っていない。部長含むナイスミドルたちのグループでしっぽりとお酒を嗜んでいる。焼酎マジうまい。
元々どちらかと言うと大人しい方で、皆でワイワイするのは少し苦手だ。故に、あちらの盛り上がっているグループには混ざらない。
それに私は彼女らのように積極的に殿方と絡みたいとも思わない。身の程を知っているからだ。
私の容姿は一言で言うならばおデブちゃんである。物心ついた時から他の子と比べると少し大柄だった。
自分の容姿を気にし始めた頃、ダイエットに取り組んだが元々太りやすい体質らしく、少し気を抜くとすぐ元通りを繰り返すうちに、諦めてしまった。
太くても生きていける!生きているだけで素晴らしい!と、いうわけで私はおデブちゃんである。
時々世間の目が痛いこともあるが(実際総務課の一部には冷ややかな目で見られている)、今ではもう慣れてしまった。
世の中にはおデブちゃんが好きと言うひともいるみたいだが、あくまでマイノリティー。
それに、過去に色々とあったので異性と付き合いたいとか結婚したいとかあまり思えないのだ。
と、いうわけで私は営業課争奪戦からは早々に離脱している。
そして私は落ち着いた、大人の会話をする部長たちの輪に入らせてもらっている。
お酒を注ぎながら、ずっと会話に集中していたので私は気がつかなかった――――あの目線に。