8:君と同じモノ
俺の目の前には彼らがいる
園歌ちゃんと時見くん…
残酷な世界
全てが止まっている
時見くんは園歌ちゃんに声を掛け続けている
だが、園歌ちゃんの返事は無い
返事をすることができない
言葉を話すことができない
体にも麻痺がある
脚も、腕も…
動かすことができない
かろうじて首を横に振り続ける
園歌ちゃんはただ静かに首を横に振り続けるだけ
時見くんがどんなに想いを伝えようとしても
ただ…
園歌ちゃんは首を横に振り続けるだけ
「君主先生…、俺は何か悪いことをしたんですかね………」
「…。」
「…君主先生…、俺は何か罰を受けるべきなんですかね………」
「…。」
「………、君主先生…、俺は何か勘違いしてたんですかね………」
「…。」
「…俺は何か………、…。
……………………………………………。」
「…。」
「…俺はいったい、いつまで痛み続けたらいいんですか………?」
「………。」
「…、幸せは…、どこにあるんですか………?」
「………。」
「この世界に、…神さまは、いるんですか………?」
「………。」
「…この悲しみは…、誰が与えたんですか………?」
「………。」
「………、君主先生…、
教えてください………」
「…………………。」
「…君主先生もわかるわけ…、ないですよね…。
先生なら…、こんなこと起こりませんよね………」
「…………………、いいや…」
「…、…。」
「俺も君と同じなんだ…
…時見くん………」
「…、………………………………………………………………………………………」
「俺も君と同じモノを…、高校生から抱え続けている…」
「…………………」
「時見くんが被災した日のこと…、覚えているよね…。
その時に俺は君を施設所で見つけた…。」
「…………………」
「君の心の喪失を戻すために俺は、約束をした…」
「…………………」
「あの時に話した話…、実は続きがあるんだ………。」
「…………………」
「時見くんに伝えられなかった………、
…本当の世界が………」
これはアイツがいなくなった時の話
…そう
アイツが…、死んだ記憶………