5:茜色の射す公園
夕暮れに傾く園内に旋律が流れ始める
それは疲れ果てるまで遊んだ子供たちを優しく包み、親のもとへ導く
潮風とともに去り行く無邪気なその笑顔たちは帰る場所を求め、走り抜けていく
そして、その少女も走り出そうとしていた
しかし少女の脚は脆く、砂利粒の地面へと転んでしまった
周りを見渡すと自分の影だけが虚しく夕日の広場に残る
目尻にある濡れた感触を堪え立ち上がろうとするが、膝に激痛が走る
流れる赤い血はただ、取り残された少女を見つめる
その時、1人の少年が少女の前に現われた
少女と同じほどの背丈のその少年は近くにある水道から手受けで水を少女の膝の上へ運ぶ
不器用なその小さな手から水は零れ、殆どは砂利粒の上へと消えていく
そして、濡れたその手のひらで少年は、少女の手のひらを優しく引き寄せる
無言で優しく歩く少年と、濡れた膝に少しの痛みを堪えながら歩く少女
響き渡る旋律と共に彼らは少しづつ歩いていく
2人の進む方向には茜色の線と
温かな夕日が見えている
「私もよく公園で遊んだんだよね…
走り回っては転んで、泣いて、怪我をして………。」
…アイツも公園でよく転んでいた。
「でも、決まって帰る時間になると…、
旋律が流れるんだよね…」
もうアイツは忘れてしまっているかもだけど、俺は覚えている…。
「…この旋律って、あの子が歌ってた歌と似てるんだよね………。
君主くんもそう思う…よね?」
公園は俺が初めてアイツと出会った場所、そして…
「私たちも帰ろうか…。
…、君主くん何処に行くの………?」
俺が白衣を着る理由になった場所…。
煙草を銜えた男はジャージ姿の彼女を残し、茜色の方向へゆっくりと歩き始める。




