3:まだ翼があるなら
紺碧なその空はただ静かに息吹し、広がり続ける
変わり無いその色を羨ましく見上げる一羽の小鳥
冷たい大地にその小さな身体を預けたまま佇んでいた
小鳥は足下を見つめ、翼を広げ、叫んだ
親を亡くし、仲間と逸れ、飛ぶ行方がない
幼い嘴で自ら二枚の翼を切り断とうとした
その時、風が吹いた
空を、大地を、そして翼を
全てを限りない途方の彼方へと誘う
小鳥は再び空を見上げた
そこには一枚の白い羽が漂う
それを自らのものと知らず、小鳥は無邪気に飛び立つ
「…もう、あの子が姿を消してから数え切れない時間が経ちました。
私たちがあの子と交わした約束…。
その揺るぎない希望が今、私たちを動かしています。」
…そう、その約束が今、俺を傷つけている。
「あの約束の後、私たちの全てが壊されました。
今でも夢の中に映りこんできますよ…。
何度も何度も、あの時の光景が蘇り、苦しめられています。」
幸せが溢れていたのに何も気づけず、…失った。
「…でも、私は信じてます。
君主くんも信じてますよね?
その証が、この箱の中なのですから…。
…この背中にまだ翼があるなら、俺は追い続けたい。
「…必ず、あの子は帰ってきます。
そして私たちが高校生だった頃と同じように。
また笑顔で微笑んでくれます。」
またみんなと一緒に
…アイツと一緒に
笑いあえる場所を求めて…。
窮屈な部屋の中で男は少し微笑み、窓越しに映る一羽の美しい鳥を見つめていた。